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愛玩動物看護師法の業務範囲と職業倫理

愛玩動物看護師法は令和4年5月1日に施行された国家資格の法律。愛玩動物看護師は『名称独占』(資格が無い者は名乗れない)であるだけでなく、診療の補助については獣医師以外に行えない『業務独占』でもある。獣医師の指示のもとで行える診療の補助(採血・輸液剤の注射・マイクロチップの装着など)と、引き続き獣医師のみが行う業務(診断・レントゲン撮影・手術・ワクチン接種など)の境界、獣医師との連携義務、免許が与えられないことがある欠格事由、そして日本愛玩動物看護師会の倫理綱領(4本柱)までを、図ではなく文章で読んで理解する。

1愛玩動物看護師法の概要

要点愛玩動物看護師法は令和元年(2019年)6月に議員立法で制定され、令和4年(2022年)5月1日に施行された。この法律により『愛玩動物看護師』という国家資格が創設された。業務は、診療の補助、愛玩動物の看護、飼育者への愛護・適正飼養に関する助言等(法第2条第2項)。

愛玩動物看護師法は、令和元年(2019年)6月に議員立法として制定され、令和4年(2022年)5月1日に施行された、比較的新しい法律である。

この法律によって、『愛玩動物看護師』という国家資格が創設された。

法第2条第2項では、愛玩動物看護師の業務として、①診療の補助、②愛玩動物の世話その他の愛玩動物の看護、③愛玩動物を飼養する者その他の者に対する愛護及び適正な飼養に係る助言等、の3つが定められている。

対象となる『愛玩動物』は犬・猫・愛玩鳥(オウム科・カエデチョウ科・アトリ科の鳥)で、種によって決まる(詳しくは別レッスン『動物と社会』を参照)。

施行から5年間(令和4年5月1日〜令和9年4月30日)は、既卒者・在学者・現任者向けの受験資格の特例措置が設けられている。

2名称独占と業務独占の両方をもつ資格

要点愛玩動物看護師は、①資格の無い者が『愛玩動物看護師』やこれに紛らわしい名称を名乗れない『名称独占』と、②診療の補助は愛玩動物看護師(と獣医師)以外は行えない『業務独占』の、両方の性質をあわせもつ国家資格である。

国家資格には、資格が無くても業務自体は行えるが名称だけを独占的に使える『名称独占』資格(例: 保育士)と、資格が無ければ業務そのものを行えない『業務独占』資格(例: 医師)がある。

愛玩動物看護師は、このどちらか一方ではなく、両方の性質をあわせもつ。

まず、愛玩動物看護師でない者は『愛玩動物看護師』またはこれに紛らわしい名称(『動物看護師』『動物看護士』など、資格者であるかのような印象を与える名称)を使用できない(名称独占)。

さらに、法が定める『診療の補助』については、愛玩動物看護師の資格を有する者のみ(獣医師を除く)が行うことができる独占業務となっている(業務独占)。

つまり、診療の補助以外の業務(入院動物の世話、グルーミングの指導、飼い主への適正飼養の助言など)は資格が無くても行えるが、診療の補助と『愛玩動物看護師』の名称の2つは、資格者だけに認められている。

3業務範囲 ― 診療の補助でできること

要点獣医師の指示のもとであれば、愛玩動物看護師は採血、輸液剤の注射、マイクロチップの装着、カテーテルによる採尿、投薬(経口投与など)といった『診療の補助』を行うことができる。これらは『衛生上の危害を生じるおそれが少ないと認められる行為』とされる。

『診療の補助』とは、衛生上の危害を生じるおそれが少ないと認められる行為であって、獣医師の指示のもとに行われるものをいう。

具体的には、採血、輸液剤(補液)の注射、マイクロチップの装着、カテーテルによる採尿、投薬(経口投与など)といった行為が、獣医師の指示があれば愛玩動物看護師にも認められている。

手術に関連する業務としては、麻酔時のモニター管理や、獣医師の具体的な指示に基づく麻酔量の調整などが含まれる。

救急救命の場面では、獣医師の具体的な指示に基づく心肺蘇生処置も、診療の補助として行うことができる。

これらはいずれも、獣医師が実際に動物を診察・指示したうえで、その指示の範囲内で行うものである点が重要である。

4業務範囲 ― 引き続き獣医師のみが行う業務

要点診断、エックス線(レントゲン)撮影などの放射線の照射、手術、ワクチン接種など、動物の身体への影響が大きい医療行為は、愛玩動物看護師法の施行後も引き続き獣医師のみが行う。薬剤の処方・調剤も獣医師のみの業務である。

愛玩動物看護師法によって診療の補助の一部が愛玩動物看護師にも認められるようになったが、動物の身体への影響が大きい医療行為は、引き続き獣医師のみが行うこととされている。

具体的には、診断、エックス線(レントゲン)撮影などの放射線の照射、手術、ワクチンなど身体への影響が大きい医薬品の投与は、獣医師でなければ行えない。

また、薬剤の処方(どの薬をどれだけ使うか決めること)・調剤も、獣医師のみが行う業務である(愛玩動物看護師が行えるのは、獣医師の指示に基づく投薬=薬を与える行為までである)。

『診療の補助としてできること』と『引き続き獣医師のみができること』の境界を理解することは、愛玩動物看護師の業務範囲を考えるうえで欠かせない。

5獣医師との連携(第41条)

要点愛玩動物看護師法第41条は、愛玩動物看護師が業務を行うにあたり、獣医師との緊密な連携を図り、適正な獣医療の確保に努めなければならないと定めている。診療の補助はあくまで獣医師の指示のもとで行うものであり、単独で判断して行うものではない。

愛玩動物看護師法第41条は、『愛玩動物看護師は、その業務を行うに当たっては、獣医師その他の関係者との緊密な連携を図り、適正な獣医療の確保に努めなければならない』という趣旨の規定を置いている。

これは、診療の補助が『獣医師の指示のもとに行われるもの』であることの裏返しでもある。

愛玩動物看護師が自分の判断だけで診療の補助を行ってよいわけではなく、獣医師との連携・指示のもとで、チームとして動物の診療にあたることが求められている。

6欠格事由(免許が与えられないことがある場合)

要点愛玩動物看護師法第4条は、①罰金以上の刑に処せられた者、②業務に関し犯罪又は不正の行為があった者、③心身の障害により業務を適正に行うことができない者(農林水産省令・環境省令で定めるもの)、④麻薬・大麻・あへんの中毒者、には免許を与えないことがあると定めている。

愛玩動物看護師法第4条は、次のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがあると定めている(欠格事由)。

①罰金以上の刑に処せられた者。

②①のほか、愛玩動物看護師の業務に関し犯罪又は不正の行為があった者。

③心身の障害により愛玩動物看護師の業務を適正に行うことができない者として、農林水産省令・環境省令で定めるもの。

④麻薬、大麻又はあへんの中毒者。

免許を得たあとにこれらの事由が生じた場合も、農林水産大臣及び環境大臣は、免許の取消しや名称の使用停止を命じることができる。

7職業倫理 ― 愛玩動物看護者の倫理綱領

要点日本愛玩動物看護師会が定める倫理綱領は、①動物に対する倫理と責任、②飼養者に対する倫理と責任、③動物看護実践と責任(守秘義務の遵守を含む)、④社会に対する倫理と責任、の4本柱からなる。法律の義務とは別に、専門職としての行動指針を示すものである。

法律で定められた業務範囲・欠格事由とは別に、専門職としての行動指針を示すのが職業倫理である。

一般社団法人 日本愛玩動物看護師会が定める『愛玩動物看護者の倫理綱領』は、大きく4つの柱からなる。

【Ⅰ 動物に対する倫理と責任】動物の生命と権利を尊重し、動物愛護と福祉の向上に努める。

動物種ごとの特性を理解し、普遍的な愛情をもって看護を提供する。

【Ⅱ 飼養者に対する倫理と責任】飼養者に誠意をもって対応し、信頼関係を築く。

飼養者の『知る権利』と決定権を尊重する。

【Ⅲ 動物看護実践と責任】業務上知り得た情報について守秘義務を守り、情報を保護する。

自己の責任と能力の範囲を判断して看護を実践し、継続的に学習して知識・技能を高める。

【Ⅳ 社会に対する倫理と責任】品行を保ち健康の保持・増進に努める。

人と動物に共通する疾病(人獣共通感染症)に配慮し、公衆衛生に貢献する。

このように、倫理綱領は法律の義務(欠格事由や名称の使用制限など)を補う形で、動物・飼養者・同僚・社会それぞれに対する専門職としてのふるまいを示している。

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