体液の区分と細胞膜の物質輸送

体の水分(体液)は、細胞の中にある細胞内液と、細胞の外にある細胞外液(間質液+血漿)に分けられ、体重に対するおおよその割合が決まっている。細胞内はカリウム、細胞外はナトリウムが多いといった電解質の分布、そして細胞膜をはさんで物質が出入りするしくみ(ATPを使わない受動輸送と、ATPを使う能動輸送)、エネルギー源ATP・ADPの関係を整理する。

1体液の区分と割合

体液は、細胞の中の『細胞内液』と、細胞の外の『細胞外液』に分けられる。成人ではおおよそ、体重の60%が体液で、その内訳は細胞内液が体重の約40%、細胞外液が約20%。細胞外液はさらに、間質液(約15%)と血漿(約5%)に分けられる。

体液(体重の約60%)の内訳を示した図。細胞内液が約40%、細胞外液が約20%で、細胞外液はさらに間質液(約15%)と血漿(約5%)に分けられる。

体の中の水分を体液という。

体液は存在する場所によって、大きく『細胞内液』と『細胞外液』に分けられる。

細胞内液は、その名のとおり細胞の中にある体液である。

細胞外液は、細胞の外にある体液で、さらに細胞と細胞のあいだを満たす『間質液(組織間液)』と、血管の中を流れる血液の液体成分『血漿(けっしょう)』に分けられる。

体重に対する割合は、おおよそ次のとおりである。

体液全体は体重の約60%(成人の目安)で、その内訳は、細胞内液が体重の約40%、細胞外液が約20%である。

さらに細胞外液の約20%は、間質液が約15%、血漿が約5%に分けられる。

『細胞内40%・細胞外20%(間質15%+血漿5%)』という割合を覚えておくと、脱水や輸液(体液を補う治療)を理解するときの土台になる。

2電解質の分布(細胞内はカリウム・細胞外はナトリウム)

体液には電解質(イオン)が溶けているが、その種類のバランスは細胞の内と外で大きく異なる。細胞内液はカリウムイオン(K⁺)が多く、細胞外液はナトリウムイオン(Na⁺)と塩化物イオン(Cl⁻)が多い。この差が、神経や筋肉の働きに重要。

体液には、ナトリウムやカリウムなどの電解質(イオン)が溶けている。

重要なのは、どのイオンが多いかが細胞の内と外でまったく違うことである。

細胞内液では、陽イオンとしてカリウムイオン(K⁺)が多く、リン酸イオンなども多い。

一方、細胞外液(間質液・血漿)では、陽イオンとしてナトリウムイオン(Na⁺)が多く、陰イオンとして塩化物イオン(Cl⁻)が多い。

つまり、『細胞の中はカリウム(K⁺)、細胞の外はナトリウム(Na⁺)が多い』と整理できる。

このイオン分布の差(細胞の内外でのナトリウム・カリウムの濃度差)は、神経が信号を伝えたり、筋肉が収縮したりするための電気的な活動の土台になっている。

この濃度差は自然にできるものではなく、細胞が後述のしくみ(ナトリウム・カリウムポンプ)を使ってエネルギーを消費しながら維持している。

3受動輸送(ATPを使わない物質の出入り)

細胞膜をはさんで物質が出入りするしくみのうち、濃度の高い方から低い方へ自然に移動するのが受動輸送で、エネルギー(ATP)を必要としない。膜を直接すり抜ける単純拡散と、チャネルや担体(運び手)を介して通る促進拡散などがある。

細胞は、細胞膜をはさんで必要な物質を取り込んだり、不要な物質を出したりしている。

その輸送のしかたは、大きく『受動輸送』と『能動輸送』に分けられる。

受動輸送は、物質が濃度の高い方から低い方へ、濃度差にしたがって自然に移動するもので、エネルギー(ATP)を必要としない。

水が高いところから低いところへ流れるようなイメージである。

受動輸送には、いくつかの形がある。

単純拡散は、酸素・二酸化炭素や脂溶性の物質などが、細胞膜を直接すり抜けて移動するものである。

促進拡散は、そのままでは膜を通りにくい物質(イオンやブドウ糖など)が、膜にある『チャネル(通り道)』や『担体(運び手のタンパク質)』を介して移動するものである。

チャネルや担体を使うが、濃度差にしたがって動くため、これも受動輸送に含まれ、ATPは要らない。

そのほか、水が半透膜を通って濃度を均そうと移動する『浸透』なども、受動的な移動である。

4能動輸送(ATPを使ってポンプで運ぶ)

濃度の低い方から高い方へ、濃度差に逆らって物質を運ぶのが能動輸送で、エネルギー(ATP)を必要とする。代表が、細胞内のナトリウムをくみ出し、カリウムを取り込む『ナトリウム・カリウムポンプ(Na⁺-K⁺ポンプ)』。これが細胞内外のイオン濃度差を保つ。

能動輸送は、受動輸送とは逆に、物質を濃度の低い方から高い方へ、濃度差(濃度勾配)に逆らって運ぶしくみである。

坂道を上に運び上げるようなものなので、エネルギーが必要で、おもにATPを使う。

能動輸送の代表が、ナトリウム・カリウムポンプ(Na⁺-K⁺ポンプ、ナトリウムカリウムATPアーゼ)である。

これは細胞膜にあるタンパク質で、ATPを分解して得たエネルギーを使い、細胞の中にたまるナトリウム(Na⁺)を細胞の外へくみ出し、逆に細胞の外からカリウム(K⁺)を中へ取り込む。

このポンプが働き続けることで、前のセクションで述べた『細胞内はカリウム、細胞外はナトリウムが多い』というイオン分布(濃度差)が保たれている。

もし細胞のエネルギー(ATP)が枯渇してこのポンプが止まると、ナトリウムとカリウムの濃度差が崩れ、細胞は正常に働けなくなる。

『受動輸送=ATP不要・濃度差にしたがう、能動輸送=ATP必要・濃度差に逆らう(ポンプ)』という対比を押さえておく。

5エネルギー源ATPとADP

能動輸送などに使われるエネルギーの通貨がATP(アデノシン三リン酸)。リン酸が3つ結合しており、その1つが切れてADP(アデノシン二リン酸=リン酸2つ)とリン酸になるときにエネルギーが放出される。ATP→ADPでエネルギーを取り出して使う。

能動輸送をはじめ、体のさまざまな活動には、エネルギーをやりとりするための共通の『通貨』が使われる。

それがATP(アデノシン三リン酸)である。

ATPは、アデノシンという土台に、リン酸が3つ(トリ=3)つながった構造をしている。

リン酸どうしの結合には大きなエネルギーがたくわえられている。

ATPの末端のリン酸が1つ切り離されると、ADP(アデノシン二リン酸。

ジ=2で、リン酸が2つ)とリン酸になる。

このとき、たくわえられていたエネルギーが放出され、ナトリウム・カリウムポンプなどの活動に使われる。

つまり、『ATP(リン酸3つ)→ ADP(リン酸2つ)+リン酸』の反応でエネルギーを取り出している(ADPは“ダブルのATP”ではなく、リン酸が1つ少ないアデノシン二リン酸である点に注意)。

逆に、栄養を分解して得たエネルギーで、ADPにリン酸をつけ直してATPを再生する。

こうしてATPは、つくっては使い、を繰り返す『充電池』のように働いている。

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