薬物動態の基礎(吸収・初回通過効果・生体利用率)

飲んだ薬がどれだけ体に効くかを決める『生体利用率(バイオアベイラビリティ)』と、その低下要因となる『初回通過効果』を学ぶ。経口薬が肝臓で代謝されてから全身に回ること、投与経路による違い、そして薬の脂溶性・水溶性が吸収に与える影響を、図ではなく文章で読んで理解する。

1生体利用率(バイオアベイラビリティ)とは

生体利用率(バイオアベイラビリティ)は、投与した薬のうち、どれだけが全身の血流にのって利用されるかを示す割合。静脈内注射では投与した薬がそのまま全身に入るため100%だが、経口などではそれより低くなる。

静脈内注射は薬が直接全身の血流に入るため生体利用率は100%だが、経口投与は吸収の途中で減るため生体利用率は100%より低くなる。

投与した薬が効果を発揮するには、まず全身の血流(体循環)に入る必要がある。

投与した薬のうち、どれだけが全身の血流にのって利用されるかを示す割合を、生体利用率(バイオアベイラビリティ)という。

静脈内注射では、薬を直接血管に入れるため、投与した量がそのまま全身に回り、生体利用率は100%である。

一方、口から飲む経口投与などでは、吸収の途中でさまざまな要因により減るため、生体利用率は100%より低くなる。

現実には、経口薬で吸収率が完全に100%になることはほとんどない。

2初回通過効果

初回通過効果は、経口で吸収された薬が全身循環に入る前に肝臓を通り、肝臓の代謝酵素で代謝されて減ってしまう現象。初回通過効果が大きい薬ほど、全身に届く量が減るので生体利用率は低くなる。

経口で投与された薬は、腸から吸収されたあと、門脈という血管を通っていったん肝臓に運ばれ、そこから全身循環へ出ていく。

このとき、薬は全身に回る前に肝臓を通るため、肝臓がもつ代謝酵素によって、一部が代謝(分解)されてしまう。

このように、吸収された薬が全身循環に入る前に肝臓(や腸管壁)で代謝されて減る現象を、初回通過効果という。

初回通過効果が大きい薬ほど、全身に届く前に多くが代謝されてしまうため、生体利用率は低くなる。

『初回通過効果が大きい=生体利用率が低い』という関係を押さえておく。

3投与経路と生体利用率

投与経路によって生体利用率は変わる。静脈内注射は初回通過効果を受けず100%。経口は腸での吸収と肝臓での初回通過効果を受けるため低くなりやすい。初回通過効果が大きい薬は、注射など別の経路が選ばれることもある。

薬の投与経路(与え方)によって、生体利用率は大きく変わる。

静脈内注射(点滴・静注)は、薬を直接血流に入れるため、腸での吸収も初回通過効果も受けず、生体利用率は100%である。

経口投与(飲み薬)は、腸から吸収される過程と、肝臓での初回通過効果の両方を受けるため、生体利用率が低くなりやすい。

そのため、初回通過効果が大きく経口では効きにくい薬は、注射など別の経路で投与されることがある。

皮下注射や筋肉内注射は、経口と静脈内の中間的な性質をもつ。

4薬物の吸収と脂溶性・水溶性

細胞膜は脂質でできているため、薬が吸収されるには膜を通り抜ける必要がある。水溶性が高すぎる薬は脂質の膜を通りにくく吸収されにくい。逆に脂溶性が高すぎる薬も、消化液(水)に溶けにくいため吸収されにくい。ほどよい脂溶性が吸収に重要。

薬が腸から吸収されるには、脂質でできた細胞膜を通り抜ける必要がある。

そのため、薬の脂溶性(脂に溶けやすさ)・水溶性(水に溶けやすさ)のバランスが、吸収に大きく影響する。

水溶性が高い(脂に溶けにくい)薬は、脂質の細胞膜を通過しにくいため、ほとんど吸収されない。

一方、脂溶性が過度に高い薬は、消化液(水)に溶けにくいため、これもまた吸収されにくい。

つまり、水に溶けて膜も通れる『ほどよい脂溶性』をもつ薬が、もっとも吸収されやすい。

薬の吸収には、こうした性質も関わっていることを理解しておく。

5薬物動態と看護のかかわり

同じ薬でも、投与経路によって体に届く量(生体利用率)が変わる。看護では、指示された経路・量を正しく守ること、経口薬では食事の有無が吸収に影響することがあること、効きが悪いときは経路の問題もありうることを理解して、正確な投薬と観察を行う。

薬物動態(薬が体の中でどう吸収・分布・代謝・排泄されるか)を理解すると、投薬の意味がよくわかる。

同じ薬でも、与え方(投与経路)によって体に届く量(生体利用率)が変わるため、獣医師が指示した経路・量を正しく守ることが重要である。

経口薬では、食事の有無や内容が薬の吸収に影響することがあり、薬によっては食前・食後などのタイミングが決められている。

また、肝臓の機能が落ちている動物では、初回通過効果や代謝が変化し、薬が効きすぎたり副作用が出やすくなったりすることもある。

動物看護師は、正確な投薬とともに、薬の効果や副作用が現れていないかを観察し、異常があれば獣医師に報告する役割をもつ。

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