造影検査と造影剤(バリウム・ヨード)

X線写真ではそのままでは写りにくい臓器(消化管・尿路・血管など)を見やすくするために、造影剤を使う検査が造影検査。代表は、消化管を見る硫酸バリウムと、尿路・血管などに使う水溶性ヨード造影剤。バリウムは水に溶けず、消化管に穴があいた(穿孔)疑いがあるときは禁忌で、その場合は水溶性ヨードを使う——この使い分けと注意点を学ぶ。

1造影検査とは

X線写真では、空気や骨は写りやすいが、消化管・尿路・血管などの中身は周囲と区別しにくい。そこで、X線を通しにくい『造影剤』を入れて、これらの臓器の形・通り道・つまりなどを見やすくするのが造影検査。

硫酸バリウム(紫)と水溶性ヨード造影剤(緑)の対比。バリウムは消化管造影に使うが水に溶けず穿孔では禁忌、ヨードは尿路・血管・CTに使い水溶性で穿孔疑いの消化管造影の代わりにもなる。

ふつうのX線(レントゲン)写真では、空気(黒)や骨(白)はよく写るが、消化管・尿路(腎臓〜膀胱)・血管などの『管』や『袋』の内側の様子は、周囲の軟部組織と濃さが似ていて区別しにくい。

そこで、X線を通しにくく白く写る『造影剤』を、見たい臓器の中に入れてから撮影すると、その臓器の形・大きさ・内側の様子・通り道のつまりや穴などがはっきり見えるようになる。

これが造影検査である。

造影剤の入れ方は検査によって異なり、口から飲ませる(消化管)、カテーテルで膀胱や血管に入れる(尿路・血管)などがある。

造影検査で使われる代表的な造影剤が、消化管を見る『硫酸バリウム』と、尿路・血管などに使う『水溶性ヨード造影剤』である。

どちらをどの検査に使うか、そしてどんなときに使ってはいけないか(禁忌)を理解しておくことが大切である。

2硫酸バリウム(消化管造影)

硫酸バリウムは、消化管造影(食道・胃・腸の検査)に使う造影剤。水に溶けない(不溶性)白い粉を懸濁して使い、消化管の内側を白くコーティングして形を写し出す。ただし、消化管に穴があいた(穿孔)疑いがあるときは使ってはいけない(禁忌)。

硫酸バリウムは、おもに消化管(食道・胃・腸)の造影検査に使われる造影剤である。

健康診断のいわゆる『バリウム検査』でもおなじみである。

硫酸バリウムは水に溶けない(不溶性の)白い粉で、水に混ぜて懸濁液にして用いる。

これを飲ませる(または注腸する)と、消化管の内側にいきわたって白く写り、消化管の形・粘膜の様子・狭くなった部分・通過の具合などを評価できる。

重要な注意点として、消化管に穴があいている(穿孔)、または穿孔が疑われるときには、硫酸バリウムは使ってはいけない(禁忌である)。

なぜなら、水に溶けないバリウムが穴から消化管の外(腹腔)へ漏れ出ると、外に出たバリウムは吸収されずに残り、重い腹膜炎などを引き起こすからである。

同様に、消化管が完全に詰まっている(閉塞)疑いがある場合も注意が必要である。

3水溶性ヨード造影剤(尿路・血管・穿孔時)

水溶性ヨード造影剤は、水に溶けるヨードを含む造影剤で、尿路造影(腎臓〜膀胱)・血管造影・CTなどに使う。消化管の穿孔が疑われ硫酸バリウムが使えないときの代わりにも用いられる。万一漏れても吸収されるため、穿孔疑い時に比較的安全。

水溶性ヨード造影剤は、その名のとおり水に溶けるヨードを含んだ造影剤である。

おもな用途は、尿路造影(腎臓・尿管・膀胱の検査)、血管造影、CT検査などで、血管に注射したり、膀胱・尿路にカテーテルから入れたりして用いる。

もう1つの重要な使いどころが、消化管の穿孔が疑われて硫酸バリウムが使えないときの『代わり』としての消化管造影である。

水溶性ヨード造影剤は、万一消化管の穴から外へ漏れ出ても、体に吸収されて処理されるため、バリウムのように腹腔内に残って腹膜炎を起こす危険が少ない。

そのため、穿孔の疑いがある消化管造影では、バリウムではなく水溶性ヨード造影剤が選ばれる。

ただし、ヨードに対する過敏(アレルギー)反応や、腎臓への負担などの注意も必要である。

4造影剤の使い分けと禁忌のまとめ

消化管を見る基本は硫酸バリウム。ただし穿孔(や穿孔の疑い)があるときはバリウムは禁忌で、水溶性ヨードを使う。尿路・血管・CTには水溶性ヨード。『バリウム=消化管・穿孔では禁忌、ヨード=尿路や血管・穿孔時の消化管』と整理する。

造影剤の使い分けを整理する。

消化管(食道・胃・腸)の造影では、基本的に硫酸バリウムを用いる。

バリウムは消化管をよくコーティングして見やすい。

ただし、消化管に穴があいている・あいている疑いがある(穿孔・穿孔疑い)ときには、バリウムは禁忌である。

漏れたバリウムが腹腔内に残って腹膜炎を起こすためで、このときは代わりに水溶性ヨード造影剤を用いる。

尿路造影(腎臓〜膀胱)・血管造影・CTなどには、水溶性ヨード造影剤を用いる。

まとめると、『消化管=原則バリウム、ただし穿孔疑いはヨード』『尿路・血管・CT=ヨード』となる。

この『どんな検査に何を使うか』『穿孔のときは何を使ってはいけないか』が、造影検査の最重要ポイントである。

5造影検査の動物看護

看護では、検査前の絶食など準備、造影剤の取り扱いと投与の介助、造影剤の副作用(ヨードのアレルギー、誤嚥など)の観察を行う。とくに、消化管造影では穿孔の有無に応じた造影剤の選択が安全に直結するため、獣医師の指示と動物の状態をよく確認する。

造影検査では、動物看護師が準備・介助・観察を担う。

検査前には、消化管造影なら食事の内容や絶食(胃の中を空にする)など、検査に応じた準備を行う。

動物が落ち着いて検査を受けられるよう保定・体位の介助もする。

造影剤の投与では、種類・量・投与経路(飲ませる/カテーテル/注射)を獣医師の指示どおりに準備・介助する。

とくに、消化管造影で穿孔が疑われる場合にバリウムを使ってはいけないことは安全に直結するため、指示と動物の状態をよく確認する。

投与後は、副作用に注意する。

水溶性ヨード造影剤ではアレルギー(過敏)反応や腎臓への負担、消化管造影では誤嚥(気管へ入る)などに気をつけ、呼吸・粘膜色・全身状態を観察し、異常があればただちに獣医師へ報告する。

誤嚥のリスクがある動物では、無理のない体位・速度で投与するなどの配慮も必要である。

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