動物福祉と動物愛護管理法(5つの自由・マイクロチップ)

アニマルウェルフェア(動物福祉)は、動物が心身ともに健康で快適に過ごせる状態をめざす考え方。1964年のルース・ハリソン『アニマル・マシーン』をきっかけに、1965年のブランベル報告で『5つの自由』が示された。日本の動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)、愛護動物、動物愛護週間、マイクロチップ装着の義務化、56日齢規制を整理する。

1アニマルウェルフェア・ライツ・ウェルビーイング

アニマルウェルフェア(動物福祉)は、動物が心身ともに健康で快適に過ごせる状態をめざす考え方。アニマルライツ(動物の権利)は、動物にも人と同様の権利を認める立場。アニマルウェルビーイングは、できるだけ自然な状態で飼育環境を豊かにし、動物がよりよく生きることをめざす考え方。

動物福祉がめざす「5つの自由」の一覧。飢えと渇き・不快・痛み傷害病気からの自由(身体面)と、正常な行動を表現する自由・恐怖や苦悩(不安)からの自由(行動・精神面)の5項目からなる。

動物との関わり方を表す言葉には、似ているが意味の異なるものがある。

整理しておく。

アニマルウェルフェア(動物福祉)は、人が動物を利用すること自体は認めたうえで、その動物が心身ともに健康で、できるだけ苦痛やストレスなく快適に過ごせる状態をめざす考え方である。

アニマルライツ(動物の権利)は、動物にも人と同じように権利があると考え、動物を利用すること自体を否定する立場で、動物福祉とは出発点が異なる。

アニマルウェルビーイングは、動物ができるだけ自然な状態で生きられるよう、飼育環境を豊かにして(環境エンリッチメント)、動物がよりよく生きること(前向きな快適さ)をめざす考え方である。

なお、日本でよく使われる『動物愛護』は、動物をかわいがり大切にするという気持ちの面を含む言葉で、科学的に動物の状態を評価しようとする『動物福祉(ウェルフェア)』とは少しニュアンスが異なる。

これらの言葉の違いを押さえておくと、法律や国際基準の理解がしやすくなる。

2動物福祉の歴史(アニマル・マシーンとブランベル報告)

近代的な動物福祉のきっかけは、1964年にルース・ハリソンが著書『アニマル・マシーン』で工場式の集約畜産を批判したこと。これを受けて立ち上がった委員会の報告書(1965年のブランベル報告)で、『5つの自由』の考え方が初めて示された。

現在の動物福祉の考え方は、1960年代のイギリスから広まった。

1964年、ルース・ハリソンが著書『アニマル・マシーン(Animal Machines)』の中で、動物を機械のように扱う工場式・集約的な畜産のあり方を批判し、大きな社会的反響を呼んだ。

これを受けて、イギリスで家畜の福祉を調べる専門委員会が立ち上げられ、その調査報告書が1965年に発表された。

これが委員長の名にちなんで『ブランベル報告(ブランベル・レポート)』と呼ばれる。

このブランベル報告の中で、家畜が確保されるべき自由として『5つの自由(Five Freedoms)』の考え方が初めて示された。

5つの自由は、その後アニマルウェルフェアの基本的な指標として世界に広まり、現在は国際獣疫事務局(WOAH)の動物福祉の国際基準の土台にもなっている。

(『1964年=アニマル・マシーン、1965年=ブランベル報告と5つの自由』と年号をセットで覚えるとよい。

35つの自由(Five Freedoms)

5つの自由は、①飢え・渇きからの自由、②不快からの自由(適切な環境)、③痛み・傷害・病気からの自由、④正常な行動を表現する自由、⑤恐怖・苦悩(不安)からの自由。動物福祉を評価・実現するための基本となる5項目。

動物福祉の基本指標『5つの自由(Five Freedoms)』。①飢え・渇きからの自由(適切な食事と水)、②不快からの自由(適切な環境)、③痛み・傷害・病気からの自由(予防・早期発見・治療)、④正常な行動を表現する自由(本来の行動)、⑤恐怖・苦悩(不安)からの自由(精神的苦痛を与えない)。①〜③は身体面、④⑤は行動・精神面までを含むのが特徴。

動物福祉の基本指標である『5つの自由』は、次の5項目からなる。

1つ目は『飢えと渇きからの自由』で、適切な食事と新鮮な水が与えられていること。

2つ目は『不快からの自由』で、適切な環境(暑さ・寒さ・汚れなどからの保護、休める場所など)が確保されていること。

3つ目は『痛み・傷害・病気からの自由』で、病気やけがの予防、早い発見と適切な治療がなされること。

4つ目は『正常な行動を表現する自由』で、その動物本来の行動(十分な空間、仲間との関わりなど)がとれること。

5つ目は『恐怖や苦悩(不安)からの自由』で、精神的な苦しみを与えないような環境・扱いがなされること。

この5つは、身体面(飢え・不快・病気)だけでなく、行動面・精神面(正常な行動・恐怖)まで含んでいるのが特徴である。

動物の状態がこの5項目を満たしているかが、福祉を評価するものさしになる。

4動物愛護管理法と愛護動物・動物愛護週間

日本の動物福祉の基本となる法律が『動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)』。この法律で守られる『愛護動物』には、牛・馬・豚・めん羊・山羊・犬・猫・いえうさぎ・鶏・いえばと・あひるなどが含まれる。毎年9月20日〜26日は動物愛護週間。

日本で動物の適正な取り扱いや福祉を定める基本の法律が、『動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)』である。

動物をみだりに殺したり傷つけたり、虐待・遺棄したりすることを禁じ、飼い主の責任(適正飼養)などを定めている。

この法律で保護の対象となる『愛護動物』には、人が飼っている牛・馬・豚・めん羊・山羊・犬・猫・いえうさぎ・鶏・いえばと・あひる、そのほか人が占有している哺乳類・鳥類・爬虫類が含まれる。

これらの愛護動物をみだりに殺傷したり、虐待・遺棄したりすると、罰則の対象になる。

また、この法律にもとづき、動物の愛護と適正な飼養についての関心と理解を広めるため、毎年9月20日から26日までが『動物愛護週間』と定められている。

動物看護師は、こうした法律の枠組みや愛護動物の範囲、動物愛護週間の意義を理解し、飼い主への啓発や適正飼養の支援に役立てることが求められる。

5マイクロチップの義務化と56日齢規制

2022年6月の改正動物愛護管理法施行で、犬猫等の販売業者(ブリーダー・ペットショップ)に、犬猫へのマイクロチップ装着と情報登録が義務づけられた(一般の飼い主は努力義務)。同時に、生後56日(8週齢)以下の子犬・子猫の販売も原則禁止された。

近年の改正動物愛護管理法では、犬・猫の管理に関する重要なルールが加わった。

1つは、マイクロチップの装着・登録の義務化である。

2022年6月から、犬猫等の販売業者(ブリーダーやペットショップ)は、扱う犬猫にマイクロチップを装着し、所有者情報などを登録することが義務づけられた。

マイクロチップは、迷子や災害ではぐれたときに身元を確認でき、飼い主のもとへ戻すのに役立つ。

なお、すでに飼っている一般の飼い主にとっては、装着は『努力義務』(義務ではなく努めるべきこと)とされている。

もう1つは、子犬・子猫の販売時期の規制(56日齢規制)である。

2022年6月から、生後56日(8週齢)以下の子犬・子猫を販売することが原則禁止された(以前は49日=7週齢が基準だった)。

これは、幼すぎる時期は感染症のリスクが高いこと、また早く親やきょうだいから引き離すと社会性が育たず問題行動につながりやすいことから、一定期間は親・きょうだいと過ごして社会性を身につけさせることが大切だからである。

動物看護師は、これらの新しいルールを理解し、飼い主や来院者に正しく説明できることが望ましい。

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