胸部X線の肺パターン読影

胸部X線では、空気は黒く、水・軟部組織は白く写る。肺に水分や細胞がたまると本来黒い肺野が白っぽくなる(透過性の低下)。この白さの『見え方』から、肺胞パターン(エアブロンコグラム・シルエットサイン)・間質パターン・気管支パターンを区別する考え方と、心原性肺水腫の所見、聴診のラ音との対応を学ぶ。

1X線の基本(空気は黒・水は白)と透過性の低下

X線写真では、X線がよく通る空気は黒く、X線を通しにくい水・軟部組織・骨は白く写る。正常な肺は空気が多いので黒い。肺に水分や細胞がたまると白っぽくなり、これを『透過性の低下(不透過性の増加)』という。

胸部X線の肺パターンの代表的な分類。肺に水分や細胞がたまると肺野が白くなり(透過性の低下)、その白さの見え方から肺胞パターン・間質パターン・気管支パターンを読み分ける。

X線(レントゲン)写真は、体を通り抜けたX線の量の違いを白黒で表したものである。

X線がよく通り抜ける部分は黒く、通りにくい部分は白く写る。

空気はX線をよく通すため黒く写り、水や軟部組織・血液はX線を通しにくいため白く写る。

骨はさらに白い。

正常な肺は空気で満たされているため、胸部X線では黒っぽく写る(肺野)。

ところが、肺炎・肺水腫・出血などで肺胞や間質に水分や細胞がたまると、本来空気で黒いはずの肺野が白っぽくなる。

この変化を『肺の透過性の低下(不透過性の増加)』という。

肺がどのように白くなるか——その『見え方(パターン)』を読み分けることで、どの部分にどんな異常が起きているかを推測する。

代表的な見え方が、肺胞パターン・間質パターン・気管支パターンである。

2肺胞パターン(エアブロンコグラムとシルエットサイン)

肺胞パターンは、肺胞(空気の袋)が水分・滲出液で満たされたときの見え方。境界のぼやけた強い白さの中に、空気の残った気管支が黒く浮かぶ『エアブロンコグラム』、白い病変と接する心臓・血管の境界が見えなくなる『シルエットサイン』が特徴。心原性肺水腫や肺炎でみられる。

肺胞パターンは、空気の袋である肺胞が、水分・滲出液・血液・細胞などで満たされたときに現れる見え方である。

肺胞内の空気が液体に置きかわるため、その部分が境界の不明瞭な、強く白い陰影になる。

このパターンの代表的なサインが2つある。

1つ目は『エアブロンコグラム(気管支透亮像)』である。

周囲の肺胞が水で白く埋まる一方、その中を走る気管支にはまだ空気が残っているため、白い背景の中に黒い木の枝のような気管支が浮かんで見える。

2つ目は『シルエットサイン』である。

心臓や血管・横隔膜と、それに接する白い病変(水がたまった肺)が同じ白さで重なると、本来見えるはずの境界線が消えて区別できなくなる。

たとえば心臓のラインがぼやけて見えなくなれば、その隣の肺胞に水がたまっていると推測できる。

肺胞パターンは、心原性肺水腫や肺炎、肺出血などでみられる。

3間質パターンと気管支パターン

間質パターンは、肺胞の間の組織(間質)に異常が広がった見え方で、肺全体がもや状・すりガラス状にぼんやり白くなる。気管支パターンは、気管支の壁が厚くなり、輪っか(ドーナツ)や2本線(トラムライン)のように見える。原因や病変の部位によってパターンが異なる。

肺胞パターン以外にも、代表的な見え方がある。

間質パターンは、肺胞そのものではなく、肺胞と肺胞の間を埋める組織(間質)に水分や細胞・線維がたまったときの見え方である。

肺全体がうっすら『もや状』『すりガラス状』にぼんやり白くなり、血管影もややぼやける。

肺胞パターンほど真っ白にはならず、エアブロンコグラムははっきりしないことが多い。

気管支パターンは、気管支の壁が炎症などで厚くなったときの見え方である。

気管支を輪切りで見ると壁が厚い輪(ドーナツ状)に、縦に見ると2本の平行線(トラムライン/レール状)に見える。

気管支炎などでみられる。

実際のX線では、これらのパターンが単独ではなく混ざって現れることも多い。

どのパターンが優勢かと、その分布(左右対称か、特定の肺葉か、肺門部周囲かなど)を合わせて読むことで、肺炎・肺水腫・気管支炎などの鑑別に役立てる。

4心原性肺水腫のX線所見と聴診(ラ音)

心原性肺水腫(僧帽弁閉鎖不全症などによる)では、左心拡大に加えて、肺門部周囲を中心に左右対称性の透過性低下(肺胞パターン)がみられる。聴診では、肺胞に水がたまることで湿った『湿性ラ音(水泡音)』が聴かれる。

心臓が原因で起こる肺水腫(心原性肺水腫)は、僧帽弁閉鎖不全症などで左心房・肺静脈の圧が上がり、肺の血管から水分が間質や肺胞へしみ出すことで起こる。

たまった水分がガス交換を妨げ、呼吸困難を引き起こす。

胸部X線では、左心系の拡大(心拡大)に加え、犬では肺門部(心臓の背側付近)を中心に、左右対称性に肺野が白くなる透過性低下(肺胞パターン)がみられるのが典型である。

聴診では、肺胞に水分がたまることで、息を吸うときにプツプツ・ブツブツと湿った音が聴こえる。

これを湿性ラ音(水泡音)という。

これに対し、気道(気管支)が狭くなって生じるヒューヒュー・ゼーゼーといった連続性の音は乾性ラ音(笛音・いびき音)と呼ばれ、気道由来の異常を示す。

湿性か乾性かは、病変が肺胞側か気道側かを推測する手がかりになる。

看護では、安静時にも呼吸が苦しそうでないか、呼吸数の増加・努力性呼吸・チアノーゼがないかを観察し、異常を早期にとらえて獣医師へ報告する。

5胸部X線撮影の介助と注意点

良い胸部X線を撮るには、正しい体位(背腹像と側臥像)と、できれば吸気時(息を吸って肺が膨らんだとき)の撮影が望ましい。呼吸が苦しい動物では無理な保定が危険なため、状態を最優先する。撮影者の被ばく防護(防護衣・線量管理)も重要。

胸部X線は肺・心臓の評価に欠かせない検査で、動物看護師は撮影の介助(保定・ポジショニング)を担う。

通常は、背中を下にした背腹像(または腹背像)と、横向きに寝かせた側臥像など、複数方向から撮影して立体的に評価する。

左右の肺を比べるため、体がねじれない正しい体位が大切である。

肺は息を吸って膨らんだとき(吸気時)にいちばんよく観察できるため、可能であれば吸気のタイミングで撮影する。

呼気時には肺がしぼんで白っぽく写り、肺水腫などと紛らわしくなることがある。

ただし、呼吸が苦しい動物を無理に仰向けにしたり強く保定したりすると、急変の危険がある。

重度の呼吸困難では、まず酸素や安定化を優先し、動物の状態に合わせて撮影方法を工夫する。

X線撮影では、撮影者・介助者の被ばくを防ぐため、防護衣(プロテクター)・甲状腺カラー・防護手袋を着用し、できるだけ被ばく線量を減らす(不要な再撮影を避ける、適切な距離をとる)ことも重要である。

理解できたら腕試し!
このテーマの確認テスト