図解で学ぶ
動物看護学

麻酔・鎮静・鎮痛に使う薬の分類と代表薬

麻酔・鎮静・鎮痛に使う薬を、働きごとに分類して代表薬を整理する。気持ちを落ち着けるトランキライザー(フェノチアジン系・ベンゾジアゼピン系)、しっかり眠らせるα2作動薬などの鎮静薬、痛みを抑えるオピオイドなどの鎮痛薬、意識を消す麻酔薬(静脈麻酔薬・吸入麻酔薬)を、代表薬とあわせて、図ではなく文章で読んで覚える。

このレッスンには芋づる表があります。表へ

1薬の働きによる分類とバランス麻酔

要点麻酔関連の薬は働きで分類する。気持ちを落ち着ける『トランキライザー(精神安定剤)』、深い鎮静をもたらす『鎮静薬』、痛みを抑える『鎮痛薬』、意識を消す『麻酔薬』。1つの薬に頼らず、作用の違う薬を組み合わせて少量ずつ効かせるのがバランス麻酔。

麻酔関連の薬を働きで4つに分類(トランキライザー・鎮静薬・鎮痛薬・麻酔薬)し、これらを少量ずつ組み合わせるバランス麻酔の考え方を示した。

麻酔・鎮静・鎮痛に使う薬は、その働きによって分類すると整理しやすい。

気持ちを落ち着け、不安や興奮をやわらげる『トランキライザー(精神安定剤)』、より深い鎮静(眠気)をもたらす『鎮静薬』、痛みを抑える『鎮痛薬』、そして意識を完全に消す『麻酔薬』である。

実際の全身麻酔では、1つの薬を大量に使うのではなく、鎮静・鎮痛・筋弛緩などの作用をもつ薬を組み合わせ、それぞれを少量で効かせる『バランス麻酔』が基本となる。

これにより、1つの薬の副作用を抑えつつ、安全に必要な効果を得ることができる。

2トランキライザー(フェノチアジン系・ベンゾジアゼピン系)

要点トランキライザーには2系統ある。フェノチアジン系(アセプロマジン・クロルプロマジン)は鎮静作用をもつが鎮痛作用はない。ベンゾジアゼピン系(ジアゼパム・ミダゾラム・フルニトラゼパムなど)は鎮静・筋弛緩・抗けいれん作用をもつ。

トランキライザー(精神安定剤)は、大きく2つの系統に分けられる。

1つはフェノチアジン系で、アセプロマジンやクロルプロマジンが代表である。

鎮静作用をもつが、鎮痛作用(痛み止めの作用)はないため、痛みを伴う処置ではオピオイドなどの鎮痛薬と組み合わせて用いる。

もう1つはベンゾジアゼピン系で、ジアゼパム・ミダゾラム・フルニトラゼパムなどがある。

鎮静のほか、筋肉をゆるめる筋弛緩作用や、けいれんを抑える抗けいれん作用をもつ。

ベンゾジアゼピン系は、健康な動物に単独で使うと十分な鎮静がかからず、かえって興奮することもあるため、オピオイドやケタミンなどと併用して用いられることが多い。

3鎮静薬(α2作動薬)

要点鎮静薬の代表がα2作動薬で、メデトミジン・デクスメデトミジンなどがある。しっかりした鎮静に加えて鎮痛・筋弛緩作用ももつが、徐脈など循環・呼吸の抑制に注意が必要。効果を打ち消す拮抗薬があるのが特徴。

深い鎮静をもたらす鎮静薬の代表が、α2(アルファツー)作動薬である。

メデトミジンやデクスメデトミジンなどがあり、しっかりした鎮静に加えて、鎮痛作用や筋弛緩作用ももつ。

一方で、徐脈(脈が遅くなる)や血圧・呼吸の変化など、循環・呼吸を抑える作用があるため、使用中はモニタリングが重要である。

α2作動薬には、効果を打ち消す拮抗薬(アチパメゾールなど)があるのが大きな特徴で、覚醒を早めたいときや副作用が出たときに用いることができる。

4鎮痛薬(オピオイドなど)

要点痛みを抑える代表がオピオイド。麻薬性(モルヒネ・フェンタニル・レミフェンタニル)は中〜強い痛みに用い、非麻薬性(ブプレノルフィン・ブトルファノール)は比較的軽い痛みに用いる。ほかにトラマドール、解離性麻酔薬のケタミンも鎮痛に関わる。

痛みを抑える鎮痛薬の中心がオピオイドである。

オピオイドは、脳や脊髄のオピオイド受容体に作用して強力に痛みを抑える。

麻薬性オピオイドには、モルヒネ・フェンタニル・レミフェンタニルなどがあり、中等度から強い痛みに用いられ、用量に応じて鎮痛効果が高まる。

非麻薬性オピオイドには、ブプレノルフィン・ブトルファノールなどがあり、効果に頭打ち(天井効果)があるため、比較的軽い〜中等度の痛みに用いられる。

ブプレノルフィンは作用時間が長く、術後の痛み管理によく使われる。

そのほか、トラマドールも鎮痛に用いられる。

また、解離性麻酔薬であるケタミンは、麻酔薬であると同時に鎮痛作用ももつ薬で、ほかの薬と組み合わせて用いられる。

5麻酔薬(静脈麻酔薬・吸入麻酔薬)

要点意識を消す麻酔薬は、注射する静脈麻酔薬と、吸わせる吸入麻酔薬に分けられる。静脈麻酔薬はプロポフォール・アルファキサロン・チオペンタール(バルビツール酸系)・ケタミン(解離性)など。吸入麻酔薬はイソフルラン・セボフルランが代表で、麻酔の維持に用いる。

意識を消す麻酔薬は、投与経路によって、静脈に注射する静脈麻酔薬(注射麻酔薬)と、ガスとして吸わせる吸入麻酔薬に分けられる。

静脈麻酔薬には、作用が速く蓄積しにくいプロポフォール、ステロイド構造をもつアルファキサロン、バルビツール酸系のチオペンタール、解離性麻酔薬のケタミンなどがあり、多くは全身麻酔の『導入』(一気に眠らせる段階)に用いられる。

吸入麻酔薬には、イソフルランやセボフルランがあり、気化器で気体にして酸素に混ぜ、気管チューブを通して吸わせる。

濃度を変えて麻酔の深さを細かく調節でき、主に手術中の麻酔の『維持』に用いられる。

『導入は静脈麻酔薬、維持は吸入麻酔薬』という流れと、それぞれの代表薬をセットで覚えるとよい。

芋づる表

麻酔・鎮静・鎮痛の薬

要点働きで4つ: 落ち着ける(トランキライザー)・眠らせる(鎮静薬)・痛みを抑える(鎮痛薬)・意識を消す(麻酔薬)。作用の違う薬を少量ずつ組み合わせるのがバランス麻酔。導入は静脈麻酔薬、維持は吸入麻酔薬。

隠して覚える(?を押すとめくれる)
空欄の表を印刷(紙に書く用)

トランキライザー

フェノチアジン系
アセプロマジン・クロルプロマジン
鎮静作用はあるが鎮痛作用はない 痛む処置ではオピオイドなどと組み合わせる
ベンゾジアゼピン系
ジアゼパム・ミダゾラム
鎮静・筋弛緩・抗けいれん 健康な動物に単独だと興奮することも→併用

鎮静薬

α2作動薬
メデトミジン・デクスメデトミジン
しっかりした鎮静+鎮痛・筋弛緩。徐脈に注意 拮抗薬アチパメゾールで覚醒を早められる

鎮痛薬

麻薬性オピオイド
モルヒネ・フェンタニル
中等度〜強い痛みに。用量に応じて効果が高まる
非麻薬性オピオイド
ブプレノルフィン・ブトルファノール
効果に頭打ち(天井効果)。軽〜中等度の痛みに ブプレノルフィンは作用が長く術後に

麻酔薬

静脈麻酔薬
プロポフォール・アルファキサロン・チオペンタール
注射して一気に眠らせる=主に導入 プロポフォールは作用が速く蓄積しにくい
解離性麻酔薬
ケタミン
麻酔薬であり鎮痛作用ももつ。ほかの薬と組み合わせる
吸入麻酔薬
イソフルラン・セボフルラン
気化器で酸素に混ぜ気管チューブから=主に維持 濃度で麻酔の深さを細かく調節できる
理解できたら腕試し
確認問題 8問をとく