降圧薬の分類と作用機序

血圧を下げる薬(降圧薬)は作用部位によって6種類に分類される。ACE阻害薬・ARB(RAAS系の遮断)、Ca拮抗薬(血管平滑筋の収縮抑制)、利尿薬(体液量の減少)、α遮断薬・β遮断薬(神経系の調節)の違いを理解する。

1なぜ血圧が上がるか(降圧薬理解の前提)

血圧は『心拍出量 × 末梢血管抵抗』で決まる。心臓が強く・早く動くか、血管が細くなるか、体内の水分が増えるかで血圧が上がる。降圧薬はそれぞれ違う仕組みでこれらを抑える。

降圧薬を作用部位で6分類し、それぞれの作用機序と本文で登場する代表薬を並べた一覧表。α遮断薬は本文に代表薬の記載がないため「―」とした。

血圧が上がる原因は大きく3つある:①心臓の拍出量(拍動の回数・強さ)が増える、②末梢血管が収縮して抵抗が増える、③体内の水分・塩分量が増えて循環血液量が増える。

降圧薬は、これら3つのうちどこに作用するかで種類が分かれる。

獣医療では、高血圧は慢性腎臓病(特にネコ)や甲状腺機能亢進症(ネコ)、クッシング症候群(イヌ)などで見られ、眼・腎臓・心臓・脳への二次的障害を防ぐために降圧薬が使用される。

2ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)

ACE阻害薬はアンジオテンシンI→アンジオテンシンIIへの変換を阻害する。アンジオテンシンIIが作られなくなることで、血管収縮とアルドステロン分泌がともに抑えられ血圧が下がる。

RAAS(レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系)では、腎臓から分泌されたレニンがアンジオテンシノーゲンを分解してアンジオテンシンIを作り、さらにアンジオテンシン変換酵素(ACE)がアンジオテンシンIをアンジオテンシンIIに変換する。

アンジオテンシンIIは血管を収縮させ、アルドステロン分泌を促してNa・水を保持させるため、血圧を強く上げる。

ACE阻害薬はACEの働きを阻害するため、アンジオテンシンIIの産生が抑えられ、血管拡張とアルドステロン減少を通じて血圧が下がる。

また腎臓の輸出細動脈を拡張させて糸球体内圧を下げる効果があり、慢性腎臓病の進行抑制にも使われる(エナラプリルなど)。

3ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)

ARBはアンジオテンシンIIそのものは存在するが、受容体への結合をブロックする。結果としてACE阻害薬と似た血圧降下作用をもつ。

ACE阻害薬が『アンジオテンシンIIを作らせない』のに対し、ARBは『アンジオテンシンIIが作られても受容体に結合できなくする』薬である。

アンジオテンシンIIは受容体(AT1受容体)と結合して初めて血管収縮やアルドステロン分泌を引き起こす。

ARBはこのAT1受容体をブロックすることで、アンジオテンシンIIの作用を遮断し、血圧を下げる。

ACE阻害薬は空咳などの副作用が出やすいが、ARBは選択性が高く副作用が少ない場合が多い。

獣医領域ではテルミサルタンが猫の慢性腎臓病に伴う高血圧に使用される。

4Ca拮抗薬(カルシウムチャネル遮断薬)

血管平滑筋や心筋の収縮にはカルシウムイオンの細胞内流入が必要。Ca拮抗薬はカルシウムチャネルをブロックして細胞内Ca流入を抑制し、血管を弛緩させて血圧を下げる。

心臓や血管の平滑筋が収縮するとき、細胞内にカルシウムイオン(Ca²⁺)が流れ込むことがシグナルとなっている。

Ca拮抗薬はカルシウムチャネル(Ca²⁺が通る膜の穴)を塞ぎ、Ca²⁺が細胞内に入るのを妨げることで、血管平滑筋の収縮を抑えて末梢血管を拡張させ、血圧を下げる。

獣医領域では、アムロジピンがネコの高血圧(主に腎疾患・甲状腺機能亢進症に伴う)の第一選択薬として広く使われる。

Ca拮抗薬全般として、グレープフルーツに含まれるフラノクマリン類が肝臓のCYP3A4酵素を阻害し、薬物の血中濃度を上昇させる相互作用があることが知られている。

(アムロジピン自体への影響は薬剤によって異なり、臨床上は念のため同時摂取を避けることが推奨されている。

5利尿薬

利尿薬は腎臓でのナトリウムと水の再吸収を抑制し、尿として排泄させる。体内の水分・塩分量(循環血液量)が減ることで血圧が下がる。

利尿薬は腎尿細管に作用して、塩分(ナトリウム)と水を体外へ排出させる。

循環血液量が減ることで心臓への負荷が下がり、結果として血圧が低下する。

フロセミド(ループ利尿薬)は獣医療でよく使われ、うっ血性心不全(肺水腫の緩和)や浮腫の治療に利用される。

利尿薬の使用時は、過度な脱水・電解質異常(低カリウム血症など)に注意し、飲水量・尿量・電解質のモニタリングが重要である。

6α遮断薬・β遮断薬

α遮断薬は血管を収縮させる交感神経(α受容体)の働きを抑えて血管を拡張させる。β遮断薬は心臓の収縮力・拍動数を抑える(β1受容体遮断)ことで心拍出量を減らし血圧を下げる。

自律神経系(交感神経)も血圧調節に深く関わる。

α遮断薬は血管平滑筋のα受容体を遮断し、交感神経による血管収縮のシグナルを妨げることで末梢血管を拡張させ、血圧を下げる。

β遮断薬は心臓のβ1受容体を遮断し、心臓の収縮力と心拍数を抑えることで、心拍出量を減らして血圧を下げる。

β遮断薬は気管支収縮の副作用があるため、喘息や呼吸器疾患には慎重に使用する。

獣医療では、肥大型心筋症のネコにアテノロール(β遮断薬)が使われることがある。

降圧薬は単独ではなく、作用機序が異なる薬を組み合わせて使うことも多い(例:ACE阻害薬+利尿薬)。

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