図解で学ぶ
動物看護学

酸塩基平衡と血液ガスの基礎

血液のpHは7.4前後(7.35〜7.45)という狭い範囲に保たれている。これが酸性側(pH低下=アシデミア)に傾くか、アルカリ性側(pH上昇=アルカレミア)に傾くか、そしてその原因が呼吸(二酸化炭素=PaCO2)にあるのか代謝(重炭酸イオン=HCO3⁻)にあるのかを区別する考え方を、血液ガス分析の読み方とあわせて学ぶ。

1血液pHは7.4前後に保たれている

要点体の細胞や酵素が正常に働くには、血液のpHが一定に保たれている必要がある。正常範囲はおよそ7.35〜7.45(中央が約7.4)。この範囲を保とうとするしくみ全体を『酸塩基平衡』という。

酸塩基異常は、原因が二酸化炭素(PaCO2)なら呼吸性、重炭酸イオン(HCO3⁻)なら代謝性に、傾く向きでアシドーシス(酸性)とアルカローシス(アルカリ性)に分けられ、組み合わせると4つになる。CO2は酸、HCO3⁻はアルカリ(塩基)として働く。

体の中の酵素や細胞は、決まった酸性・アルカリ性の度合い(pH)でいちばんよく働く。

そのため、血液のpHはごく狭い範囲に保たれている。

血液pHの正常範囲はおよそ7.35〜7.45で、中央の約7.4が基準となる。

7はちょうど中性で、それより大きいほどアルカリ性、小さいほど酸性である。

血液はわずかにアルカリ性に保たれている。

このpHを一定に保とうとする体のしくみ全体を『酸塩基平衡(さんえんきへいこう)』という。

体は、血液中の緩衝物質(重炭酸など)、肺からの二酸化炭素の排出、腎臓での酸・重炭酸の調整という3つの方法で、pHが大きくずれないように調節している。

病気やショック、呼吸の異常などでこのバランスが崩れると、pHが基準からずれて全身に影響が出る。

2アシデミアとアルカレミア(血液の傾き)

要点血液pHが7.35より低い(酸性に傾いた)状態をアシデミア(酸血症)、7.45より高い(アルカリ性に傾いた)状態をアルカレミア(アルカリ血症)という。これは『今、血液がどちらに傾いているか』という結果を表す言葉。

実際に測った血液のpHが、正常範囲からどちらにずれているかを表す言葉が、アシデミアとアルカレミアである。

血液pHが7.35より低くなった(酸性側に傾いた)状態をアシデミア(酸血症)という。

逆に、pHが7.45より高くなった(アルカリ性側に傾いた)状態をアルカレミア(アルカリ血症)という。

ポイントは、アシデミア・アルカレミアは『今このときの血液のpHがどちらに傾いているか』という結果(状態)を示す言葉だということである。

血液は同時に酸性とアルカリ性の両方に傾くことはできないため、アシデミアとアルカレミアが同時に存在することはない。

覚え方としては、『pHが低い(数字が小さい)=酸性=アシデミア』『pHが高い(数字が大きい)=アルカリ性=アルカレミア』と、数字の大小で整理するとよい。

3アシドーシスとアルカローシス(傾けようとする病態)

要点アシドーシス・アルカローシスは、血液を酸性/アルカリ性に傾けようとする『病態(はたらき・過程)』を指す。アシドーシスは酸性に傾けようとする病態、アルカローシスはアルカリ性に傾けようとする病態。複数の病態が同時に存在することもある。

アシデミア・アルカレミアが『結果としての血液の傾き』を表すのに対し、アシドーシス・アルカローシスは、その傾きを生み出そうとする『病態(過程・はたらき)』を指す言葉である。

血液を酸性に傾けようとする病態をアシドーシス、アルカリ性に傾けようとする病態をアルカローシスという。

たとえば、酸がたまる病態(アシドーシス)が強ければ、結果として血液は酸性に傾き(アシデミア)、pHが下がる。

重要なのは、アシドーシスとアルカローシスは『病態』なので、体の中で複数同時に起こりうるという点である(酸性に傾ける力とアルカリ性に傾ける力が同時に働くこともある)。

一方、アシデミア・アルカレミアは結果なので同時には存在しない。

血液ガスを読むときは、『今の血液の傾き(アシデミアかアルカレミアか)』と『それを起こしている病態(アシドーシスかアルカローシスか)』を分けて考えると理解しやすい。

4呼吸性(CO2)と代謝性(HCO3⁻)の区別

要点酸塩基の異常は、原因が二酸化炭素(PaCO2)の変化なら『呼吸性』、重炭酸イオン(HCO3⁻)の変化なら『代謝性』に分類する。CO2は酸として働き、HCO3⁻はアルカリ(塩基)として働く。

酸塩基平衡の異常は、その原因がどこにあるかで『呼吸性』と『代謝性』に分けられる。

血液中の二酸化炭素(CO2、検査ではPaCO2=動脈血二酸化炭素分圧)は、水にとけて酸として働く。

CO2は肺の呼吸(換気)で調節されるため、CO2の変化が原因の異常を『呼吸性』という。

重炭酸イオン(HCO3⁻)は、酸を打ち消すアルカリ(塩基)として働き、おもに腎臓や代謝で調節される。

HCO3⁻の変化が原因の異常を『代謝性』という。

組み合わせると4つになる。

呼吸性アシドーシス(CO2が増えて酸性に傾く=換気が低下したとき)、呼吸性アルカローシス(CO2が減ってアルカリ性に傾く=過呼吸で吐き出しすぎたとき)、代謝性アシドーシス(HCO3⁻が減る、または酸がたまって酸性に傾く)、代謝性アルカローシス(HCO3⁻が増えてアルカリ性に傾く)である。

『CO2は酸・呼吸性』『HCO3⁻はアルカリ・代謝性』という対応を押さえると、血液ガスの分類がしやすくなる。

5血液ガス分析の読み方と看護

要点血液ガス分析では、まずpHでアシデミアかアルカレミアかを判定し、次にPaCO2(呼吸性)とHCO3⁻(代謝性)のどちらがpHのずれを説明するかをみて、呼吸性か代謝性かを決める。看護では検体の正しい採取・取り扱いと、呼吸・循環状態の観察が大切。

血液ガス分析は、動脈血などを用いてpH・PaCO2・HCO3⁻・酸素の状態などを同時に測る検査で、酸塩基平衡や呼吸の状態を評価できる。

読み方の基本は、①まずpHを見て、7.35未満ならアシデミア、7.45超ならアルカレミアと、血液の傾きを判定する。

②次に、PaCO2(呼吸性の指標)とHCO3⁻(代謝性の指標)のどちらの変化がそのpHのずれを説明できるかをみて、呼吸性か代謝性かを決める、という順で考える。

たとえば、pHが低く(アシデミア)、PaCO2が高ければ呼吸性アシドーシス、pHが低くHCO3⁻が低ければ代謝性アシドーシス、というように判断する。

動物看護師の役割として、血液ガス用の検体は時間がたつと値が変わるため、採取後は速やかに測定する・空気が入らないようにするなど、正しい採取と取り扱いに注意する。

また、呼吸の速さ・深さ、粘膜色、循環状態(ショックや脱水の有無)など、酸塩基平衡に影響する全身状態を観察し、異常を獣医師に報告することも重要である。

理解できたら腕試し
確認問題 8問をとく