細胞の傷害と細胞死(壊死とアポトーシス)

細胞が傷害を受けて死ぬとき、その死に方には2種類ある。外からのダメージで起こる『事故死』のようなネクローシス(壊死)と、遺伝子に制御された『計画的な死』であるアポトーシス。両者の特徴の違い(炎症を起こすか、細胞がどう変化するか)と、体の中で細胞死が果たす役割や病気との関わりを、図ではなく文章で読んで学ぶ。

1細胞の傷害と2つの死に方

細胞は、酸素不足・毒物・物理的刺激・感染などで傷害を受ける。軽ければもとに戻る(可逆的)が、傷害が強く不可逆になると細胞は死ぬ。細胞の死に方には、ネクローシス(壊死)とアポトーシスの2種類がある。

細胞は虚血・毒物・物理的刺激・感染などで傷害を受け、軽ければ可逆的にもとへ戻るが、不可逆になると死ぬ。その死に方は2種類で、ネクローシス(壊死)は強い傷害による受動的な死で細胞が膨れて破裂し炎症を起こすのに対し、アポトーシスは計画的・能動的な死で細胞が縮小・断片化して炎症を起こさない。

細胞は、酸素や栄養の不足(虚血)、毒物・薬物、高温・外傷などの物理的刺激、感染などによって傷害を受ける。

傷害が軽い段階では、原因が取り除かれれば細胞はもとの状態に戻ることができる(可逆的な傷害)。

しかし、傷害が強かったり長く続いたりして元に戻れなくなる(不可逆的になる)と、細胞は死んでしまう。

細胞の死に方には、大きく分けてネクローシス(壊死)とアポトーシスの2種類がある。

この2つは、原因も、細胞の変化のしかたも、まわりに炎症を起こすかどうかも異なる。

2ネクローシス(壊死)

ネクローシスは、強い外的な傷害(虚血・毒物・やけど・外傷など)によって受動的・偶発的に起こる細胞死。いわば細胞の『事故死』。細胞が膨れて破裂し、中身が外に漏れ出すため、まわりに炎症を引き起こす。

ネクローシス(壊死)は、細胞が強い外的な傷害を受けて受動的・偶発的に死ぬことで、いわば細胞の『事故死』にあたる。

原因には、血流が途絶える虚血(梗塞)、毒物や薬物、やけど・外傷、重い感染などがある。

ネクローシスでは、細胞が膨れて(膨化して)やがて破裂し、細胞の中身(内容物)がまわりに漏れ出す。

漏れ出した内容物が刺激となって、まわりの組織に炎症を引き起こすのが大きな特徴である。

梗塞(心筋梗塞・脳梗塞など)で組織が壊死するのは、このネクローシスである。

3壊死の種類(凝固壊死・融解壊死・乾酪壊死)

壊死は見た目によって分けられる。タンパク質が固まって組織の形が残る凝固壊死(心筋梗塞など)、タンパク分解酵素で組織が液状にとける融解壊死(脳梗塞)、そして凝固壊死の一種だが脂肪成分が多く黄白色で乾燥したチーズのように見える乾酪壊死(結核など)がある。

ネクローシス(壊死)は、組織の見た目によっていくつかの種類に分けられる。

凝固壊死は、死んだ細胞の中のタンパク質が固まり(凝固し)、しばらく組織の形(輪郭)が残るタイプの壊死で、心筋梗塞や、脾臓・腎臓などの梗塞でみられる。

融解壊死は、壊死した組織にタンパク質が少なく、タンパク分解酵素のはたらきで組織がとけて液状になるタイプの壊死で、脳梗塞が代表例である(脳はもともとタンパク質が少なく脂質が多いため、とけやすい)。

乾酪壊死(かんらくえし)は、凝固壊死の一種だが、壊死した部分に脂肪成分が多いために、黄白色で乾燥したチーズ(乾酪)のように見えるタイプの壊死である。

乾酪壊死は、結核や梅毒、一部の悪性腫瘍などの病変で壊死が起こったときにみられる。

『凝固壊死=形が残る(心筋梗塞)』『融解壊死=液化する(脳梗塞)』『乾酪壊死=チーズ様(結核)』と、代表例とあわせて整理するとよい。

4アポトーシス(プログラムされた細胞死)

アポトーシスは、遺伝子に制御された、計画的・能動的な細胞死(プログラム細胞死)。細胞が縮小して断片化し(アポトーシス小体)、まわりの細胞や食細胞に静かに片づけられるため、炎症を起こさない。不要になった細胞を整理するための仕組み。

アポトーシスは、あらかじめ遺伝子にプログラムされた、計画的で能動的な細胞死で、『プログラム細胞死』『制御された細胞死』とも呼ばれる。

細胞が自分から小さく縮んで、きれいに断片化し(アポトーシス小体になり)、その断片が食細胞などに静かに取り込まれて片づけられる。

細胞膜が破れて中身が漏れ出すことがないため、まわりに炎症を起こさないのが、ネクローシスとの大きな違いである。

アポトーシスは、体にとって不要になった細胞や、傷ついて危険な細胞を、まわりに迷惑をかけずに整理・除去するための正常な仕組みである。

『アポトーシス=計画的に静かに死ぬ』とイメージするとよい。

5ネクローシスとアポトーシスの違い

ネクローシス=受動的・偶発的な事故死、細胞は膨化・破裂、内容物が漏れて炎症を起こす。アポトーシス=能動的・計画的なプログラム死、細胞は縮小・断片化、静かに片づけられ炎症を起こさない。『炎症を起こすのがネクローシス、起こさないのがアポトーシス』。

ネクローシスとアポトーシスは、対照的な細胞死として整理して覚える。

ネクローシスは、外的傷害による受動的・偶発的な死(事故死)で、細胞は膨れて破裂し、内容物が漏れ出してまわりに炎症を起こす。

アポトーシスは、遺伝子に制御された能動的・計画的な死(プログラム死)で、細胞は縮小・断片化し、静かに片づけられて炎症を起こさない。

ポイントは『炎症を起こすのがネクローシス、炎症を起こさないのがアポトーシス』という点である。

また、ネクローシスは病的な状況で起こることが多いのに対し、アポトーシスは正常な体づくりや細胞の入れ替えでも日常的に起こっている。

6細胞死の役割と病気とのかかわり

アポトーシスは、発生(体づくり)の過程で不要な部分を消したり、古い細胞・傷ついた細胞を除去したりする正常な仕組み。一方、虚血(梗塞)や中毒などではネクローシスが起こる。がん細胞は本来死ぬべきときにアポトーシスを回避して死なずに増え続けるという異常をもつ。

細胞死は、病気のときだけでなく、正常な体の営みにも深く関わっている。

アポトーシスは、胎子の発生過程で指の間の水かき部分を消すなど、体づくりの中で不要な細胞を計画的に取り除く役割をもつ。

また、古くなった細胞や、傷ついて異常になった細胞を除去して、体の細胞を入れ替え・整理する恒常性の維持にも働いている。

一方、血流が途絶える虚血(梗塞)や、毒物・薬物による中毒、強い感染などでは、ネクローシス(壊死)が起こる。

さらに、がん細胞は、本来であればアポトーシスで死ぬべき場面でもそれを回避し、死なずに増え続けるという異常をもっている。

このように、細胞死のしくみを理解することは、さまざまな病気の成り立ちを理解する基礎になる。

理解できたら腕試し!
このテーマの確認テスト