抗てんかん薬と強心薬

神経と循環器の代表的な治療薬を学ぶ。発作(てんかん)をくり返す動物に使う抗てんかん薬は、毎日のみ続けて血中濃度を保つことが大切で、自己判断で急にやめると発作が悪化する。イヌではフェノバルビタール・ゾニサミド・臭化カリウム・レベチラセタム、ネコではフェノバルビタール(第一選択)・ジアゼパム・レベチラセタム・ゾニサミドが使われる。弱った心臓のポンプ力を高める強心薬には、ジギタリス製剤(ジゴキシン)、ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬(ピモベンダン)、カテコールアミン系(ドブタミンなど)がある。心筋細胞は一度死ぬと再生しないことや、僧帽弁閉鎖不全症で強心薬・血管拡張薬・利尿薬を組み合わせることも、文章と確認問題で理解する。

1抗てんかん薬の基礎

てんかんは発作(けいれん)をくり返す状態。抗てんかん薬は、発作の起こりにくさ(発作のしきい値)を高めて発作を減らす薬。血中濃度を一定に保つことが大切で、毎日決まった時間にのみ続け、自己判断で急にやめないことが重要(急な中断は発作を悪化させる)。

抗てんかん薬(フェノバルビタール・臭化カリウム・ジアゼパムなど)は神経の過剰な興奮を抑えて発作を起こりにくくし、強心薬(ピモベンダン・ジギタリスなど)は弱った心筋にはたらいてポンプ力(収縮力)を高める。目的の異なる2グループを整理した図。

てんかんは、脳の神経細胞が過剰に興奮して、発作(けいれんなど)をくり返す状態である。

抗てんかん薬は、神経の過剰な興奮を抑え、発作の起こりにくさ(発作のしきい値)を高めることで、発作の回数や程度を減らす薬である。

抗てんかん薬は、発作を『その場で止める』というより、毎日続けてのむことで発作を『起こりにくくする』薬である。

効果を保つには、血液中の薬の濃度を一定に保つことが大切で、毎日決まった時間にのみ続ける必要がある。

飼い主が自己判断で急に薬をやめたり量を減らしたりすると、かえって発作が悪化したり、発作が止まらなくなる重い状態(てんかん重積)を起こしたりすることがある。

そのため、動物看護師は、薬を続けることの大切さと、急に中断しないことを飼い主にしっかり指導する。

2イヌの抗てんかん薬

イヌでは、フェノバルビタール、ゾニサミド、臭化カリウム(ブロマイド)、レベチラセタムなどが使われる。日本ではイヌ用に承認され副作用が少ないゾニサミドが第一選択としてよく使われる。臭化カリウムは肝臓への副作用がないが効果が出るまで時間(数か月)がかかる。

イヌの抗てんかん薬には、いくつかの選択肢がある。

フェノバルビタールは古くから使われる代表的な薬だが、肝臓への負担などの副作用に注意して、血中濃度を測りながら使う。

ゾニサミドは日本で開発されイヌ用に承認された薬で、フェノバルビタールと同程度の効果がありながら副作用が比較的少ないため、日本では第一選択としてよく使われる。

臭化カリウム(ブロマイド、KBr)は、ほかの薬と組み合わせて使われることが多く、肝臓への副作用がないのが利点だが、効果が安定して現れるまでに2〜3か月ほど時間がかかる。

レベチラセタムは比較的新しい抗てんかん薬で、副作用が少ない一方、1日3回の投与が必要で費用が高めという特徴がある。

これらは、効果や副作用、発作の状況に応じて、単独で、あるいは組み合わせて使われる。

3ネコの抗てんかん薬

ネコでは、フェノバルビタールが第一選択としてよく使われる。そのほか、ジアゼパム、レベチラセタム、ゾニサミドなどが使われる。ネコは薬への反応や副作用がイヌと異なることがあるため、慎重に量を調整する。

ネコの抗てんかん薬では、フェノバルビタールが第一選択としてよく使われる。

そのほか、ジアゼパム(ベンゾジアゼピン系)、レベチラセタム、ゾニサミドなどが用いられる。

ジアゼパムは、ネコの維持治療に使われることがあるほか、発作が続いているときに発作を止める目的でも使われる(イヌでは主に発作中・重積時に使う)。

ネコは、薬の代謝や副作用の出方がイヌと異なることがあるため、薬の種類や量は慎重に調整する。

イヌでもネコでも、抗てんかん薬は毎日きちんと続け、血中濃度や肝臓などの状態を定期的にチェックしながら管理することが大切である。

発作が起きたときは、無理に押さえつけず、口に手を入れず、周囲の危険物を片づけて見守り、発作の時間や様子を記録して獣医師に伝える。

4強心薬とは ― 心臓が弱る仕組み

強心薬は、弱った心臓の筋肉(心筋)にはたらいて、心臓のポンプの力(収縮力)を高める薬。動脈硬化などで心臓を養う血管(冠動脈)が詰まると、心筋に酸素・栄養が届かず心筋が傷み、心臓が疲れて心不全になる。心筋細胞は一度死ぬと元に戻らない(再生しない)ため、心臓を守ることが大切。

強心薬は、弱った心臓の筋肉(心筋)にはたらいて、心臓が血液を送り出すポンプの力(収縮力)を高める薬である。

心臓は、全身に血液を送り出すために強い力を必要とする。

動脈硬化などで血管が硬くなると、血液を送り出すのにより多くの力が必要になり、心臓の負担が増える。

また、心臓自身を養う血管(冠動脈)が詰まると、その先の心筋に酸素や栄養が届かなくなる。

酸素・栄養が不足した心筋は傷つき、心臓が疲れて十分に働けなくなり、心不全に進む。

重要なのは、心臓の筋肉の細胞(心筋細胞)は、一度死んでしまうと元に戻らない(再生しない)ということである。

そのため、心臓に負担をかけすぎないようにし、弱った心臓を薬で助けながら守っていくことが大切になる。

5強心薬の分類

強心薬には、①ジギタリス製剤(ジゴキシンなど。Na/K-ATPaseを抑えて心筋内のカルシウムを増やし収縮力を高め、心拍をゆっくりにする)、②ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬(ピモベンダン。心筋のカルシウム感受性を高め、血管も広げる)、③カテコールアミン系(ドブタミンなど。β1受容体を刺激し、急性期に点滴で使う)がある。

強心薬は、作用のしくみによっていくつかに分類される。

①ジギタリス製剤(ジゴキシンなど)は、心筋のNa⁺/K⁺-ATPaseという仕組みを抑えることで、心筋細胞の中のカルシウムを増やし、収縮力を高める(強心作用)。

同時に心拍をゆっくりにする作用もあり、うっ血性心不全や、心房細動などで心拍が速いときに用いられる。

②ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬の代表がピモベンダンである。

ピモベンダンは、心筋のカルシウムに対する感受性を高めて収縮力を上げると同時に、PDE3という酵素を抑えて血管を広げる作用ももつ(強心+血管拡張=インオダイレーター)。

③カテコールアミン系(ドブタミン・ドパミンなど)は、心臓のβ1受容体を刺激して心筋の収縮力を高める薬で、心原性ショックや急性の心不全のときに、点滴(静脈内持続投与)で使われる。

このように、慢性の管理にはピモベンダンやジギタリス、急性・重症のときにはカテコールアミン、というように場面に応じて使い分けられる。

6僧帽弁閉鎖不全症と薬の3本柱

イヌに多い僧帽弁閉鎖不全症などの心不全では、3種類の薬を組み合わせる。心筋にはたらきポンプ力を高める強心薬(ピモベンダンなど)、血管を広げて心臓の負担を減らす血管拡張薬(ACE阻害薬など)、たまった水分を尿として出して心臓・血管の負担を減らす利尿薬(フロセミドなど)が柱になる。

イヌに多い僧帽弁閉鎖不全症をはじめとする心不全の治療では、はたらきの異なる薬を組み合わせて、心臓の負担を多方向から減らす。

1つ目は強心薬で、心筋にはたらいて心臓のポンプの能力(収縮力)を高め、血液を送り出しやすくする(ピモベンダンなど)。

2つ目は血管拡張薬で、血管の内径を広げて血液を流れやすくし、心臓が血液を押し出す負担を減らす(ACE阻害薬など)。

3つ目は利尿薬で、尿を多く出して体にたまった余分な水分(血液の量)を減らし、心臓や血管にかかる負担と肺水腫を軽くする(フロセミドなど)。

『強心薬=ポンプ力を高める/血管拡張薬=流れやすくして負担を減らす/利尿薬=水を抜いて負担を減らす』と、目的のちがいで整理するとよい。

(僧帽弁閉鎖不全症の病態や薬の詳細は、別レッスン『僧帽弁閉鎖不全症(くわしく)』も参照するとよい。

理解できたら腕試し!
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