麻酔導入時の酸素化とモニタリング

麻酔導入の前に酸素を投与しておく『前酸素化』の意味、麻酔中のモニタリングに使うパルスオキシメーター(SpO2)とカプノメーター(呼気終末CO2)の違い、マスク導入や挿管が難しいケース(肥満・口腔/咽頭の腫瘍)、そして麻酔器のリークチェックと看護師の役割を、図ではなく文章で読んで理解する。

1前酸素化(プレオキシジネーション)

前酸素化は、麻酔導入の前にマスクなどで酸素を十分に吸わせておくこと。導入後に無呼吸になっても、血液の酸素飽和度(SpO2)が下がり始めるまでの余裕(時間)を延ばし、低酸素血症に陥る危険を減らす目的で行う。

前酸素化で肺・血液に酸素をためておくと、麻酔導入後に無呼吸になっても、SpO2が下がり始めるまでの時間(余裕)が延び、低酸素血症の危険を減らせる。

前酸素化(プレオキシジネーション)は、麻酔の導入を始める前に、マスクなどで高濃度の酸素をしばらく吸わせておく操作である。

麻酔導入の直後は、薬の作用で自発呼吸が止まる(無呼吸になる)ことがあり、その間は新しい酸素が肺に入ってこない。

あらかじめ前酸素化をしておくと、肺や血液に酸素を多くためた状態をつくれるため、無呼吸になっても血液の酸素飽和度(SpO2)が下がり始めるまでの時間を延ばすことができる。

これにより、SpO2が急に低下して低酸素血症に陥る危険を減らせる。

そのため前酸素化は、無呼吸が起こる前、すなわち麻酔導入の『前』に行っておくことに意味がある。

2パルスオキシメーター(SpO2)

パルスオキシメーターは、皮膚の上から光をあてて血液の酸素飽和度(SpO2=動脈血の酸素飽和度)を連続して測る機器。正常はおおむね95%以上で、90%未満になると低酸素血症が疑われ、酸素投与や原因検索など早急な対応が必要。

パルスオキシメーターは、舌や指などに挟んだプローブから光をあて、血液中のヘモグロビンがどれくらい酸素と結合しているか(酸素飽和度)を皮膚の上から連続して測定する機器である。

ここで表示される値をSpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)といい、体にとって酸素が足りているかを示す大切な指標になる。

正常はおおむね95%以上で、90%未満になると動脈血の酸素分圧がかなり下がっている(低酸素血症の)状態と考えられる。

SpO2が90%を下回ったり急に低下したときは、酸素の供給を増やす、気道や呼吸の状態を確認するなど、原因を調べて早急に対応する必要がある。

前酸素化は、この『SpO2が下がるまでの時間』をかせぐための備えともいえる。

3カプノメーター(呼気終末CO2)

カプノメーターは、吐く息に含まれる二酸化炭素(CO2)の濃度を測る機器で、『換気(息ができているか)』を評価する。SpO2が酸素化を、カプノメーターが換気をみるという役割の違いを押さえる。呼気終末CO2(EtCO2)の正常はおおむね35〜45mmHg。

カプノメーターは、動物が吐き出す息(呼気)に含まれる二酸化炭素(CO2)の濃度や圧を測定する機器である。

吐く息の終わりごろのCO2を呼気終末二酸化炭素(EtCO2)といい、正常はおおむね35〜45mmHgである。

CO2は体でつくられ呼吸で吐き出されるので、EtCO2をみることで『きちんと換気(息)ができているか』を評価できる。

たとえば、気管チューブが抜けたり詰まったりして換気が止まると、吐く息のCO2が出てこなくなり、波形や数値の急な変化として早く気づける。

ここがパルスオキシメーター(SpO2)との大きな違いで、SpO2は『酸素化(酸素が足りているか)』を、カプノメーターは『換気(息ができているか)』を主にみる、と役割を分けて覚えるとよい。

4マスク導入・挿管が難しいケース

肥満の動物や、口の中・咽頭(のど)に腫瘍があるケースでは、マスクが密着しにくい・口が開けにくい・気道が見えにくいなどで、マスク導入や気管挿管が難しくなる。こうした症例ほど前酸素化と入念な準備が重要になる。

麻酔の導入では、マスクで酸素や麻酔ガスを吸わせたり、気管チューブを入れて気道を確保したりするが、これが難しいケースがある。

肥満の動物では、首やのど周りに脂肪が多く、マスクがうまく密着しなかったり、気道が確保しにくかったりして、導入が大変になることがある。

また、口の中の腫瘍や、咽頭(のど)部の腫瘍があると、口が開けにくい・チューブを通す視野が腫瘍でさえぎられるなどで、気管挿管が難しくなる。

このような気道確保が難しい症例ほど、導入後に無呼吸になったときの余裕が少なくなるため、しっかりとした前酸素化と、太さの違うチューブや吸引などの入念な準備が重要になる。

5麻酔器のリークチェックとモニタリングの看護

麻酔を始める前には、麻酔器・呼吸回路に漏れ(リーク)がないかを確かめるリークチェックを行う。麻酔中は看護師がSpO2・EtCO2・心拍・血圧・体温などを継続して監視し、異常を早く見つけて獣医師に報告し、酸素や救急の準備を整える。

麻酔を安全に行うには、始める前の機器の点検が欠かせない。

なかでもリークチェック(漏れの確認)は、麻酔器や呼吸回路に酸素や麻酔ガスの漏れがないかを確かめる点検で、漏れがあると酸素やガスがきちんと届かず危険なため、使用前に必ず行う。

麻酔中は、パルスオキシメーター(SpO2)、カプノメーター(EtCO2)、心電図・心拍、血圧、体温などを組み合わせて、動物の状態を連続してモニタリングする。

動物看護師は、これらのモニターの数値と波形、粘膜色や脈などの全身状態を継続して観察し、SpO2の低下やEtCO2の異常などの変化に早く気づいて獣医師に報告する。

あわせて、酸素の供給、吸引や救急薬・器材の準備を整えておくことが、麻酔の安全を支える看護師の重要な役割である。

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