疼痛管理(鎮痛)

痛みを和らげる疼痛管理は、動物福祉と回復の両面から重要である。痛みを管理する意義、動物の痛みの見分け方、鎮痛薬の種類、周術期や慢性の痛みへの対応、そして看護のポイントまでを、図ではなく文章で読んで理解する。

1痛みを管理する意義

痛みは苦痛であるだけでなく、食欲低下・行動変化を招き、回復を遅らせる。痛みからの解放は動物福祉(5つの自由のひとつ)の観点からも重要で、『動物だから我慢させてよい』ものではない。

痛みを放置すると苦痛・食欲低下・行動変化を招いて回復を遅らせる一方、疼痛管理による痛みからの解放は動物福祉(5つの自由)につながる。

痛みを和らげること(疼痛管理)は、動物医療においてとても大切である。

痛みは、その動物にとって大きな苦痛であるだけでなく、食欲を落とし、動こうとしなくなるなど行動を変え、結果として病気やけがからの回復を遅らせる。

動物福祉の基本である『5つの自由』にも『痛み・傷害・病気からの自由』が含まれており、痛みを管理することは福祉の観点からも欠かせない。

『動物だから痛みに強い』『多少の痛みは我慢させてよい』という考えは適切ではなく、人と同じように痛みに配慮する姿勢が求められる。

2痛みのサインと評価

動物は痛みを隠す傾向があり、行動の変化で評価する。元気・食欲の低下、うずくまる、触られるのを嫌がる、いつもと違う鳴き方、攻撃的になる、姿勢の変化などがサイン。とくにネコは痛みが分かりにくい。

動物は、本能的に痛みを隠そうとする傾向があるため、痛みの評価には注意深い観察が必要である。

言葉で訴えられない分、行動の変化から痛みを読み取る。

元気や食欲の低下、丸まってじっとうずくまる、特定の部位を触られるのを嫌がる、いつもと違う声で鳴く、ふだんおとなしいのに攻撃的になる、動きたがらない、不自然な姿勢をとるなどが痛みのサインである。

痛みの程度を一定の基準で評価するペインスコア(疼痛スケール)も用いられる。

とくにネコは痛みのサインが分かりにくく見逃されやすいため、より丁寧な観察が求められる。

3鎮痛薬の種類

鎮痛薬には、炎症と痛みを抑えるNSAIDs(消化管・腎臓への影響に注意、ネコは特に慎重)、強い痛みに使うオピオイド、局所麻酔などがある。作用の異なる薬を組み合わせる多角的鎮痛(マルチモーダル)が有効。人用鎮痛薬は与えない。

痛みを抑える鎮痛薬には、いくつかの種類がある。

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、炎症と痛みの両方を抑え、手術後や関節炎などに広く使われるが、胃腸の潰瘍や腎臓への影響に注意が必要で、とくにネコでは慎重に用いる。

オピオイド(医療用麻薬性鎮痛薬)は強い鎮痛作用をもち、手術の前後など強い痛みに用いる。

局所麻酔は、特定の部位の痛みを伝わらないようにする。

作用のしくみが異なる薬を組み合わせて、少ない量で効果的に痛みを抑える方法を多角的鎮痛(マルチモーダル)という。

なお、人用の鎮痛薬(アセトアミノフェンやイブプロフェンなど)は、イヌ・ネコでは中毒を起こし、とくにネコでは致命的になりうるため、絶対に自己判断で与えない。

4周術期・慢性の痛みへの対応

手術では、痛みが出る前から鎮痛する『先制鎮痛』と、術中・術後の継続的な鎮痛が大切。関節炎などの慢性痛は、薬に加えて体重管理・環境調整・リハビリなどを組み合わせて長期に管理する。

痛みは、場面に応じた対応が必要である。

手術では、痛みが強く出てから対応するより、痛みが出る前から鎮痛を始める『先制鎮痛』が効果的とされ、術中・術後も継続して痛みを抑える。

痛みを早めにしっかり抑えることで、回復がスムーズになる。

一方、関節炎(変形性関節症)などの慢性的な痛みは、長く付き合っていく必要がある。

鎮痛薬だけに頼らず、関節の負担を減らす体重管理、滑らない床や段差の解消などの環境の工夫、適度な運動やリハビリテーションなどを組み合わせて、生活の質を保ちながら管理する。

5看護のポイント

痛みのサインを観察・記録(ペインスコア)し、投薬を管理して効果と副作用を確認する。安静で快適な寝床などの環境を整え、温める・冷やすなどのケアを行い、飼い主に家庭での観察ポイントを伝える。

疼痛管理では、動物看護師の観察とケアが大きな役割を果たす。

痛みのサインを継続して観察し、ペインスコアなどで記録して、鎮痛がうまくいっているか、薬の副作用(NSAIDsでの嘔吐・食欲不振など)が出ていないかを確認する。

獣医師の指示に従って投薬を管理し、効果を評価して伝える。

落ち着いて休める静かな環境、柔らかい寝床、安静の確保など、痛みを増やさない環境づくりも大切である。

状態に応じて、患部を温めたり冷やしたりするケアを行うこともある。

退院後に向けて、飼い主に痛みのサインの見方や、薬の与え方・注意点を分かりやすく伝えることも看護の役割である。