検査値の基準と見方(CBC・生化学)

血液検査でよく見る項目を、血球計算(CBC)と生化学検査に分けて整理する。各項目が何を表し、上がる・下がるとどんな状態が考えられるのかを、図ではなく文章で読んで理解する。基準値は施設や測定法で異なるため、あくまで目安として扱い、症状と合わせて総合的に判断する考え方を身につける。

1検査値の基礎(基準値の考え方)

基準値(基準範囲)は健康な動物の多くが収まる範囲で、種・年齢・状態や測定法・施設で変わる。1つの値だけで判断せず、複数の項目・症状・身体所見、そして経時的な変化と合わせて読む。

レッスン全体で扱う血液検査の主要項目を、血球計算(CBC)と生化学検査の2グループに分け、各項目で何を見るか(値が動く意味)を一覧にした。基準値は施設・測定法で異なるため、具体的な数値ではなく見方の要点を示している。

血液検査の結果には、項目ごとに基準値(基準範囲)が示される。

基準値は、健康な動物の多くが収まる値の範囲であり、種類(イヌ・ネコ)や年齢・状態、さらに測定方法や施設(検査機関)によっても異なる。

そのため、ある施設の基準値を別の施設にそのまま当てはめることはできず、数値はあくまで目安として扱う。

また、1つの項目だけを見て判断するのではなく、複数の項目を組み合わせ、症状や身体検査の所見と合わせて総合的に解釈することが重要である。

1回の値よりも、前回からの変化(経時的な推移)が役立つことも多い。

2血球計算(CBC)赤血球系

赤血球数・ヘモグロビン・ヘマトクリット(PCV)は酸素を運ぶ赤血球の量を表す。低下は貧血、上昇は多血または脱水(血液の濃縮)を示す。CBC用の採血にはEDTAを用いる。

血球計算(CBC)は、血液中の細胞成分(赤血球・白血球・血小板)を調べる基本的な検査である。

赤血球系の代表的な項目は、赤血球数、ヘモグロビン(血色素量)、ヘマトクリット(ヘマトクリット値・PCV、全体に占める赤血球の割合)である。

これらが低下していれば、酸素を運ぶ力が落ちた貧血を示す。

逆に上昇している場合は、赤血球が増える多血のほか、脱水によって血液が濃くなった状態(血液濃縮)でも見かけ上高くなる。

犬ではヘマトクリットの目安はおおよそ37〜55%、猫では30〜45%程度とされるが、施設により異なる。

CBC用の血液にはEDTAという抗凝固剤を用いる。

3血球計算(CBC)白血球・血小板

白血球数は上昇で炎症・感染・ストレス、低下でウイルス感染や骨髄抑制を疑う。血小板は止血に関わり、低下すると出血傾向(点状出血など)が現れる。

白血球は体を守る防御の細胞で、その数(白血球数)は体の状態をよく反映する。

白血球数が増えていれば、細菌感染や炎症、ストレスなどが考えられ、減っていれば、ウイルス感染や骨髄の機能低下(骨髄抑制)などを疑う。

白血球はさらに好中球・リンパ球などの内訳(白血球分画)を見ることで、より詳しい状態がわかる。

血小板は止血にはたらく成分で、数が大きく減ると血が止まりにくくなり、点状出血やあざ(皮下出血)が現れることがある。

なお、ネコの血液は固まりやすく、血小板が見かけ上低く出ることがあるため、塗抹標本での確認も大切である。

4生化学検査①肝臓・腎臓

肝臓はALT・AST(肝細胞の傷害)、ALP(胆汁うっ滞など)、総ビリルビン(黄疸)で評価。腎臓はBUN・クレアチニン(Cre)・SDMAの上昇で機能低下や脱水を疑う。

生化学検査は、血液の液体成分(血清・血漿)に含まれる成分を調べ、臓器の状態を評価する。

肝臓では、肝細胞が傷つくと血液中に漏れ出るALT・ASTという酵素が上昇する(とくにALTはイヌで肝臓に特異性が高い)。

胆汁の流れが滞るとALPや総ビリルビンが上がり、ビリルビンの上昇は黄疸として現れる。

腎臓では、老廃物であるBUN(尿素窒素)やクレアチニン(Cre)が、腎機能の低下や脱水(腎臓へ届く血流の減少)で上昇する。

近年はより早期に腎機能の低下をとらえる指標としてSDMAも用いられる。

リンの上昇も腎臓病で重要な所見になる。

5生化学検査②代謝・タンパク・電解質

血糖(グルコース)は糖尿病で上昇するが、ネコはストレスで一過性に上がることがある。総タンパク・アルブミンは栄養や脱水・炎症を反映し、Na・K・Clなどの電解質は脱水や腎不全・嘔吐下痢で変動する。

代謝に関わる項目では、血糖(グルコース)が重要である。

血糖が持続的に高ければ糖尿病を疑うが、ネコでは診察や採血のストレスで一時的に血糖が上がること(ストレス性高血糖)があり、解釈に注意する。

血液中のタンパク質を示す総タンパク・アルブミンは、栄養状態や脱水(濃縮で上昇)、炎症や肝臓・腎臓の病気などを反映する。

電解質(ナトリウム・カリウム・クロールなど)は、脱水・腎不全・嘔吐や下痢などで変動する。

とくにカリウムは、高値(高カリウム血症)で重い不整脈を起こすため、腎不全や雄ネコの尿道閉塞などでは注意して確認する。

6採血管の種類と添加剤(EDTA・クエン酸・ヘパリン・NaF)

採血管には目的に応じた添加剤が入っている。CBC(全血球計算)→EDTA、凝固検査→クエン酸、生化学→ヘパリン(または無添加)、血糖測定→フッ化ナトリウム(NaF)。用途を間違えると正確な結果が得られない。

採血した血液は目的によって異なる種類の採血管(試験管)に入れる必要がある。

①EDTA管(紫・ラベンダーキャップ):EDTAはカルシウムをキレート(捕捉)して凝固を阻止する。

CBC(全血球計算、赤血球・白血球・血小板数など)に使用する。

②クエン酸管(水色キャップ):クエン酸ナトリウムがカルシウムと結合して抗凝固。

血液凝固検査(PT・APTT)に使用。

血液とクエン酸の混合比(通常9:1)を正確に守ることが重要。

③ヘパリン管(緑キャップ):ヘパリンがトロンビンを阻害して抗凝固。

主に生化学検査(電解質・酵素・タンパクなど)に使用。

④フッ化ナトリウム(NaF)管(灰色キャップ):NaFは赤血球や血小板などの解糖系酵素を阻害することで、採血後も血液中のグルコース(血糖)が消費されないように保存する。

「血糖を正確に測定するために最も適した採血管添加剤はフッ化ナトリウム(NaF)」というのが重要なポイントである。

NaFには弱い抗凝固作用もあるが、主目的はグルコースの安定化である。

用途と添加剤を間違えると、測定値に影響が出るため(例:EDTA管で凝固検査をすると正確な結果が出ない)、採血前に適切な管を選択する。

7検査値を読むときの注意

1項目で決めつけず、複数の値・症状・身体所見を合わせて判断する。採血条件(絶食か・溶血・ストレス)で値は変わる。看護師は検体を適切に扱い、異常値や採血状況を正確に記録・報告する。

検査値を読むときは、ひとつの項目の異常だけで結論を出さず、複数の値や症状・身体検査の所見と合わせて考えることが基本である。

値は採血の条件によっても変わる。

食後の採血では中性脂肪や血糖が上がり、採血手技や保存状態で赤血球が壊れる溶血が起きると、カリウムなど一部の項目が見かけ上高くなる。

ストレスや興奮も、白血球や血糖などに影響する。

動物看護師は、適切な抗凝固剤の選択や検体の正しい取り扱い、溶血を避ける丁寧な採血、そして絶食の有無や採血時の状況の記録を通じて、正確な検査を支える役割をもつ。

明らかな異常値は、まず測定の確認も含めて獣医師の判断を仰ぐ。

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