輸入が規制される動物と日本に存在しない感染症

人にうつる危険な感染症を国内に持ち込ませないため、感染症法では特定の動物の輸入が禁止されている(イタチアナグマ・タヌキ・ハクビシン=SARS、プレーリードッグ=ペスト、ヤワゲネズミ=ラッサ熱、コウモリ、サル=エボラなど)。また、牛疫・口蹄疫・アフリカ豚熱などの『海外悪性伝染病』は日本に存在せず、侵入を防ぐ厳しい防疫がとられている——その枠組みを学ぶ。

1感染症法による動物の輸入規制

人にうつる危険な感染症を国内に持ち込ませないため、感染症法では、特定の動物の輸入を禁止したり、輸入時に届出を求めたりしている。とくに、重大な人獣共通感染症を運ぶおそれの高い動物は、輸入そのものが禁止されている。

感染症法による動物の輸入規制の考え方。海外にある国内にない危険な感染症(人獣共通感染症)を国内に入れないため、輸入時に届け出を求める『輸入届出制度』と、危険性の高い動物の『輸入禁止』で規制し、侵入を防ぐ。

海外には、国内にはない(または非常にまれな)危険な感染症がある。

人や動物の行き来によってこれらが持ち込まれると、大きな被害につながる。

これを防ぐため、感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)では、動物の輸入を規制している。

規制には、輸入時に届け出が必要な『輸入届出制度』のほか、危険性の高い動物については、輸入そのものを禁止する『輸入禁止』がある。

とくに、重大な人獣共通感染症の病原体を運ぶおそれが高いと考えられる動物は、ペットなどとして国内に持ち込まれないよう、輸入が禁止されている。

どの動物が、どの感染症のために禁止されているのかを結びつけて理解することが大切である。

2輸入禁止動物とそれぞれの感染症

感染症法で輸入が禁止されている主な動物は、イタチアナグマ・タヌキ・ハクビシン(SARS)、プレーリードッグ(ペスト)、ヤワゲネズミ(ラッサ熱)、コウモリ(ニパ・リッサ・狂犬病など)、サル(エボラ出血熱・マールブルグ病など)。動物と感染症をセットで覚える。

感染症法で輸入が禁止されている主な動物と、その理由となる感染症。イタチアナグマ・タヌキ・ハクビシン=SARS、プレーリードッグ=ペスト、ヤワゲネズミ=ラッサ熱、コウモリ=ニパ・リッサ・狂犬病など、サル(霊長類)=エボラ出血熱・マールブルグ病など。『動物→どの病気のために禁止か』をセットで覚える。

感染症法で輸入が禁止されている主な動物と、その理由となる感染症は次のとおりである。

イタチアナグマ・タヌキ・ハクビシンは、SARS(重症急性呼吸器症候群)を運ぶおそれがあるため輸入が禁止された。

プレーリードッグは、ペスト(および過去のサル痘や野兎病の事例)を運ぶおそれがあるため輸入が禁止された。

ヤワゲネズミ(多乳房ネズミ)は、ラッサ熱を運ぶおそれがあるため輸入が禁止された。

コウモリは、ニパウイルス感染症・リッサウイルス感染症・狂犬病などを運ぶおそれがあるため輸入が禁止された。

サル(霊長類)は、エボラ出血熱・マールブルグ病などを運ぶおそれがあるため輸入が厳しく規制されている(サルはほかにBウイルス病・細菌性赤痢・結核などにも関わる)。

これらは『動物 → どの病気のために禁止か』をセットにして覚えると整理しやすい。

3海外悪性伝染病(日本に存在しない伝染病)

牛疫・牛肺疫・口蹄疫・アフリカ豚熱(ASF)・アフリカ馬疫・鼻疽・リフトバレー熱・小反芻獣疫などは、日本に存在しない(または撲滅された)重大な家畜伝染病で『海外悪性伝染病』と呼ばれる。侵入すれば畜産に甚大な被害が出るため、清浄国を保つ厳しい防疫がとられる。

動物の感染症の中には、現在の日本には存在しない(侵入すると深刻な被害を与える)重大な家畜伝染病があり、これらは『海外悪性伝染病』と呼ばれる。

日本では海外悪性伝染病防疫要領に多数が指定されている。

代表的なものに、牛疫・牛肺疫(日本では1941年の報告を最後に発生なし。

牛疫は世界的に撲滅)、口蹄疫、アフリカ豚熱(ASF。

日本は清浄国)、アフリカ馬疫、鼻疽、リフトバレー熱、小反芻獣疫などがある。

狂犬病も、日本国内では現在発生がみられない。

なかでも、口蹄疫・アフリカ豚熱・牛疫は、病原性やまん延力、世界での発生状況から、とくに重要とされる。

これらが万一侵入すると、家畜の大量死や殺処分、輸出入の停止など、畜産業に甚大な被害が出る。

そのため、動物検疫(空港・港での検疫)、輸入禁止・制限、発生時の迅速な殺処分・移動制限などによって、日本を『清浄国(その病気のない国)』に保つための厳しい防疫がとられている。

4水際対策と動物看護師の役割

危険な感染症の侵入を防ぐ『水際対策』として、動物検疫・輸入規制・海外悪性伝染病への警戒がある。動物医療の現場でも、海外渡航歴や輸入動物の情報を把握し、見慣れない症状や疑わしい例に気づいて適切に報告・対応することが、侵入・拡大の防止につながる。

これら『輸入動物の規制』と『海外悪性伝染病への警戒』は、危険な感染症を国内に入れない『水際対策(みずぎわたいさく)』として重要である。

空港・港では動物検疫が行われ、輸入が禁止・規制される動物のチェックや、家畜・畜産物の検査が行われている。

動物医療・動物看護の現場でも、こうした知識は役立つ。

たとえば、最近海外へ行った動物や、海外から来た動物について、渡航歴・輸入の経緯を確認しておくこと、見慣れない症状や、国内ではまれな病気を疑わせる例に気づいて、獣医師や関係機関へ適切に報告・相談することが、侵入や拡大の防止につながる。

また、飼い主に対して、危険な野生動物・輸入動物を安易にペットにしないこと、海外で動物に咬まれないよう注意することなどを伝えるのも、公衆衛生を守る動物看護師の役割である。

『日本にない病気を入れない・広げない』という視点をもつことが大切である。

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