抗寄生虫薬と殺虫剤・殺鼠剤の中毒

寄生虫を駆除する薬は、対象によって使い分ける。線虫やフィラリア予防にはマクロライド系(イベルメクチン・セラメクチン・ミルベマイシン)やピランテル、条虫にはプラジカンテル、ダニなどの外部寄生虫にはアミトラズやセラメクチン、原虫にはサルファ剤(コクシジウム)やメトロニダゾール(ジアルジアなど)を用いる。コリー系の犬はMDR1遺伝子変異のためイベルメクチンで神経毒性を起こしやすい。中毒では、有機リン系・カルバメート系殺虫剤がコリンエステラーゼを阻害して中毒を起こし解毒にアトロピンを、ワルファリン系殺鼠剤がビタミンKを妨げて出血を起こし治療にビタミンKを用いる。

1抗寄生虫薬の整理(駆虫薬・抗原虫薬)

体内の寄生虫は、線虫(回虫・鉤虫など)・条虫・吸虫といった『蠕虫(ぜんちゅう)』と、コクシジウム・ジアルジアなどの『原虫』に分けられる。蠕虫を駆除する薬を駆虫薬(駆線虫薬・駆条虫薬)、原虫を抑える薬を抗原虫薬という。寄生虫の種類に合わせて薬を選ぶ。

体内の寄生虫は多細胞の蠕虫(線虫・条虫・吸虫)と単細胞の原虫(コクシジウム・ジアルジアなど)に分けられ、蠕虫には駆虫薬、原虫には抗原虫薬を用いる。糞便検査などで種類を特定して薬を選ぶ。

寄生虫を駆除・抑制する薬を抗寄生虫薬という。

まず、相手の寄生虫がどの仲間かを区別することが大切である。

【蠕虫(ぜんちゅう)】からだが細長い・平たい多細胞の寄生虫で、線虫(回虫・鉤虫・鞭虫・フィラリアなど)、条虫(サナダムシ)、吸虫がある。

これらを駆除する薬を『駆虫薬(駆線虫薬・駆条虫薬)』という。

【原虫(げんちゅう)】単細胞の寄生虫で、コクシジウム・ジアルジア・トキソプラズマ・バベシアなどがある。

これらを抑える薬を『抗原虫薬』という。

寄生虫の種類によって効く薬が違うため、糞便検査などで寄生虫を特定し、それに合った薬を選ぶ。

2線虫・フィラリアの薬(マクロライド系・ピランテル)

線虫(回虫・鉤虫など)やフィラリアの予防には、マクロライド系(イベルメクチン・セラメクチン・ミルベマイシンオキシム)がよく用いられる。これらは寄生虫の神経・筋に作用して麻痺させる。回虫・鉤虫にはパモ酸ピランテルも用いられる。

線虫(回虫・鉤虫など)やフィラリア(犬糸状虫)の予防・駆除には、『マクロライド系』の駆虫薬がよく用いられる。

イベルメクチン、セラメクチン、ミルベマイシンオキシムなどがこれにあたる。

(これらは正確には『マクロサイクリックラクトン(大環状ラクトン)系』と呼ばれる抗寄生虫薬で、タンパク質合成を阻害する抗菌薬の『マクロライド系』とは別の系統である点に注意する。

)これらは寄生虫(無脊椎動物)の神経・筋の働きに作用して麻痺させ、駆除する。

フィラリア予防薬として毎月投与する薬の多くがこの仲間である。

セラメクチンは、皮膚に垂らすタイプ(スポットオン)で、フィラリア予防に加えてノミやミミヒゼンダニなどにも効く。

また、回虫・鉤虫などにはパモ酸ピランテルも用いられ、寄生虫の筋を持続的に興奮させて麻痺させる。

3条虫の薬(プラジカンテル)と外部寄生虫の薬

条虫(サナダムシ)の駆除にはプラジカンテルが用いられる。ダニ・マダニ・ノミなどの外部寄生虫には、アミトラズ(ダニ用の薬浴など)、セラメクチンやフィプロニルなどのスポットオン薬が用いられる。対象の寄生虫に合わせて使い分ける。

【条虫(サナダムシ)】の駆除には『プラジカンテル』が広く用いられる。

プラジカンテルは条虫に効果が高く、吸虫にも用いられる。

【外部寄生虫(ダニ・マダニ・ノミ・ヒゼンダニなど)】には、次のような薬がある。

・アミトラズ:イヌのニキビダニ症(毛包虫症)などに薬浴で用いられるダニ駆除薬。

・セラメクチン・フィプロニルなど:皮膚に垂らすスポットオン薬で、ノミ・マダニ・ヒゼンダニなどに用いる。

・近年は、ノミ・マダニに効く飲み薬(イソオキサゾリン系)も広く使われる。

外部寄生虫も、対象(マダニかノミかダニ症か)に合わせて薬を選ぶ。

4抗原虫薬(コクシジウム・ジアルジアなど)

原虫を抑える抗原虫薬には、コクシジウム症にサルファ剤(スルファ剤)、ジアルジア症・トリコモナス症などにメトロニダゾールが用いられる。バベシアにはジミナゼンなどが用いられる。原虫の種類に応じて薬を選ぶ。

原虫による病気(原虫症)には、抗原虫薬を用いる。

【コクシジウム症】サルファ剤(スルファ剤)などが用いられる。

【ジアルジア症・トリコモナス症】メトロニダゾールが用いられる(メトロニダゾールは嫌気性菌にも効く)。

【バベシア症】赤血球に寄生して溶血を起こすバベシアには、ジミナゼンなどの抗原虫薬が用いられる。

原虫は細菌とも蠕虫とも違うため、それぞれに効く薬を選ぶ必要がある。

5イベルメクチンとコリー系のMDR1

コリー・シェルティ・オーストラリアンシェパードなどのコリー系の犬には、MDR1(ABCB1)遺伝子の変異をもつ個体が多い。この遺伝子は薬を脳から排出するP-糖タンパク質を作る設計図で、変異があると薬が脳に入りやすくなり、イベルメクチンなどで神経毒性(ふらつき・運動失調・昏睡など)を起こす。投与前の遺伝子検査や慎重な選択が重要。

イベルメクチンは有用な駆虫薬だが、犬種によっては強い副作用に注意が必要である。

コリー、シェルティ(シェットランド・シープドッグ)、オーストラリアン・シェパードなどの『コリー系』の犬には、『MDR1(ABCB1)遺伝子』に変異をもつ個体が多い。

この遺伝子は、薬物を脳から外へ汲み出す『P-糖タンパク質』という関所を作る設計図である。

変異があるとこの関所がうまく働かず、薬が脳(中枢神経)に入り込みやすくなる。

そのため、変異をもつコリー系の犬にイベルメクチンを通常量で投与すると、薬が脳に入って効きすぎ、ふらつき・運動失調・流涎・震え・昏睡などの神経症状(中毒)を起こすことがある。

対策として、投与前にMDR1遺伝子検査を行う、コリー系には適応・用量を慎重に選ぶ、安全域の広い薬を選ぶ、などが重要になる。

6殺虫剤・殺鼠剤の中毒と解毒

有機リン系・カルバメート系の殺虫剤は、アセチルコリンを分解する酵素(コリンエステラーゼ)を阻害し、アセチルコリンが過剰になって流涎・縮瞳・徐脈・けいれんなどの中毒を起こす。解毒にはアトロピンを用いる。ワルファリン系の殺鼠剤はビタミンKの働きを妨げて出血を起こし、治療にはビタミンKを用いる。

動物が誤食しやすい薬剤の中毒と、その解毒(治療)を押さえる。

【有機リン系・カルバメート系の殺虫剤】これらは、神経の情報を伝える物質『アセチルコリン』を分解する酵素『コリンエステラーゼ』の働きを阻害する。

すると、アセチルコリンが分解されずに過剰にたまり、流涎(よだれ)・縮瞳(瞳が小さくなる)・徐脈・嘔吐・下痢・筋のけいれん・呼吸困難などの中毒症状を起こす。

解毒には、アセチルコリンの作用を抑える『アトロピン』を用いる(有機リン中毒ではPAM(プラリドキシム)を併用することもある)。

【ワルファリン系の殺鼠剤(さっそざい)】ビタミンKの働きを妨げ、ビタミンK依存性の凝固因子(第II・VII・IX・X因子)が作れなくなって、数日後に重い出血を起こす。

治療には『ビタミンK』を投与する。

『有機リン・カルバメート中毒→アトロピン』『ワルファリン系殺鼠剤→ビタミンK』という解毒の組み合わせをセットで覚える。

理解できたら腕試し!
このテーマの確認テスト