手術器械の種類と使い分け

手術で使う器械は「切る・止める・開く・縫う」という役割ごとにグループ分けできる。メス刃の番号の違い、有歯・無歯・側溝鑷子の使い分け、止血鉗子の種類、縫合針と縫合糸の選び方まで、動物看護師として知っておくべき手術器械の基礎を文章で整理する。

1手術器械の大まかな分類

手術器械は①切開系(メス・ハサミ)、②把持・止血系(鑷子・鉗子)、③開創系(創鉤・リトラクター)、④縫合系(持針器・縫合針・縫合糸)に大別できる。用途を覚えると器械出しや準備がスムーズになる。

手術器械は「切る(切開系)・止める(把持/止血系)・開く(開創系)・縫う(縫合系)」の4つの役割で分類でき、各グループに代表的な器械が対応する。

手術で使う器械は数が多いが、「何をするための器械か」で整理すると覚えやすい。

まず、組織を切り開くための切開系器械(メス・各種ハサミ)。

次に、組織をつまんで操作したり出血した血管を止めたりする把持・止血系器械(鑷子・止血鉗子)。

手術部位を見えやすくするために創を開いておく開創系器械(創鉤・リトラクター)。

そして、切った組織や皮膚を閉じる縫合系器械(持針器・縫合針・縫合糸)。

動物看護師は、手術前の器械の準備・カウント・洗浄・滅菌管理を担うため、各器械の名前と役割を正確に把握しておくことが重要である。

2メス(切開刃)の種類と使い分け

メスはハンドル(柄)と刃(ブレード)が別パーツ。#3ハンドルには小さな刃(#10・#11・#15)、#4ハンドルには大きな刃(#20・#22)を装着する。#10は汎用、#11は尖った穿刺用、#15は小動物の繊細な切開に使う。

メスは、持ち手になるハンドル(柄)と、実際に切るためのブレード(刃)が別になっており、用途に合わせて組み合わせる。

ハンドルはサイズが異なり、細い#3ハンドルには番号の小さな刃を、太い#4ハンドルには番号の大きな刃を装着する。

主なブレードの特徴は以下のとおりである。

#10:刃が大きく丸みを帯びた汎用ブレード。

皮膚の直線的な切開など、最も広く使われる。

#11:細く先が尖った三角形のブレード。

膿瘍の切開(穿刺)や関節への切り込みなど、点から刺し入れる操作に向く。

#15:#10より小型で細かな曲線切開ができる。

小動物(猫・小型犬・ウサギなど)の繊細な手術や、眼・口腔周囲など精密さが必要な部位に用いる。

#20・#22:刃が大きく、大型犬や大動物の皮膚切開など大きな力が必要な場面で用いる。

ブレードは使い捨てであり、装着・取り外しには必ず専用の器具(鉗子や持針器)を使い、素手では絶対に触れない。

3鑷子(ピンセット)の使い分け

有歯鑷子は先端に歯があり皮膚・筋膜などの硬い組織をしっかりつかむ。無歯鑷子は先端が平滑で血管・神経・消化管粘膜など繊細な組織を傷めずつかむ。側溝鑷子は顎面に縦溝があり、ガーゼや術野ドレープなど「しっかり持ちたいが歯で傷めたくない」場面に使う。

鑷子(ピンセット)は、組織やガーゼをつまんで固定・操作するために使う。

先端の形状によって3種類に大別される。

有歯鑷子(ネズミ歯鑷子など)は先端に細かい歯があり、組織をしっかりとつかめる。

皮膚・皮下組織・筋膜など丈夫な組織の操作に向いているが、歯が食い込むため繊細な組織には使わない。

無歯鑷子(解剖用鑷子)は先端が平滑で、組織を傷めにくい。

血管・神経・腸管の粘膜など、強くつかむと損傷してしまう繊細な組織や、縫合糸をつまむときに使う。

側溝鑷子は顎面(つまむ面)に縦方向の溝(側溝)が刻まれており、歯はないが溝の凹凸でしっかりとした把持力を発揮する。

ガーゼ・スポンジ・術野ドレープの端など、組織ではないものをつかむ場面や、有歯では傷つけてしまうが無歯では滑りやすいという状況で活躍する。

まとめると、「丈夫な組織→有歯、繊細な組織・糸→無歯、ガーゼ・ドレープなど非組織→側溝」と覚えると使い分けがしやすい。

4止血鉗子の種類と使い分け

止血鉗子は出血した血管をつかんで止血する器具。モスキート鉗子(細い血管用)、ケリー鉗子・ペアン鉗子(中等径血管用)、コッヘル鉗子(歯付き・丈夫な組織の把持)が代表的。先端の直/曲と歯の有無で使い分ける。

止血鉗子は、出血した血管をつかんで一時的に止血し、結紮(糸で縛ること)や電気メスでの処置まで組織を保持する器具である。

モスキート鉗子は細くて小さく、小型の血管や皮下の細かい出血点に使う。

小動物手術でよく活躍する。

ケリー鉗子・ペアン鉗子はやや大きく、中程度の血管や組織の把持・切離に使う。

先端が直線のものと曲がったものがあり、手術野の状況に合わせて選ぶ。

コッヘル鉗子は先端に歯(鉤)があり、皮膚・筋膜など丈夫な組織をしっかりつかむのに向くが、傷めたくない組織には使わない。

鉗子はロック機構(ラチェット)で組織を挟んだまま固定でき、結紮などの操作中に手を離せる。

5開創器(リトラクター)の種類

開創器は創を開いて術野を確保する器具。手で持って引くハンドリトラクター(ジェルピ・バルフォア等)と、自動で開いた状態を保つ自動開創器がある。腹腔手術ではバルフォア開創器がよく使われる。

深い部位を手術するとき、創(切開した傷口)を広げて術野(手術する場所)をよく見えるようにするために開創器(リトラクター)を使う。

アーミー・ネービーリトラクター(アメリカ軍式)は、S字型で持ち手があり、助手が手で持って引いて使う手持ち式である。

ジェルピリトラクターは先端に鉤がついており、自動的に開いた状態を保つことができるため、深部の操作中に助手の手が不要になる。

バルフォア開創器は腹腔手術専用で、腹壁を大きく開いて固定するための自動開創器である。

開腹手術でよく使われる。

いずれも、適切なサイズと形を選ぶことで、組織への不必要な圧迫や損傷を避けながら術野を確保できる。

6縫合針と持針器

縫合針は丸針(組織を分けて通す・消化管・血管など)と角針/三角針(組織を切りながら通す・皮膚・靭帯)を使い分ける。持針器(ニードルホルダー)で針の後ろ1/3をつかみ、针を回転させて縫う。

縫合に使う針(縫合針)は形状によって2種類に大別される。

丸針は断面が丸く、組織を押し分けながら通るため、消化管・血管・膀胱・筋肉など柔らかく傷めたくない組織の縫合に向く。

角針(三角針・切る針)は断面が三角形で刃がついており、組織をわずかに切りながら通るため、皮膚・靭帯・腱など硬く丈夫な組織に通しやすい。

「柔らかい・傷めたくない組織には丸針、硬い・抵抗が大きい組織には角針」と覚えると判断しやすい。

針を持つための器具が持針器(ニードルホルダー)で、縫合針の後ろ側1/3をしっかりつかんで操作する。

針の先端やスワージ部(糸との接続部)をつかむと針が曲がったり糸が抜けたりするため注意が必要である。

7縫合糸の種類(吸収糸と非吸収糸)

縫合糸は体内で分解される吸収糸(PGA・バイクリル・クロミックカットグット等)と分解されない非吸収糸(ナイロン・ポリプロピレン・絹糸等)に大別。体内組織には吸収糸、皮膚表面には非吸収糸を使うことが多い。

縫合糸は、時間が経つと体内で分解・吸収される吸収糸と、分解されずに残る非吸収糸に大別される。

吸収糸の代表は、PGA(ポリグリコール酸)やバイクリル(VICRYL)などの合成吸収糸で、術後数週間から数か月かけて加水分解される。

クロミックカットグット(羊の腸由来)も吸収糸だが、吸収期間が短く組織反応もやや強い。

吸収糸は体内に残さなくてよいため、筋肉・粘膜・皮下組織など体の奥の縫合によく使われる。

非吸収糸の代表はナイロン(モノフィラメント)やポリプロピレン(プロリン)で、組織反応が少なく強度が長持ちする。

皮膚の表面縫合や血管縫合などに用い、抜糸して取り出す。

絹糸も非吸収糸だが組織反応が比較的強いため、使用は限られている。

糸は太さも重要で、一般に番号が小さいほど細い(例:4-0は細い、0は太い)。

部位と組織の強度に合わせて選択する。

8手術器械の管理と清潔操作

使用後の器械は速やかに洗浄・乾燥させ、メーカー指定の方法で滅菌する。オートクレーブ(高圧蒸気滅菌)が基本。滅菌済みパックは開封後すぐに使い、落としたり不潔域に触れたりした器械は清潔扱いしない。

手術器械は適切に管理しないと感染源になるため、使用後の洗浄・滅菌と、手術中の清潔操作の両方が重要である。

使用後は血液や体液が乾いて落としにくくなる前に洗浄し、十分に乾燥させる。

鉗子など関節部のある器具は、関節を開いた状態で洗浄・滅菌すると洗い残しが減る。

滅菌方法として最も一般的なのはオートクレーブ(高圧蒸気滅菌)で、121℃または134℃で一定時間処理する。

プラスチック部品が多い器械や熱に弱いものにはEOG(酸化エチレンガス)滅菌などを用いることもある。

手術中の清潔操作では、滅菌済みの器械を取り出す際に不潔域(ドレープの外、床など)に触れさせない。

器械を床に落とした場合は清潔扱いできず、直ちに交換する。

器械のカウント(術前・術後の数の確認)も、体腔内への異物残存を防ぐ重要な業務である。

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