CPR時の薬剤と除細動(RECOVER準拠)

心肺蘇生(CPR)で使われる薬剤は「心停止薬・抗不整脈薬・拮抗薬」の3グループに分けて覚える。それぞれの薬がなぜ使われるのか、どの状況で選ぶのかを理解することが重要。除細動のエネルギー量は犬と猫で異なるため、その差も押さえておく。

1CPRにおける薬剤投与の位置づけ

CPRは胸骨圧迫と人工呼吸(BLS)が最優先。薬剤投与はBLSを止めずに行う高度救命処置(ALS)の一部。静脈路(IV)か骨髄内投与(IO)で行い、気管内投与は薬剤によって吸収が不安定なため推奨されない。

CPRでは胸骨圧迫と換気(BLS)が最優先で、薬剤投与はBLSを止めずに行うALSの一部。投与経路はIVまたはIOで、薬剤は心停止薬・抗不整脈薬・拮抗薬の3グループに分けて整理する。

心肺停止(CPA)に対するCPRは、まず胸骨圧迫と換気を途切れなく続けることが最重要である。

薬剤はあくまでもBLS(基本救命処置)を補助する高度救命処置(ALS)の手段であり、胸骨圧迫の中断を最小限にしながら投与する。

投与経路は静脈内(IV)または骨髄内(IO)が基本で、骨髄内投与はIVラインが確保できない場合の代替として有効である。

薬剤は大きく3グループに分けられる:心停止時に心拍再開を促す「心停止薬」、不整脈を治療する「抗不整脈薬」、麻酔薬などの作用を打ち消す「拮抗薬」である。

RECOVER(Reassessment Campaign on Veterinary Resuscitation)は、動物のCPRエビデンスをまとめた国際的なガイドラインであり、各薬剤の用量もこのガイドラインに基づいている。

2心停止薬①:アドレナリン(エピネフリン)

アドレナリンはCPRの第一選択薬。α作用で末梢血管を収縮させ、冠動脈・脳動脈への血流を増やして心拍再開を促す。用量は0.01 mg/kg(1:1000製剤 = 1 mg/mL で0.01 mL/kg)。3〜5分ごとに繰り返す。

アドレナリン(エピネフリン)は、心停止に対するCPRで最も広く使われる薬剤である。

α1アドレナリン受容体を刺激して末梢血管を収縮させることで大動脈圧を上昇させ、冠動脈と脳動脈への灌流を改善する。

β作用による心収縮力増強・心拍数増加も期待できるが、CPRにおける主な有効メカニズムはα作用とされている。

用量はRECOVER 2024では0.01 mg/kgで、市販の1:1000製剤(1 mg/mL)を使う場合は0.01 mL/kgに相当する。

効果が得られない場合は3〜5分ごとに反復投与するが、高用量(0.1 mg/kg)は予後を悪化させる可能性があるため推奨されない。

3心停止薬②:バソプレシン・アトロピン

バソプレシン(0.8 U/kg)は強力な末梢血管収縮薬でアドレナリンの代替または補助に使う。アトロピン(〜0.05 mg/kg)は迷走神経緊張による徐脈性心停止(PEA・徐脈)に使う。頻脈性不整脈には禁忌。

バソプレシンはV1受容体を介して強力な末梢血管収縮を引き起こし、アドレナリンと同様に冠動脈灌流を改善する。

用量は0.8 U/kgで、アドレナリンが無効な場合や代替薬として使用される。

アトロピンは副交感神経(迷走神経)の過緊張による徐脈や徐脈性心停止(無脈性電気活動: PEA)に対して用いる。

迷走神経緊張が関与していない心室細動(VF)や心静止(asystole)に対する有効性のエビデンスは限られている。

用量は〜0.05 mg/kgで、頻脈性不整脈への投与は心拍数をさらに増加させてしまうため禁忌である。

4抗不整脈薬:アミオダロン・リドカイン・エスモロール

アミオダロン(5 mg/kg)とリドカイン(2 mg/kg)はVF/VT(心室細動・心室頻拍)に使う。エスモロール(0.5 mg/kg)は頻脈性不整脈(洞性頻拍・SVT)に使う超短時間作用β遮断薬。3薬とも静注・骨髄内投与。

心肺停止や重篤な不整脈に対して、状況に応じて以下の3薬を使い分ける。

アミオダロン(Kチャネル・Naチャネル・β遮断作用)はVF/VTに対する第一選択の一つで、除細動に反応しない難治性VF/VTに特に用いる。

用量は5 mg/kgをゆっくりIV/IO投与。

リドカイン(Naチャネル遮断薬)もVF/VTに有効で、特に犬でよく使われる。

用量は2 mg/kgをIV/IO投与。

猫ではリドカインの副作用(中枢神経毒性・心毒性)が出やすいため慎重に使用する。

エスモロールは超短時間作用のβ1遮断薬で、洞性頻拍や上室性頻拍(SVT)などの頻脈性不整脈に対して使う。

0.5 mg/kgを3〜5分かけてIV/IO投与した後、50 mcg/kg/分でCRI(持続点滴)を行う。

VF/VTに対してはアドレナリンや除細動と組み合わせて使用するが、アミオダロンとリドカインの同時投与は避ける。

5拮抗薬:ナロキソン・フルマゼニル・アチパメゾール

拮抗薬は「何の薬に対して使うか」とセットで覚える。ナロキソン→オピオイド(モルヒネ・フェンタニル等)、フルマゼニル→ベンゾジアゼピン(ジアゼパム・ミダゾラム等)、アチパメゾール→α2作動薬(メデトミジン・デクスメデトミジン等)。

麻酔薬や鎮静薬の過剰投与が心肺停止の原因または増悪因子となっている場合、対応する拮抗薬を使って薬効を打ち消すことができる。

ナロキソン(0.04 mg/kg)はオピオイド受容体を競合的に遮断し、モルヒネ・フェンタニル・ブプレノルフィンなどのオピオイド系薬の呼吸抑制や鎮静を速やかに回復させる。

フルマゼニル(0.01 mg/kg)はベンゾジアゼピン受容体の拮抗薬で、ジアゼパム・ミダゾラムによる鎮静・筋弛緩・呼吸抑制を回復させる。

アチパメゾール(100 μg/kg)はα2アドレナリン受容体の拮抗薬で、メデトミジン・デクスメデトミジン(ドミトール等)による鎮静・徐脈・血圧低下を回復させる。

いずれの拮抗薬も、作用時間が元の薬より短いことがあるため、拮抗後も再鎮静(再鎮痛)が起こっていないか監視を続けることが重要である。

6電気的除細動:体外式と体内式、犬と猫の違い

除細動のエネルギー量は体外式>体内式、犬>猫。体外式:犬4〜6 J/kg、猫2〜4 J/kg。体内式(開胸時):犬0.5〜1 J/kg、猫0.2〜0.4 J/kg。VF/VTに対して行い、除細動後すぐ胸骨圧迫を再開する。

心室細動(VF)や脈なし心室頻拍(pulseless VT)は薬剤だけでは停止させにくく、電気的除細動(電気ショック)が必要になる。

体外式除細動器はパドルを胸壁に当てて体外から通電する。

エネルギー量は犬で4〜6 J/kg、猫で2〜4 J/kg(犬より少ない)。

体内式除細動は開胸手術中などに直接心臓にパドルを当てる方法で、体壁を介さない分、より少ないエネルギーで済む。

エネルギー量は犬で0.5〜1 J/kg、猫で0.2〜0.4 J/kg。

猫は体が小さく心臓も小さいため、犬より低いエネルギーで除細動が可能であり、過剰なエネルギーは心筋を傷める。

除細動後はすぐに胸骨圧迫を再開し、2分ごとにリズムチェックを行う。

除細動直後は心臓が再び動き始めるまでのスタン(一時的な機能停止)があるため、脈拍確認より先に圧迫を続けることが重要である。

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