図解で学ぶ
動物看護学

医療器具の名称・構造(聴診器・翼状針・輸液セット・屈折計など)

動物看護の現場で日常的に使う医療器具の名称・構造・用途を整理する。聴診器の膜面(高音域向き)とベル面(低音域向き)の使い分け、採血・静脈内投与に使う翼状針、輸液セットを構成する点滴筒・クレンメ・三方活栓、急速輸液に使う加圧バッグ、尿比重や血漿タンパクを測る屈折計、錠剤を飲ませる経口投薬器具、複数回使えるバイアルと使い切りのアンプルの違い、そして酸素=緑・亜酸化窒素=青・治療用空気=黄という医療ガス配管の識別色(ボンベの塗色とは異なる点に注意)までを、図ではなく文章で読んで理解する。

1聴診器 ― 膜面とベル面の使い分け

要点聴診器はチェストピース・チューブ・耳管部からなる。チェストピースには膜面(ダイアフラム面)とベル面の2つの面があり、膜面は中〜高音域(呼吸音・腸蠕動音・心音など)の聴取に、ベル面は低音域(低音性の異常心音など)の聴取に向く。

聴診器は、体に当てて音を集めるチェストピース、音を伝えるチューブ(導管)、耳に入れる耳管部の3つの部分からなる。

多くの聴診器のチェストピースには、2つの面がある。

1つは膜面(ダイアフラム面)で、薄い振動板が音を集める。

中〜高音域の音を聴くのに向いており、呼吸音・腸蠕動音・心音など、幅広い聴取に使われる。

もう1つはベル面で、低音域の音を聴くのに向いている。

ベル面を体表に強く押し当てすぎると、皮膚がふたたび振動板のように働いてしまい、低音域が伝わりにくくなるため、そっと当てるのがコツである。

動物看護では、心音・肺音・腸蠕動音の聴取や、血圧測定(コロトコフ音の聴取)など、さまざまな場面で聴診器を使う。

2翼状針 ― 採血・静脈内投与に使う針

要点翼状針(蝶々針)は、指でつまみやすいよう蝶の羽根のような固定翼が付いた注射針。採血や静脈内投与(点滴の血管確保)に使われる。翼の色でゲージ(針の太さ)が分かるようになっている。短く浅く刺すため、痛みが少なく神経損傷などのトラブルが起こりにくい。

翼状針は、注射針の根もとに、指でつまみやすいよう蝶の羽根のような形の固定翼(羽根)が付いた針で、『蝶々針』とも呼ばれる。

主な用途は、採血と、静脈内投与(点滴のための血管確保)である。

翼の部分を指でつまんで血管に刺し、固定翼をテープなどで皮膚に固定して使う。

翼の色は、針の太さ(ゲージ)ごとに色分けされており、色を見れば太さが分かるようになっている。

翼状針は針が短く浅くしか刺さらないため、刺すときの痛みが少なく、神経損傷などのトラブルが起こりにくいという利点がある。

また、針を刺した際にチューブ内へ血液が逆流するのが見えるため、血管に入ったことを確認しやすく、採血のやり直しも起こりにくい。

3輸液セットの構造 ― 点滴筒・クレンメ・三方活栓

要点輸液セットは、輸液バッグに近い側から、びん針(導入針)・点滴筒(ドリップチャンバー)・導管(チューブ)・クレンメ・コネクターの順でつながる。点滴筒は滴下数を目で数える部分、クレンメは流量(速さ)を調節する部分。三方活栓は薬剤の混注や、複数のラインの切り替えに使う。

輸液セット(点滴セット)は、輸液バッグ・ボトルから薬液を血管内へ安全に投与するための一連の器材である。

輸液バッグに近い側から順に、①びん針(導入針。

輸液バッグ・ボトルに差し込む部分)、②点滴筒(ドリップチャンバー。

しずくが落ちる様子を目で見て滴下数を数える部分)、③導管(導液チューブ)、④クレンメ(クランプ。

チューブを締めたり緩めたりして、輸液の流れる速さ=流量を調節する部分)、⑤コネクター(カテーテルへの接続部)という構成が基本になる。

これに加えて、複数の薬剤を混ぜたり(混注)、複数の輸液ラインを切り替えたりするときに使う三方活栓(三方向に分岐したコック)や、ラインの途中に異物・気泡が入らないようにするインラインフィルターなどが必要に応じて追加される。

看護では、点滴筒の滴下の様子やクレンメの開き具合を見て流量を管理し、刺入部の腫れ・漏れが無いかを観察することが大切である。

4加圧バッグ ― 急速輸液のための器具

要点加圧バッグは、輸液バッグを覆って手動ポンプなどで空気を送り込み、輸液バッグ自体に圧をかけることで輸液を急速に投与するための器具。ショックなど、循環を早く立て直す必要がある緊急時の急速輸液で使われる。

通常の点滴は、輸液バッグの高さ(重力)を利用して自然に滴下させる。

しかし、ショックのように血圧が保てず、急いで大量の輸液を投与しなければならない緊急時には、自然滴下だけでは速度が足りないことがある。

そこで使われるのが加圧バッグである。

輸液バッグを加圧バッグで覆い、付属の手動ポンプなどで空気を送り込んでバッグ全体に圧力をかけることで、輸液を通常より速く血管内へ押し出すことができる。

加圧バッグは、ショックなど循環を急いで立て直す必要がある緊急時の急速輸液で用いられる器具である。

使用中は、輸液ラインに空気が混入しないよう、バッグ内の輸液が残っている間に使い終えることに注意する。

5屈折計 ― 尿比重・血漿タンパクの測定

要点屈折計は、光の屈折の度合いから、液体に溶けている物質の濃度を測る器具。動物看護では、尿比重の測定(腎臓の濃縮力の評価)と、血漿タンパク濃度の測定(脱水・低タンパク血症の評価)に使われる。少量の検体ですぐに測定できるのが利点。

屈折計は、光が液体を通るときに曲がる度合い(屈折率)を利用して、その液体に溶けている物質の濃度を測る器具である。

動物看護でよく使われる用途は2つある。

1つは尿比重の測定である。

尿比重は、尿にどれだけの溶質(老廃物など)が濃縮されているかを示す指標で、腎臓が尿をどれだけ濃縮できているか(腎臓の濃縮力)を評価するのに使われる。

試験紙法よりも機械法(屈折計法)のほうが、より正確とされる。

もう1つは血漿タンパク濃度の測定である。

血漿(遠心分離した血液の上澄み)を屈折計にのせることで、総タンパク濃度を素早く推定でき、脱水(濃縮されて数値が上がる)や、タンパクを失う病気(数値が下がる)の評価に役立つ。

屈折計は、少量の検体で、その場ですぐに結果が得られる(迅速検査)のが大きな利点である。

6経口投薬器具(ピルガンなど)

要点ピルガンは、錠剤やカプセルを嫌がる動物の口の奥まで運んで投薬するための補助器具。細い先端に錠剤をはさみ、口の奥へ届けてから押し出して使う。水薬やミルクを注入できるシリンジ状の部分を備えるものもある。

犬や猫の中には、錠剤やカプセルをそのまま飲ませようとしても、嫌がって吐き出してしまう個体がいる。

そうした動物への投薬を補助する器具の代表が、ピルガン(ピルポッパー)である。

ピルガンは、細くなった先端に錠剤・カプセルをはさみ、それを口の奥(のどの近く)まで運んでから、押し出しレバーで薬を放す、という仕組みの器具である。

口の奥に届けることで、動物が薬だけを器用に吐き出しにくくなる。

製品によっては、水に溶かした薬やミルクなどの液体を注入できる、注射器(シリンジ)のような部分を兼ね備えたものもある。

投薬後は、飲み込みを助けるためにシリンジなどで少量の水を飲ませたり、食事を与えたりすることもある。

7注射薬の容器 ― バイアルとアンプルの違い

要点バイアルは、ゴム栓で密封された容器で、注射針をゴム栓に複数回刺すことができ、薬液を複数回に分けて使用できる。アンプルは、ガラスの首を折って開封するガラス容器で、開封したら基本的に一度で使い切る。

注射薬の容器には、バイアルとアンプルという2つの代表的なタイプがある。

バイアルは、広口のガラス(またはプラスチック)容器に薬剤を入れ、口の部分をゴム栓で密封し、アルミキャップなどで巻き締めたものである。

ゴム栓には注射針を複数回刺すことができ、必要な量だけを何回かに分けてシリンジに吸い取って使うことができる。

アンプルは、ガラス管の中に薬液を密封した容器で、使うときはガラスの首の部分を折って開封する。

アンプルは一度開封すると、その中の薬液は基本的に一回で使い切る必要があり、バイアルのように複数回に分けて使うことはできない。

開封時にガラスの破片でケガをしないよう注意が必要な点も、バイアルとの違いである。

『バイアル=ゴム栓で複数回使える、アンプル=ガラスを折って開ける使い切り容器』と整理して覚えるとよい。

8医療ガス配管の識別色

要点JIS規格により、医療ガス配管(院内の壁や天井から酸素などを取り出す配管設備)の識別色は、酸素=緑、亜酸化窒素=青、治療用空気=黄と定められている。ただし、高圧ガス保安法によるガスボンベ自体の塗色は配管の色とは別の基準(酸素ボンベは黒)で決まっており、混同による事故が起こりうる点に注意する。

病院の壁や天井などに設置され、酸素などの医療ガスを取り出せるようにした配管設備には、ガスの種類ごとに色分け(識別色)が、JIS(日本産業規格)によって定められている。

代表的なものは、酸素=緑、亜酸化窒素=青、治療用空気(圧縮空気)=黄、である。

一方で、ガスボンベ自体の色(塗色)は、これとは別の法律である高圧ガス保安法によって定められている。

ここでは、酸素ボンベは黒、二酸化炭素(炭酸ガス)ボンベも黒、と定められている。

つまり、『医療ガス配管の識別色(JIS)』と『ガスボンベの塗色(高圧ガス保安法)』は、別々の基準で決められた色であり、同じガスでも配管とボンベで色が異なることがある。

とくに、医療ガス配管の酸素の識別色(緑)と、二酸化炭素(炭酸ガス)ボンベの塗色(緑)が同じ緑色であるため、『緑色だから酸素』と思い込んで取り違える事故が実際に起きている。

色だけで判断せず、ガスの名称表示も必ず確認することが重要である。

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