図解で学ぶ
動物看護学

投薬・調剤の実務(指示略語・薬用量計算・麻薬/向精神薬の保管)

投薬指示でよく使うラテン語由来の略語(SID=1日1回、BID=1日2回、TID=1日3回、QID=1日4回、PRN=必要時、PO=経口、SC=皮下、IM=筋肉内、IV=静脈内)、体重×用量(mg/kg)で求める薬用量計算の基本、錠剤・坐薬・注射剤などの剤形と冷所(1〜15℃)・室温(1〜30℃)といった保存温度の区分、そして麻薬(鍵をかけた専用の堅固な保管庫・麻薬管理者・帳簿を最終記入日から2年間保存)と向精神薬(麻薬とは別に保管)の管理義務までを、図ではなく文章で読んで理解する。

1投薬指示略語 ― 投与回数(SID・BID・TID・QID・PRN)

要点投薬指示では、ラテン語由来の略語で1日の投与回数を表す。SID=1日1回、BID=1日2回、TID=1日3回、QID=1日4回。PRNは『必要に応じて』投与することを表す。TIDとQIDを取り違えると過剰投与(オーバードーズ)につながるため、正確な理解が欠かせない。

動物病院のカルテや処方指示では、1日に何回投与するかを、ラテン語に由来する略語で表すことが多い。

SID(semel in die)は『1日1回』、BID(bis in die)は『1日2回』、TID(ter in die)は『1日3回』、QID(quater in die)は『1日4回』を意味する。

PRN(pro re nata)は『必要に応じて(症状があるときに)』投与することを表す略語で、毎日決まった回数を投与する指示とは異なる。

これらの略語は見た目が似ているため、とくにTID(1日3回)とQID(1日4回)を取り違えると、投与回数が増えて過剰投与(オーバードーズ)につながる危険がある。

動物看護師が投薬を担当する際は、指示された略語を正確に読み取ることが欠かせない。

2投薬指示略語 ― 投与経路(PO・SC・IM・IV)

要点投与経路も略語で表される。PO(per os)=経口(口から)、SC(subcutaneous)=皮下、IM(intramuscular)=筋肉内、IV(intravenous)=静脈内。経路によって薬の効き始める速さや、使える薬の種類が異なる。

投薬指示には、投与回数だけでなく、『どこから投与するか(投与経路)』も略語で示されることが多い。

PO(per os)は『経口』を意味し、口から飲ませる投与方法である。

錠剤・カプセル・水薬などがこれにあたる。

SC(subcutaneous)は『皮下』を意味し、皮膚の下に薬液を注入する投与方法である。

IM(intramuscular)は『筋肉内』を意味し、筋肉に薬液を注入する投与方法である。

IV(intravenous)は『静脈内』を意味し、血管(静脈)に直接薬液を注入する投与方法である。

一般に、経口(PO)は効果がゆっくり現れ、静脈内(IV)は最も速く効果が現れる。

投与経路によって使える薬の種類や効果の現れ方が異なるため、指示された経路を正確に守ることが重要である。

3薬用量計算の基本

要点薬用量(1回に投与する薬の量)は、『体重(kg)× 用量(mg/kg)=投与量(mg)』という式で計算する。処方は『○mg/kg』という体重あたりの量で示されることが多いため、動物の体重を正確に把握したうえで計算する。

動物への投薬では、体の大きさ(体重)によって適切な薬の量が変わるため、多くの薬は『体重1kgあたり何mg(mg/kg)』という単位で用量が示される。

1回に投与する薬の量(投与量)は、次の式で計算する。

『体重(kg)× 用量(mg/kg)=投与量(mg)』。

たとえば、体重4kgの猫に、5mg/kgの薬を投与する場合、4kg × 5mg/kg = 20mgが1回の投与量となる。

1日に投与する総量を求めるときは、これに1日の投与回数(SID・BID・TIDなど)をかける。

薬用量計算では、体重の単位(kg・g)や、薬の濃度の単位(mg/mL・%など)を取り違えないよう、落ち着いて確認することが大切である。

4希釈計算の基本

要点希釈した液の濃度は『溶質の量 ÷ 全体の量』で求められる。たとえば、原液1mLを生理食塩水で薄めて全体を10mLにした場合、濃度は1mL÷10mL=0.1(10%)になる。消毒液の希釈や、注射薬を薄めて少量ずつ投与するときなどに使う考え方である。

原液(濃い薬液や消毒液)を、水や生理食塩水などで薄めて使うことを希釈という。

希釈したあとの濃度は、『溶質(薄めたいもの)の量 ÷ 全体の量』で計算できる。

たとえば、ある薬液1mLを生理食塩水9mLに混ぜて、全体を10mLにした場合、濃度は1mL ÷ 10mL = 0.1、つまり10%になる。

消毒液を規定の濃度に薄めるときや、少量の注射薬を扱いやすい量に希釈するときなど、動物看護の現場では希釈計算を行う場面が多い。

『薄めたいものの量』と『薄めたあとの全体の量』を取り違えないように注意して計算することが大切である。

5剤形の種類

要点薬の形(剤形)には、錠剤・カプセル剤(経口)、水薬・シロップ剤(経口)、坐薬(直腸内に挿入)、注射剤(注射で投与)、点眼薬・点耳薬(目・耳に投与)、軟膏・クリーム剤(皮膚に塗布)などがある。剤形によって、適した投与経路や保存方法が異なる。

薬にはさまざまな『形(剤形)』があり、それぞれ適した使い方がある。

錠剤・カプセル剤は、経口(PO)で投与する、最も一般的な剤形である。

水薬・シロップ剤も経口で投与するが、錠剤を嫌がる動物や、少量ずつ調整して与えたい場合に使われる。

坐薬は、肛門から直腸内に挿入して使う剤形で、嘔吐していて経口投与が難しい場合などに用いられることがある。

注射剤は、皮下(SC)・筋肉内(IM)・静脈内(IV)などに注射して投与する剤形である。

点眼薬・点耳薬は、それぞれ目・耳に直接投与する剤形、軟膏・クリーム剤は皮膚に塗布する剤形である。

剤形によって、体内での吸収の速さや、保存に適した温度(後述)が異なる点にも注意する。

6医薬品の保存温度の区分

要点日本薬局方では、医薬品の保存温度を、冷所=1〜15℃、室温=1〜30℃、常温=15〜25℃、標準温度=20℃と定めている。坐薬や点眼薬など『冷所保存』と指定された薬は、冷蔵庫(凍結しないよう注意)で保存する。

医薬品は、その性質に応じて適切な温度で保存しないと、品質が劣化することがある。

日本薬局方では、保存温度の区分を、標準温度=20℃、常温=15〜25℃、室温=1〜30℃、冷所=1〜15℃、と定めている。

多くの錠剤・カプセル剤は室温保存でよいが、湿気に弱いため、密閉した容器に乾燥剤とともに保管するなどの工夫が必要である。

一方、坐薬や一部の点眼薬など、『冷所保存』と指定された薬は、家庭用・院内用の冷蔵庫で保存する。

ただし、凍結すると品質が損なわれることがあるため、凍らせないよう注意が必要である。

処方された薬を正しく保管することも、動物看護師が担う投薬管理の一部である。

7麻薬の保管管理

要点麻薬は、他の薬と区別し、麻薬専用の鍵のかかる堅固な保管庫(金庫等)に保管しなければならない。麻薬を取り扱う施設には麻薬管理者を置く必要があり、麻薬帳簿への記載と、その帳簿を最終記入日から2年間保存することが義務づけられている。

動物用にも使われる麻薬性鎮痛薬などは、『麻薬及び向精神薬取締法』により厳重な管理が義務づけられている。

麻薬は、他の薬とは区別して、麻薬専用の、鍵のかかる堅固な保管庫(固定した金庫など)に保管しなければならない。

出し入れするとき以外は常に施錠し、鍵を保管庫に入れたままにしてはならない。

麻薬を取り扱う施設(麻薬施用者が診療を行う施設)には、麻薬管理者を置く必要があり、麻薬管理者が不在の施設では麻薬を保管・管理することができない。

麻薬の受け払い(受け取り・使用・廃棄など)は、麻薬帳簿に速やかに記載しなければならない。

この麻薬帳簿は、最終の記載をした日から2年間保存することが義務づけられている。

帳簿上の残数と実際の在庫数を定期的に照合し、差異が無いかを確認することも、麻薬管理の重要な業務である。

8向精神薬の保管管理

要点向精神薬は、麻薬とは別に、鍵をかけた設備の中に保管しなければならない(麻薬と同じ保管庫には保管しない)。第一種向精神薬は常に施錠管理が必要で、譲受け・施用・廃棄の記録を2年間保存する。

向精神薬(鎮静薬や一部の睡眠薬など)も、『麻薬及び向精神薬取締法』によって取り扱いが定められている。

向精神薬は、麻薬と混同されやすいが、麻薬とは区別して保管しなければならない。

具体的には、麻薬用の保管庫とは別に、鍵のかかる設備内に保管する必要がある。

施錠管理の厳しさは向精神薬の種類によって異なり、第一種向精神薬は常に施錠管理が必要で、第三種向精神薬は職員が不在のときに施錠すればよいとされる。

また、一定の数量を定めて管理する向精神薬(定数配置のもの)については、譲り受けたとき、動物に使用したとき、返品・廃棄したときなどに、品名・数量・年月日などを記録簿に記入し、この記録を2年間保存することが求められる。

『麻薬と向精神薬は、どちらも施錠管理が必要だが、保管庫は別にする』という点を押さえておく。

理解できたら腕試し
確認問題 11問をとく