人獣共通感染症の感染源と媒介動物

人獣共通感染症(ズーノーシス)は、病原体と感染源・感染経路をセットで覚えるのが要点。ペストはノミ(げっ歯類)、SFTSはマダニ、日本脳炎は蚊が媒介する。トキソプラズマは猫の糞便中のオーシスト、エキノコックスはキツネ・犬の糞便から感染する。ブルセラ症は犬などの流産(胎盤・分泌物)から、Bウイルス病はサルの咬傷から、狂犬病は感染動物の咬傷から感染する。E型肝炎は豚・猪・鹿の生肉・生レバーから感染する。動物看護師は感染源を理解し、手洗い・防護・適切な取り扱いで人と動物の双方を守る。

1人獣共通感染症と感染経路の整理

人獣共通感染症(ズーノーシス/動物由来感染症)は、動物とヒトの間でうつる病気の総称。覚えるコツは『病原体』と『感染源・感染経路』をセットにすること。主な経路は①ノミ・マダニ・蚊などの媒介動物(ベクター)②動物の糞便・排泄物 ③出産・流産や体液 ④咬傷・ひっかき傷 ⑤汚染された食肉。

人獣共通感染症(ズーノーシス)の主な5つの感染経路と代表例。①媒介動物(ノミ・マダニ・蚊)=ペスト・SFTS・日本脳炎、②糞便・排泄物=トキソプラズマ・エキノコックス、③出産・流産や体液=ブルセラ症、④咬傷・ひっかき傷=狂犬病・Bウイルス病、⑤食肉・生レバー=E型肝炎。病原体と感染源・経路をセットで覚えるのがコツ。

人獣共通感染症(ズーノーシス、動物由来感染症)は、動物とヒトの間で自然にうつる病気の総称で、世界で200種類以上が知られている。

数が多いので、『どの病原体が、どの動物から、どんな経路でうつるか』を組み合わせて整理すると覚えやすい。

主な感染経路は次のとおり。

①媒介動物(ベクター):ノミ・マダニ・蚊などの節足動物が、動物からヒトへ病原体を運ぶ。

②糞便・排泄物:動物のふんに含まれる病原体(卵やオーシストなど)が口に入って感染する。

③出産・流産・体液:流産した胎盤や分泌物、乳汁などに触れて感染する。

④咬傷・ひっかき傷:感染動物にかまれたり引っかかれたりして、唾液などの病原体が体内に入る。

⑤食肉・生レバー:加熱不十分な肉や内臓を食べて感染する。

動物看護師は、それぞれの感染源を理解し、手洗い・手袋・防護・適切な取り扱いで、人と動物の双方を守る役割を担う。

2ノミ・マダニ・蚊が媒介する(ペスト・SFTS・日本脳炎)

節足動物が媒介する人獣共通感染症。ペストはノミ(おもにげっ歯類に寄生)が媒介する。重症熱性血小板減少症候群(SFTS)はマダニが媒介する(感染した猫・犬にかまれて感染した例もある)。日本脳炎は蚊が媒介し、豚が増幅動物になる。媒介動物の駆除(ノミ・マダニ予防)が感染予防につながる。

ノミ・マダニ・蚊などの節足動物(ベクター)が病原体を運ぶ人獣共通感染症がある。

【ペスト】ノミが媒介する。

おもにネズミなどのげっ歯類に寄生したノミがヒトを刺して感染する。

感染症法では一類感染症に分類される重大な病気。

【重症熱性血小板減少症候群(SFTS)】マダニが媒介するウイルス感染症。

近年は、SFTSに感染した猫やイヌにかまれて人が感染した例も報告されており、動物医療の現場でも注意が必要。

【日本脳炎】蚊が媒介し、豚(ぶた)が体内でウイルスを増やす『増幅動物』となる。

蚊を介してヒトにうつる。

これらは、ノミ・マダニの予防駆除や蚊対策など、媒介動物を減らすことが予防につながる。

3動物の糞便から感染する(トキソプラズマ・エキノコックス)

動物のふんに含まれる病原体が口から入って感染するもの。トキソプラズマは猫の糞便中に排出される『オーシスト』から感染する(妊婦が初感染すると胎児に影響するため特に注意)。エキノコックスはキツネやイヌの糞便中の卵から感染し、肝臓などに重い病変をつくる。糞便処理後の手洗いが基本の予防。

動物のふんに含まれる病原体が、手や食品を介して口から入って感染するものがある。

【トキソプラズマ症】原虫のトキソプラズマが原因。

猫が終宿主で、感染した猫の糞便中に『オーシスト(卵のようなもの)』が排出され、これが口に入って感染する(加熱不十分な肉からも感染する)。

健康な人では軽くすむことが多いが、妊婦が初めて感染すると胎児に影響(先天性トキソプラズマ症)が出ることがあるため特に注意する。

【エキノコックス症】キツネやイヌの糞便中に出る寄生虫(エキノコックス)の卵が口に入って感染し、肝臓などに長い時間をかけて重い病変をつくる。

北海道で問題になる。

いずれも、糞便の適切な処理と、その後の手洗いが基本の予防になる。

4出産・流産や咬傷から感染する(ブルセラ症・Bウイルス病・狂犬病)

ブルセラ症は、犬などの流産した胎盤・分泌物や体液に触れて感染する(犬では流産・不妊の原因になり、人にもうつる)。咬傷から感染するものとして、狂犬病(感染動物に咬まれて唾液中のウイルスが侵入、発症すればほぼ100%致死)と、Bウイルス病(マカクザルなどサルの咬傷・ひっかき傷から感染し、人で重い脳炎を起こす)がある。

動物の出産・流産や、咬傷・ひっかき傷を通じて感染するものがある。

【ブルセラ症】ブルセラという細菌による病気。

イヌではブルセラ・カニスが流産や不妊(雄では精巣炎)を起こす。

ヒトは、流産した胎盤・分泌物・体液などに触れて感染し、発熱・倦怠感などを起こす。

繁殖を扱う現場では取り扱いに注意する。

【狂犬病】感染した動物にかまれ、唾液中のウイルスが傷口から侵入して感染する。

発症するとほぼ100%死亡する、最重要の人獣共通感染症。

日本では狂犬病予防法で犬の登録と年1回の予防注射が義務づけられている。

【Bウイルス病】マカクザルなどのサルがもつヘルペスウイルスによる病気で、サルの咬傷・ひっかき傷や体液から感染し、ヒトで重い脳炎を起こすことがある。

サルを扱う際は咬傷・曝露に十分注意する。

5食肉・生レバーから感染する(E型肝炎など)

加熱不十分な食肉・内臓から感染するものもある。E型肝炎は、豚・いのしし(猪)・鹿などの生肉や生レバーを食べて感染するウイルス性肝炎。生食を避け、しっかり加熱することが予防になる。トキソプラズマや腸管出血性大腸菌なども加熱不十分な肉から感染しうる。

加熱が不十分な肉や内臓(レバーなど)を食べることで感染する人獣共通感染症がある。

【E型肝炎】E型肝炎ウイルスによる肝炎で、豚・いのしし(猪)・鹿などの生肉や生レバーを食べて感染する。

感染症法では四類感染症に分類される。

十分に加熱して食べることが予防になる。

(参考:A型肝炎も汚染された水・食品を介して経口感染し、四類に分類される。

なおB型肝炎は血液・体液を介する感染で五類に分類され、感染経路が異なる。

)このほか、加熱不十分な肉からはトキソプラズマや腸管出血性大腸菌(O157)なども感染しうる。

食肉・内臓は『生で食べない・しっかり加熱する』ことが、これらの感染を防ぐ基本になる。

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