図解で学ぶ
臨床動物学

ウイルスの分類(DNA・RNA)とPCR

ウイルスを、もっている核酸(DNAかRNAか、一本鎖か二本鎖か)で分類して、獣医領域で重要な代表ウイルスを整理する。DNAウイルス(ヘルペス・アデノ・パルボ)、RNAウイルス(カリシ・コロナ・レトロ・パラミクソ・ラブドなど)の代表と、DNAを増幅して検出するPCRの原理を、図ではなく文章で読んで学ぶ。

このレッスンには芋づる表があります。表へ

1ウイルスの核酸とPCR

要点ウイルスは、遺伝情報である核酸(DNAまたはRNA)と、それを包むタンパク質の殻からなる。核酸の種類によりDNAウイルスとRNAウイルスに分けられる。PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)は、DNAを人工的に増やして(増幅して)検出する原理・手法で、ウイルスの遺伝子を検出する検査に使われる。

ウイルスは核酸の種類でDNAウイルス(青)とRNAウイルス(赤)に大別され、DNAウイルスはさらに二本鎖(ヘルペス・アデノ)と一本鎖(パルボ)に分かれる。検出にはDNAを増幅するPCRを用い、RNAウイルスではRT-PCRを用いる。

ウイルスは、遺伝情報である核酸(DNAまたはRNA)と、それを包むタンパク質の殻(カプシド)などからできている、とても小さな病原体である。

ウイルスは、もっている核酸の種類によって、DNAをもつDNAウイルスと、RNAをもつRNAウイルスに大きく分けられる。

さらに、その核酸が一本鎖か二本鎖かによっても分類される。

ウイルスの検出には、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)がよく用いられる。

PCRは、目的のDNAを酵素(ポリメラーゼ)の働きで人工的に何度も複製して増やす(増幅する)原理またはその手法で、ごく少量のウイルス遺伝子も検出できる感度の高い検査である。

RNAウイルスの場合は、RNAをいったんDNAに変換してから増幅するRT-PCRが用いられる。

2ウイルスの構造(カプシド・エンベロープ)

要点ウイルスの基本構造は、中心にある核酸(DNAまたはRNA=ゲノム/コア)と、それを包むタンパク質の殻『カプシド』。核酸とカプシドを合わせたものをヌクレオカプシドという。さらに外側を脂質二重層の『エンベロープ』が包むウイルスもある(エンベロープをもたないウイルスもある)。

ウイルスの基本的な構造を整理する。

中心には、遺伝情報である核酸(DNAまたはRNA)があり、これをコア(ゲノム)という。

その核酸を包むタンパク質の殻を、カプシドという。

核酸(コア)とカプシドを合わせたものを、ヌクレオカプシドと呼ぶ。

さらにウイルスによっては、ヌクレオカプシドの外側を、脂質二重層でできたエンベロープという膜が包んでいるものがある。

エンベロープをもつウイルス(エンベロープウイルス)と、もたないウイルス(ノンエンベロープウイルス)があり、エンベロープは脂質でできているため、アルコールや石けんなどで壊れやすい(=消毒が効きやすい)という特徴がある。

3DNAウイルス(ヘルペス・アデノ・パルボ)

要点DNAウイルスには、二本鎖DNAのヘルペスウイルス科・アデノウイルス科や、一本鎖DNAのパルボウイルス科などがある。犬パルボウイルス感染症(出血性腸炎)や猫汎白血球減少症はパルボウイルス(一本鎖DNA)が原因。

DNAウイルスは、遺伝情報としてDNAをもつウイルスである。

二本鎖DNAをもつ代表に、ヘルペスウイルス科(犬ヘルペス、猫ヘルペス=猫ウイルス性鼻気管炎など)や、アデノウイルス科(犬アデノウイルス=犬伝染性肝炎など)がある。

一本鎖DNAをもつ代表が、パルボウイルス科である。

犬パルボウイルス感染症(激しい出血性の腸炎を起こす)や、猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス)は、このパルボウイルス(一本鎖DNA)が原因である。

『ヘルペス・アデノ=二本鎖DNA、パルボ=一本鎖DNA』と整理するとよい。

4RNAウイルス①(カリシ・コロナ・レトロ)

要点RNAウイルスには、カリシウイルス(猫カリシウイルス感染症)、コロナウイルス(猫伝染性腹膜炎FIP・犬コロナ)、レトロウイルスなどがある。レトロウイルスは逆転写酵素をもつ特殊なRNAウイルスで、猫白血病ウイルス(FeLV)と猫免疫不全ウイルス(FIV)が代表。

RNAウイルスは、遺伝情報としてRNAをもつウイルスである。

代表的なものに、カリシウイルス(猫カリシウイルス感染症=口内炎・上部気道症状)、コロナウイルス(猫伝染性腹膜炎=FIP、犬コロナウイルス感染症)がある。

レトロウイルスも重要なRNAウイルスで、逆転写酵素という酵素をもち、自分のRNAをDNAに変えて宿主の遺伝子に組み込むという特殊な性質をもつ。

獣医領域で特に重要なレトロウイルスが、猫白血病ウイルス(FeLV)と猫免疫不全ウイルス(FIV)である。

注意したいのは、FeLV・FIVはレトロウイルス、すなわちRNAウイルスであり、DNAウイルスではない点である。

5RNAウイルス②(オルソミクソ・パラミクソ・ラブド)

要点マイナス鎖の一本鎖RNAウイルスには、オルソミクソウイルス(インフルエンザ)、パラミクソウイルス(犬ジステンパー)、ラブドウイルス(狂犬病ウイルス)などがある。いずれも獣医・公衆衛生上重要なRNAウイルス。

RNAウイルスのうち、マイナス鎖の一本鎖RNAをもつグループにも、重要なウイルスが多い。

オルソミクソウイルス科には、インフルエンザウイルスが含まれる。

パラミクソウイルス科には、犬ジステンパーウイルス(犬ジステンパー)が含まれる。

ラブドウイルス科には、狂犬病ウイルスが含まれる。

狂犬病はすべての哺乳類が感染し、発症するとほぼ100%死亡する、極めて重要な人獣共通感染症である。

『インフルエンザ=オルソミクソ、犬ジステンパー=パラミクソ、狂犬病=ラブド』と、ウイルスの科とあわせて覚えておくとよい。

6代表ウイルスの核酸まとめ

要点DNAウイルス=ヘルペス・アデノ(二本鎖)、パルボ(一本鎖)。RNAウイルス=カリシ・コロナ・レトロ(FeLV・FIV)・オルソミクソ(インフル)・パラミクソ(ジステンパー)・ラブド(狂犬病)。FeLV・FIVがRNA(レトロ)である点に注意。

代表的なウイルスを、核酸の種類で整理しておく。

DNAウイルスは、ヘルペスウイルス・アデノウイルス(いずれも二本鎖DNA)と、パルボウイルス(一本鎖DNA。

犬パルボ・猫汎白血球減少症)である。

RNAウイルスは、カリシウイルス(猫カリシ)、コロナウイルス(FIP・犬コロナ)、レトロウイルス(FeLV・FIV)、オルソミクソウイルス(インフルエンザ)、パラミクソウイルス(犬ジステンパー)、ラブドウイルス(狂犬病)などである。

とくに、猫白血病ウイルス(FeLV)・猫免疫不全ウイルス(FIV)は、名前から誤解されやすいが、DNAウイルスではなくレトロウイルス(RNAウイルス)である点に注意する。

ウイルスの検出には、DNAを増幅するPCR(RNAウイルスではRT-PCR)が広く用いられる。

芋づる表

ウイルスの分類(核酸・エンベロープ)

要点ヘルペス・アデノ=二本鎖DNA、パルボ=一本鎖DNA、ほかはRNA。FeLV・FIV はレトロ(RNA)。エンベロープが無いパルボ・アデノ・カリシは消毒に強い。

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DNAウイルス

ヘルペスウイルス
二本鎖DNA エンベロープあり
猫ウイルス性鼻気管炎・犬ヘルペス
アデノウイルス
二本鎖DNA エンベロープなし(消毒に強い)
犬伝染性肝炎(犬アデノウイルス1型)
パルボウイルス
一本鎖DNA エンベロープなし(消毒に強い)
犬パルボウイルス感染症・猫汎白血球減少症

RNAウイルス

カリシウイルス
一本鎖RNA エンベロープなし(アルコールが効きにくい)
猫カリシウイルス感染症(口内炎)
コロナウイルス
一本鎖RNA エンベロープあり
猫伝染性腹膜炎(FIP)・犬コロナウイルス感染症
レトロウイルス
一本鎖RNA 逆転写酵素をもつ・エンベロープあり
猫白血病ウイルス(FeLV)・猫免疫不全ウイルス(FIV)

RNAウイルス(マイナス鎖)

オルソミクソウイルス
一本鎖RNA(マイナス鎖) エンベロープあり
インフルエンザ
パラミクソウイルス
一本鎖RNA(マイナス鎖) エンベロープあり
犬ジステンパー
ラブドウイルス
一本鎖RNA(マイナス鎖) 弾丸状・エンベロープあり
狂犬病
理解できたら腕試し
確認問題 10問をとく