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動物看護学

応急処置と緊急疾患(出血・誤飲・熱中症・ショック・アナフィラキシー・感電・熱傷)

出血・誤飲誤食・熱中症・けいれん発作・ショック・アナフィラキシー・感電・熱傷など、緊急時の応急処置の基本を整理する。応急処置はあくまで受診までのつなぎであり、人の安全確保・状態把握・早期受診が原則。代表的な場面ごとの対応と、ショック・アナフィラキシーなど院内での緊急対応を学ぶ。

1応急処置の基本

要点応急処置は受診までのつなぎ。まず人の安全を確保し(痛がる動物は咬むため保定に注意)、意識・呼吸・出血など状態を把握し、慌てず、できるだけ早く動物病院へ連絡・受診する。

応急処置の基本原則の流れ。受診までのつなぎとして、まず人の安全を確保し、次に意識・呼吸・出血など全身の状態を把握し、動物病院に連絡してできるだけ早く受診する。

応急処置とは、けがや急病のときに、動物病院で本格的な治療を受けるまでの間に行う最初の手当てである。

あくまで受診までのつなぎであり、応急処置だけで済ませようとせず、早めの受診を前提にする。

まず大切なのは、対応する人の安全である。

強い痛みや恐怖を感じている動物は、ふだんおとなしくても咬んだり引っかいたりするため、保定の仕方に注意する。

次に、意識があるか、呼吸をしているか、大きな出血はないかなど、全身の状態を落ち着いて把握する。

そして、何が起きたかを動物病院に伝え、指示を仰ぎながらできるだけ早く受診することが基本である。

2出血

要点出血は、清潔な布やガーゼで傷口を直接強く押さえる『直接圧迫』が基本。手足なら心臓より高く保つ。止血帯は組織を傷めるため安易に使わず、圧迫しながら速やかに受診する。

外傷などで出血しているときは、止血が優先となる。

基本は直接圧迫止血で、清潔な布やガーゼ・タオルを傷口に当て、しっかりと押さえて圧迫する。

すぐに血が止まらなくても、布をはがすと固まりかけた血が取れてしまうため、上から布を足してそのまま押さえ続ける。

手足からの出血では、可能であれば傷のある部位を心臓より高く保つと出血が抑えられる。

ひもなどで強く縛る止血帯は、組織を傷めたり血流を止めすぎたりする危険があるため、安易には行わず、圧迫を続けながら速やかに受診する。

3誤飲・誤食

要点誤飲では『何を・いつ・どれだけ』を把握し、原因物や包装を持参して受診する。鋭利物・腐食物の誤食や意識が低下しているときは、自己判断で吐かせない(催吐の禁忌)。

異物や有害な物を飲み込んだ(誤飲・誤食した)疑いがあるときは、何を・いつ・どのくらい口にしたかをできる限り把握する。

中毒の恐れがある場合は、原因と思われる食品・薬・植物の現物や包装(成分や量がわかるもの)を持参すると、診断や処置に役立つ。

家庭で安易に吐かせるのは危険なことがある。

鋭利な物や腐食性のある物(ボタン電池など)を飲んだとき、けいれんや意識の低下があるときは、催吐により食道や気道を傷つけたり誤嚥したりする恐れがあるため、自己判断で吐かせない。

のどに物が詰まって呼吸が苦しそうなとき(窒息)は緊急で、口の中に見える異物があれば無理のない範囲で取り除き、すぐに受診する。

迷ったときは、まず動物病院に連絡して指示を仰ぐ。

4熱中症

要点熱中症は、涼しい場所へ移し、水で体を濡らす・風を当てるなどして冷やしながら速やかに受診する。氷水での急激すぎる冷却は避ける。高温多湿・車内・短頭種は特に高リスク。

熱中症は、高温多湿の環境や車内などで体温が異常に上がる、命に関わる緊急事態である。

ぐったりする・激しいパンティング(あえぎ呼吸)・よだれ・ふらつきなどがみられる。

対応としては、まず涼しい風通しのよい場所へ移し、体を水で濡らす・うちわや扇風機で風を当てるなどして体を冷やしながら、できるだけ早く受診する。

ただし、氷水につけるなどの急激すぎる冷却は、末梢の血管が収縮してかえって熱がこもることがあるため避け、冷やしすぎないようにする。

短頭種や肥満・高齢の動物、高温多湿の日は特にリスクが高く、車内への置き去りは短時間でも危険である。

5けいれん発作

要点けいれん中は無理に押さえず、口に手を入れない。周囲の危険物を遠ざけ、暗く静かにして見守り、発作の長さや様子を記録(できれば動画)する。発作が長引く・繰り返すときは緊急受診。

けいれん発作では、全身が硬直したりガクガクと震えたり、意識がなくなったりする。

発作中は、無理に体を押さえつけたり、口に手や物を入れたりしてはいけない(咬傷の危険があり、舌を飲み込むこともない)。

ぶつかってけがをしないよう、周囲の家具や危険物を遠ざけ、落下の危険があれば床におろし、部屋を暗く静かにして見守る。

発作が始まった時刻と続いた時間、どんな様子だったかを記録しておくと、診断や治療方針に役立つため、可能であれば動画を撮っておくとよい。

発作が5分以上続く、短時間に何度も繰り返す、発作後も意識が戻らないといった場合は、命に関わるため緊急で受診する。

6ショックとアナフィラキシー

要点ショックは全身の組織に血液・酸素が行き渡らなくなる状態。粘膜の蒼白・CRTの延長・頻脈・虚脱がサイン。アナフィラキシーは急性アレルギー反応で、ワクチン・薬・虫刺されなどが原因。アドレナリン投与と迅速な処置が必要。

ショックは、何らかの原因で全身の臓器・組織に十分な血液が届かなくなり、多臓器が障害される生命危機状態である。

主な原因には、大量出血(出血性ショック)、心臓のポンプ機能低下(心原性ショック)、重篤な感染(敗血症性ショック)、アナフィラキシー(分布性ショック)などがある。

共通するサインは、粘膜の色が青白くなる・CRT(毛細血管再充満時間)が2秒以上に延長する・頻脈・弱い脈・虚脱・体温低下などである。

ショックが疑われたら速やかに獣医師に報告し、酸素吸入・輸液の準備・保温を行いながら継続的にモニタリングする。

アナフィラキシーは、ワクチン・薬・虫刺されなどに対する急性の全身アレルギー反応で、接触後数分〜30分以内に起こることが多い。

顔の腫れ・蕁麻疹・嘔吐・下痢・急激な血圧低下・呼吸困難などが現れ、重症では意識消失・心停止に至る。

治療の第一選択はアドレナリン(エピネフリン)の筋肉内投与で、その後ステロイド・抗ヒスタミン薬・輸液などを行う。

ワクチン接種後は少なくとも20〜30分は院内で経過観察することが重要である。

7感電・熱傷(やけど)

要点感電(電気ショック)はコードを噛むなどで起こり、口腔内の熱傷・不整脈・肺水腫に注意。熱傷は患部を流水で冷やし、こすらず受診。熱傷の深さと面積によって重症度が決まる。

感電(電気ショック)は、子犬・子猫が電気コードを噛むことで起こることが多い。

電流が体を流れることで、口腔内・舌の熱傷(こげた傷)、心筋への直接ダメージによる不整脈、肺への障害による肺水腫などが起こる。

感電直後は元気に見えても、数時間後に肺水腫が現れることがあるため(遅発性肺水腫)、症状がなくても受診・経過観察が必要である。

感電した動物には素手で触れず、まず電源を切ってから安全を確認し、速やかに受診する。

熱傷(やけど)は、高温の液体・面・火炎などによる組織の損傷で、重症度は深さ(表面・深部)と面積で決まる。

応急処置としては、患部を流水や冷たい水で10〜20分程度冷やす(氷は組織を傷めるため直接当てない)。

水ぶくれが出来ていても破かず、こすらず、清潔なタオルで保護して受診する。

ペットの場合は被毛があって重症度の評価が難しく、見た目以上に深い場合があるため、速やかな受診が必要である。

8その他の緊急と受診の判断

要点骨折が疑われる時は無理に動かさない。呼吸困難・大量出血・意識消失・繰り返す発作・激しい嘔吐下痢・腹部の急な膨満などは緊急。迷ったらまず連絡する。

そのほかの場面でも、応急処置の基本がある。

骨折や強い打撲が疑われるときは、痛がる部位を無理に動かさず、できるだけ安静に保って運ぶ。

交通事故では外見の傷だけでなく内臓損傷・出血がある可能性が高く、安静搬送と速やかな受診が必須である。

次のような状態は、命に関わる緊急のサインである。

呼吸が苦しそう・口や舌が青白い、止まらない大量出血、意識がない・呼びかけに反応しない、けいれんが長引く・繰り返す、激しい嘔吐や下痢が続く、おなかが急に張ってくる(胃拡張胃捻転の疑い)、何度も吐こうとするのに吐けない、などである。

判断に迷うときは、自己判断で様子を見すぎず、まず動物病院に連絡して指示を仰ぐことが大切である。

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