抗菌薬の作用機序による分類

抗菌薬は、細菌だけがもつ構造やしくみを狙うことで、宿主の細胞を傷つけずに細菌を抑える。作用機序で大きく4つに分類される。①細胞壁合成阻害=βラクタム系(ペニシリン・セフェム)など。②タンパク質合成阻害=アミノグリコシド・テトラサイクリン(30S)、マクロライド・クロラムフェニコール(50S)。③核酸合成阻害=ニューキノロン系。④葉酸合成阻害=サルファ剤。マイコプラズマ(細胞壁をもたない)やリケッチア・クラミジア(細胞内寄生)にはテトラサイクリンが用いられる。ニューキノロンは幼若動物の関節軟骨障害、テトラサイクリンは歯の着色・骨の発育への影響があり、幼齢・妊娠動物では注意する。

1抗菌薬とは・作用機序による4分類

抗菌薬は、細菌だけがもつ構造(細胞壁など)やしくみを狙い、宿主の細胞を傷つけずに細菌を抑える(選択毒性)。作用機序で4つに分類される:①細胞壁合成阻害 ②タンパク質合成阻害 ③核酸合成阻害 ④葉酸合成阻害。

抗菌薬は標的とする細菌の構造・しくみによって4つに分類される。細胞壁合成阻害=βラクタム系、タンパク質合成阻害=アミノグリコシド・テトラサイクリン(30S)/マクロライド・クロラムフェニコール(50S)、核酸合成阻害=ニューキノロン系、葉酸合成阻害=サルファ剤が代表となる。

抗菌薬(抗生物質を含む)は、細菌の感染症を治療する薬である。

ヒトや動物の細胞を傷つけず、細菌だけを選んで抑える(選択毒性)ために、『細菌だけがもつ構造やしくみ』を標的にしている。

代表的な標的によって、抗菌薬は次の4つに分類される。

①細胞壁の合成を阻害する(動物細胞には細胞壁がないので細菌だけに効く)。

②タンパク質の合成を阻害する(細菌のリボソームは動物と少し違う)。

③核酸(DNA)の合成を阻害する。

④葉酸の合成を阻害する(葉酸は核酸合成に必要で、細菌は自分で葉酸を作る)。

どのしくみを止めるかで系統が分かれ、効く菌の範囲(スペクトル)や副作用も変わる。

2①細胞壁合成阻害(βラクタム系など)

細胞壁合成阻害薬は、細菌のペプチドグリカン(細胞壁)の合成を妨げて菌を破壊する。代表はβラクタム系(ペニシリン系・セフェム=セファロスポリン系)。動物の細胞には細胞壁がないため、細菌に選択的に作用し、比較的安全性が高い。

細胞壁合成阻害薬は、細菌の細胞壁(ペプチドグリカン)を作る過程を妨げる。

細胞壁が作れないと、菌は浸透圧に耐えられず壊れて死ぬ(殺菌的)。

代表的なのが『βラクタム系(ベータラクタム系)』で、ペニシリン系、セフェム系(セファロスポリン系)、カルバペネム系などが含まれる。

このほか、グリコペプチド系(バンコマイシンなど)も細胞壁合成を阻害する。

動物(ヒト)の細胞には細胞壁がないため、細胞壁合成阻害薬は細菌だけに作用し、宿主への毒性が比較的低く安全性が高いのが特徴である。

(ただしペニシリンなどはアレルギーを起こすことがある点には注意する。

3②タンパク質合成阻害(アミノグリコシド・テトラサイクリン・マクロライドなど)

タンパク質合成阻害薬は、細菌のリボソームに結合してタンパク質づくりを妨げる。リボソームの30Sを標的にするのがアミノグリコシド系・テトラサイクリン系、50Sを標的にするのがマクロライド系・クロラムフェニコールなど。

タンパク質合成阻害薬は、細菌がタンパク質を作る工場である『リボソーム』に結合して、その働きを止める。

細菌のリボソーム(70S)は動物のもの(80S)と構造が違うため、細菌に選択的に作用できる。

リボソームは大小2つの部分(サブユニット)からなり、どちらに結合するかで系統が分かれる。

【30Sサブユニットを阻害】アミノグリコシド系、テトラサイクリン系。

【50Sサブユニットを阻害】マクロライド系、クロラムフェニコール、リンコマイシン系(クリンダマイシンなど)。

これらは細菌のタンパク質づくりを止めることで、増殖を抑えたり菌を殺したりする。

4③核酸合成阻害(ニューキノロン)と④葉酸合成阻害(サルファ剤)

核酸(DNA)合成阻害薬の代表はニューキノロン系で、DNAの複製に必要な酵素を妨げる(名前に『〜フロキサシン』が多い)。葉酸合成阻害薬の代表はサルファ剤で、細菌が核酸合成に必要な葉酸を自分で作るのを妨げる(ヒト・動物は葉酸を食事から摂るので影響を受けにくい)。

【③核酸(DNA)合成阻害】ニューキノロン系(フルオロキノロン系)は、細菌がDNAを複製するのに必要な酵素(DNAジャイレースなど)を妨げて、増殖を止める。

エンロフロキサシンなど、名前の語尾に『〜フロキサシン』が多い。

【④葉酸合成阻害】サルファ剤(サルファ薬・ST合剤など)は、細菌が『葉酸』を自分で合成するのを妨げる。

葉酸は核酸(DNA)を作るのに必要なので、葉酸が作れないと細菌は増えられなくなる。

ヒトや動物は葉酸を自分で作らず食事から摂るため、サルファ剤の影響を受けにくく、細菌に選択的に効く。

このように、抗菌薬は『細胞壁・タンパク質・核酸・葉酸』のどこを止めるかで4つに整理できる。

5細胞壁をもたない・細胞内寄生の病原体とテトラサイクリン

マイコプラズマ(細胞壁をもたない)には、細胞壁合成阻害薬(βラクタム)が効かない。また、リケッチア・クラミジアは細胞の中で増える『細胞内寄生』の病原体。これらマイコプラズマ・リケッチア・クラミジアには、テトラサイクリン系がよく用いられる。

細菌の中には、ふつうの細菌と性質が違うものがあり、効く抗菌薬も変わる。

【マイコプラズマ】細胞壁をもたない細菌。

細胞壁を作るのを妨げるβラクタム系(ペニシリンなど)は効かない。

【リケッチア・クラミジア】細胞の中でしか増えられない『細胞内寄生』の微生物。

これらマイコプラズマ・リケッチア・クラミジアに対しては、細胞内によく移行し、これらに効く『テトラサイクリン系』がよく用いられる(マクロライド系などが使われることもある)。

『マイコプラズマ・リケッチア・クラミジア → テトラサイクリン』と覚えておくとよい。

6幼若・妊娠動物で注意する抗菌薬

成長期・妊娠中の動物では一部の抗菌薬に注意する。ニューキノロン系は幼若動物で関節軟骨の障害を起こす。テトラサイクリン系は歯の着色(黄染)や骨・歯の発育への影響を起こす。いずれも幼齢・妊娠動物では慎重に使う。

成長期(幼若)や妊娠中の動物では、薬が発育に悪影響を及ぼすことがあるため、抗菌薬の選択に注意が必要である。

【ニューキノロン系】幼若(成長期)の動物に使うと、関節軟骨の障害を起こすことが知られており、若齢動物への使用には注意する。

【テトラサイクリン系】成長期に使うと、歯の着色(黄染)やエナメル質形成不全、骨・歯の発育への影響を起こすことがある。

これは骨や歯に沈着・色素沈着する性質によるもので、幼齢・妊娠動物では注意する。

このように、抗菌薬は『効くかどうか』だけでなく、『その動物の年齢・状態に使ってよいか』も考えて選ぶ必要がある。

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