雌の生殖器・性周期と膣スメア/妊娠と薬

雌の生殖器の各部のはたらき(卵巣=卵子とホルモン、卵管=受精の場、子宮=受精卵を育てる、子宮頸部=粘膜栓で感染から守る)と、卵巣ホルモン(エストロゲン=発情、プロゲステロン=黄体ホルモンで妊娠維持)を押さえる。さらに、発情周期にともなって膣スメアの細胞像が変わること(エストロゲンが高い卵胞期=発情期は角化した無核上皮細胞が増え、プロゲステロンが高い黄体期は有核の細胞+好中球になる)と、妊娠中に避けるべき薬(テトラサイクリン・フルオロキノロン・クロラムフェニコールなどの抗菌薬、流産を起こすプロスタグランジン)を、文章と確認問題で理解する。

1雌の生殖器の構造と役割

卵巣は卵子をつくり、ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)を分泌する。卵管は卵子と精子が出会う受精の場。子宮は受精卵(胎子)を育てる場所。子宮頸部(子宮の出口)は、ふだんは粘液の栓(粘膜栓)でふさがれ、外からの細菌の侵入を防いで胎子を感染から守る。

エストロゲン優位の卵胞期(発情前期〜発情期)は角化した無核上皮細胞が増えて発情期に最多となり交配適期、排卵後プロゲステロン優位の黄体期(発情休止期)は核のある傍基底細胞・中間細胞が主体で好中球もみられる。

雌の生殖器は、卵巣・卵管・子宮・子宮頸部・腟などからなる。

卵巣は、卵子をつくり出すとともに、雌性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)を分泌する中心的な臓器である。

卵管は、卵巣から出た卵子を受け取る管で、ここで卵子と精子が出会って受精が起こる『受精の場』である。

子宮は、受精卵(受精後は胎子)が着床して育つ場所で、妊娠中は胎子を保護し栄養を送る。

子宮頸部(しきゅうけいぶ)は子宮の出口にあたる部分で、ふだんは粘液でできた栓(粘膜栓・頸管粘液栓)でしっかりふさがれている。

この粘膜栓は、外(腟側)からの細菌が子宮内へ入り込むのを防ぐ『ふた』の役割をもち、妊娠中の胎子を感染から守る。

出産が近づくと、この粘膜栓がはずれて産道が開く。

2卵巣ホルモン ― エストロゲンとプロゲステロン

エストロゲン(卵胞ホルモン)は卵胞から分泌され、発情(メスが交配を受け入れる状態)を起こす。プロゲステロン(黄体ホルモン)は、排卵後にできる黄体から分泌され、子宮を妊娠に適した状態に保って妊娠を維持する。発情周期は、このエストロゲン優位の時期とプロゲステロン優位の時期が入れかわることで進む。

卵巣から分泌される代表的なホルモンが、エストロゲンとプロゲステロンである。

エストロゲン(卵胞ホルモン)は、卵子を包む卵胞から分泌される。

エストロゲンは発情を起こし、メスが交配を受け入れる状態にするほか、生殖器の粘膜を変化させる(腟の上皮を厚くし角化させる)。

プロゲステロン(黄体ホルモン)は、排卵したあとの卵胞が変化してできる黄体(おうたい)から分泌される。

プロゲステロンは、子宮内膜を受精卵が着床しやすい状態に整え、妊娠を維持するはたらきをもつため『妊娠を保つホルモン』といえる。

発情周期は、エストロゲンが高くなる時期(卵胞期)と、排卵後にプロゲステロンが高くなる時期(黄体期)が入れかわることで進んでいく。

どちらのホルモンが優位かによって、次に学ぶ膣スメアの細胞像も変化する。

3性周期と膣スメア(細胞像の変化)

膣スメアは、腟の粘膜の細胞を綿棒でとって染め、性周期のどの時期かを判断する検査。エストロゲンが高い卵胞期(発情前期〜発情期)には、表層の上皮が角化して核が消えた『無核(角化)上皮細胞』が増える。プロゲステロンが高い黄体期(発情休止期)には、核のある小型の細胞(傍基底細胞・中間細胞)が主体となり、好中球(白血球)もみられる。

膣スメア(腟垢検査)は、腟の壁から綿棒で粘膜の細胞をとり、染色して顕微鏡で観察する検査で、発情周期のどの時期にいるか(交配適期かどうか)を判断するのに使う。

腟の上皮の細胞は、卵巣ホルモンの影響で性周期を通じて大きく変化する。

エストロゲンが高くなる卵胞期(発情前期から発情期)には、腟の上皮が厚くなって角化が進み、表面の細胞は核が濃縮して消えていく。

そのため、発情が近づくほど、核のない角化した上皮細胞(無核上皮細胞・角化上皮細胞)の割合が増え、発情期(交配を受け入れる時期)に最も多くなる。

一方、排卵後にプロゲステロンが高くなる黄体期(発情休止期)には、角化・無核の細胞は減り、核をもつ小型の細胞(傍基底細胞・中間細胞)が主体になる。

また黄体期には、好中球(白血球)が多くみられるようになるのも特徴である。

まとめると、『卵胞期(発情期)=無核(角化)上皮細胞が多い』『黄体期=有核の細胞+好中球が多い』と整理できる。

1回の検査では変化の向き(増えているのか減っているのか)が分からないため、数日にわたってくり返し観察して判断する。

4妊娠と薬① 避けるべき抗菌薬

妊娠中は、薬が胎盤を通って胎子に影響することがあるため薬の選択に注意する。比較的安全とされるのはペニシリン系・セファロスポリン(セフェム)系。避けるべき(禁忌・要注意)なのは、歯や骨に沈着して着色・発育障害を起こすテトラサイクリン系、軟骨の発育を妨げるフルオロキノロン(ニューキノロン)系、新生子に重い障害を起こすクロラムフェニコール、腎臓・聴覚に毒性のあるアミノグリコシド系。

妊娠中の動物に薬を使うときは、薬が胎盤を通って胎子に届き、発育に悪影響を与えることがあるため、薬の選び方に注意が必要である。

抗菌薬のなかでも、ペニシリン系やセファロスポリン(セフェム)系は、妊娠中でも比較的安全に使えると考えられている。

一方、避けるべき(または慎重に扱うべき)抗菌薬もある。

テトラサイクリン系は、発育中の歯や骨にカルシウムとともに沈着し、歯の着色や骨の発育障害を起こすため、妊娠中・幼若期には使わない。

フルオロキノロン(ニューキノロン)系は、軟骨に結合して関節軟骨の発育を妨げる(軟骨毒性)ため、妊娠中や成長期には避ける。

クロラムフェニコールは、骨髄抑制のほか、薬を十分に代謝できない新生子で血中濃度が高まり循環が破綻する重い障害(いわゆるグレイベビー症候群)を起こすため避ける。

アミノグリコシド系は、腎臓への毒性(腎毒性)や聴覚・平衡感覚への毒性があり、妊娠中は慎重に扱う。

『ペニシリン・セファロスポリンは比較的安全、テトラサイクリン・フルオロキノロン・クロラムフェニコール・アミノグリコシドは胎子・新生子に有害になりうる』とおさえておく。

5妊娠と薬② プロスタグランジンとホルモン薬

プロスタグランジン(PGF2α)は、妊娠を維持している黄体を退行させてプロゲステロンを下げ、流産・分娩誘起を起こす。意図しない妊娠の中絶や子宮蓄膿症の治療などに使われる一方、妊娠を続けたい個体には禁忌。ホルモン薬は強い作用をもつため、目的と時期を誤らないことが大切。

妊娠やホルモンに直接はたらく薬は、作用が強いため使い方に注意する。

プロスタグランジン(PGF2α)は、妊娠を支えている黄体を退行させる作用をもつ。

黄体が退行するとプロゲステロン(妊娠を維持するホルモン)が低下するため、流産や分娩の誘起(陣痛を起こすこと)につながる。

この作用を利用して、望まない妊娠の中絶や、子宮に膿がたまる子宮蓄膿症の内科治療(子宮内容の排出)などに用いられることがある。

逆にいえば、妊娠を続けたい個体にプロスタグランジンを使うと流産を起こしてしまうため、妊娠維持が目的の場合には禁忌である。

また、エストロゲン製剤など他のホルモン薬も、骨髄抑制や子宮蓄膿症のリスクなど強い副作用をもつものがあり、安易な使用は避ける。

動物看護師は、これらの薬が『何のために・周期や妊娠のどの時期に使われるのか』を理解し、投薬管理や飼い主への説明にあたることが求められる。

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