輸液量の計算(維持量・脱水補正・滴下数)

輸液の量をどう決めるかを計算で学ぶ。1日に必要な輸液量は、生きるのに必要な維持量に、脱水で失われた不足分(脱水補正量)と、嘔吐・下痢などで進行中に失われる分(進行性喪失量)を足して求める。維持量はおよそ50ml/kg/日(約2〜3ml/kg/時)。脱水の補正量は『脱水の程度(%)×体重(kg)×10=ml』で計算し、ふつう24〜48時間かけてゆっくり補う。ショックで血圧が保てないときは、犬で60〜90ml/kg/時、猫で40〜60ml/kg/時を目安に、少量ずつ分けて急速投与する。点滴の滴下数(1分あたり何滴か)の計算も含めて、文章と確認問題で理解する。

1輸液量の考え方(3つの足し算)

1日に必要な輸液量は、3つを足して求める。①維持量(生きるのに最低限必要な水分)+②脱水補正量(すでに脱水で失われた不足分)+③進行性喪失量(嘔吐・下痢などでこれから失われる分)。この合計を、一定時間かけて投与する。

必要な輸液量は「①維持量+②脱水補正量+③進行性喪失量」を足し合わせて求め、その合計を一定時間(ふつう1日)かけて投与する。

輸液の量は、やみくもに決めるのではなく、必要な分を足し合わせて計算する。

必要な輸液量は、大きく3つの要素からなる。

①維持量は、呼吸や排尿などで日々失われる、生きていくのに最低限必要な水分量である。

②脱水補正量(欠乏量)は、すでに脱水によって体から失われてしまった水分の不足分で、これを補う必要がある。

③進行性喪失量は、嘔吐や下痢などによって、これからも失われ続ける分である。

1日に必要な輸液量は、この『維持量+脱水補正量+進行性喪失量』を足し合わせて求め、それを一定の時間(ふつう1日かけて)投与する。

それぞれの量を、次のセクションで具体的に計算していく。

2維持量の計算

維持量は、生きるのに必要な基本の水分量で、おおよそ1日あたり50ml/kg(教科書によっては40〜60ml/kg)。時間あたりに直すと、およそ2〜3ml/kg/時になる。例:体重5kgなら、50×5=250ml/日。

維持量は、生きていくのに必要な基本の水分量である。

目安として、1日あたりおよそ50ml/kg(報告や教科書により40〜60ml/kgとされることもある)で計算する。

たとえば、体重5kgの動物なら、50ml × 5kg = 250ml/日が維持量の目安になる。

これを時間あたりに直すと、およそ2〜3ml/kg/時となる。

(より正確には、体重が大きい動物ほど体重あたりの必要量は少なくなるため、体重の0.75乗を使った計算式もあるが、まずは『1日およそ50ml/kg』を基本として覚えるとよい。

)維持量は、脱水や進行性の喪失がない動物でも、絶食中などで口から水をとれないときに必要になる、いわば『土台』の量である。

3脱水補正量の計算

脱水補正量(不足分)は、『脱水の程度(%)×体重(kg)×10=ml』で計算する。例:5%脱水で体重10kgなら、5×10×10=500ml。この不足分は、一気に入れず、ふつう24〜48時間かけてゆっくり補正する。

脱水補正量は、すでに失われている水分の不足分で、脱水の程度(%)と体重から計算する。

計算式は、『脱水の程度(%)× 体重(kg) × 10 = 不足量(ml)』である。

(これは、体重の◯%の水分が失われた、という考え方を、ml に直したものである。

たとえば体重10kgの5%は0.5kg=500gで、これは約500mlの水分にあたる。

)例として、5%の脱水がある体重10kgの動物では、5 × 10 × 10 = 500ml が補うべき不足量になる。

この不足分は、一度に急いで入れると体に負担がかかるため、ふつうは24〜48時間ほどかけてゆっくり補正する。

脱水の程度は、皮膚のつまみ(ツルゴール)の戻りの遅さ、口の中の乾き、目のくぼみ、脈の状態などから推定する。

4ショック時の急速輸液

出血や重度の脱水で血圧が保てないショックでは、すばやく血管内を満たす急速輸液を行う。目安量は、犬で60〜90ml/kg/時、猫で40〜60ml/kg/時。ただし全量を一気に入れず、その1/4ほどを短時間で投与しては反応(脈・血圧・粘膜色)を見て、必要に応じてくり返す。

出血や重い脱水などで血圧が保てなくなった状態(ショック)では、ふだんの輸液とは別に、血管内をすばやく満たす急速輸液(ショック輸液)を行う。

目安となる量は、1時間あたり、犬で約60〜90ml/kg、猫で約40〜60ml/kgである(ネコは犬より少なめにする)。

ただし、この量を一気に全部入れるのではなく、まずその1/4ほど(例:4分の1量)を10〜15分などの短時間で投与し、脈・血圧・粘膜の色・元気などの反応をみる。

反応をみて、まだ足りなければ、もう一度同じように投与する、という形でくり返し、入れすぎ(容量過負荷・肺水腫)を防ぐ。

ネコは犬よりも容量過負荷に弱いため、とくに慎重に量と速度を調整する。

急速輸液は、動物の状態を見ながら細かく調整する、危険もともなう処置である。

5滴下数の計算と看護

輸液ポンプがないときは、点滴筒の滴下数で速度を合わせる。1分あたりの滴下数=(1時間の輸液量ml × 1mlあたりの滴数) ÷ 60分。輸液セットは一般用が1ml=約20滴、小児用(微量用)が1ml=約60滴。看護では、速度・残量の確認、過剰輸液(呼吸が速い・むくみ・肺水腫)の兆候の観察が大切。

輸液ポンプを使わない場合は、点滴筒(しずくが落ちる部分)の滴下数を数えて、投与速度を合わせる。

1分あたりの滴下数は、『(1時間に入れる量ml × 1mlあたりの滴数)÷ 60分』で計算する。

1mlあたりの滴数は、使う輸液セットによって決まっており、一般用(成人用)の輸液セットは1ml=約20滴、小児用(微量用)の輸液セットは1ml=約60滴である。

たとえば、1時間に60mlを一般用セット(20滴/ml)で入れる場合、(60 × 20)÷ 60 = 20滴/分、つまり1分間に20滴に合わせればよい。

看護では、計算した速度どおりに滴下しているか、輸液の残量はどれくらいかをこまめに確認する。

また、入れすぎ(過剰輸液)になると、呼吸が速く苦しくなる・体やまぶたがむくむ・肺に水がたまる(肺水腫)などの兆候が出るため、これらを見逃さず観察し、異常があれば獣医師に報告する。

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