家畜伝染病(法定伝染病)と人獣共通感染症

家畜伝染病予防法では、まん延を防ぐため強い措置(殺処分など)が必要な28疾病を『家畜伝染病(法定伝染病)』に指定している。その多くは、動物と人の間でうつる『人獣共通感染症(ズーノーシス)』でもある。狂犬病・炭疽・鼻疽・高病原性鳥インフルエンザ・牛疫/牛肺疫など、覚えておきたい重要な疾病と、発見時の届出のしくみを整理する。

1家畜伝染病予防法と監視伝染病

家畜伝染病予防法は、家畜の伝染病のまん延を防ぐための法律。国が指定する『監視伝染病』には、とくに重大で殺処分などの強い措置をとる『家畜伝染病(法定伝染病、28疾病)』と、発生を把握するため届け出る『届出伝染病』がある。発見者には届出の義務がある。

家畜伝染病予防法の『監視伝染病』は2つに分かれる。家畜伝染病(法定伝染病)=重大でまん延の危険が大きい28疾病で、殺処分・移動制限・消毒などの強い措置をとる(口蹄疫・牛疫・高病原性鳥インフルエンザ等)。届出伝染病=法定伝染病ほどではないが発生状況の把握が必要な多数の疾病。いずれも発見した獣医師などに届出の義務があり、早い届出がまん延防止につながる。

家畜伝染病予防法は、家畜の伝染性疾病が発生したり広がったりするのを防ぐための法律である。

畜産を守るとともに、人にもうつる病気の場合は公衆衛生上も重要になる。

この法律で国が監視の対象とする伝染病を『監視伝染病』といい、大きく2つに分かれる。

1つは『家畜伝染病(法定伝染病)』で、病気の重大さ・まん延の危険などから、殺処分・移動制限・消毒などの強い措置を講じる必要があるものとして28疾病が指定されている。

もう1つは『届出伝染病』で、法定伝染病ほどではないが発生状況を把握する必要があるもので、多数の疾病が指定されている。

これらの病気を発見した獣医師などには、家畜保健衛生所などへ届け出る義務がある。

早く届け出て対応することが、まん延の防止につながる。

動物看護の現場でも、こうした重要な伝染病を知り、疑わしい例に気づいて適切な報告・対応につなげることが大切である。

2対象となる家畜と指定検疫物

家畜伝染病予防法が対象とする動物には、牛・めん羊・山羊などの偶蹄類、馬、家禽(鶏・あひる・七面鳥・うずら・がちょう)、うさぎ、みつばちなどがある。輸入検疫の対象(指定検疫物)には、これらの動物に加え、卵や、骨・肉・皮などの畜産物、さらにソーセージ・ハム・ベーコンなども含まれる。

家畜伝染病予防法が対象とする動物は、牛・めん羊・山羊・豚・いのししなどの偶蹄類、馬、家禽(鶏・あひる・七面鳥・うずら・がちょう)、うさぎ、みつばちなどである。

また、伝染病が海外から持ち込まれるのを防ぐため、輸入時に検査(輸入検疫)の対象となる物を『指定検疫物』として定めている。

指定検疫物には、上記の動物そのものに加えて、家禽の卵や、動物の骨・肉・脂肪・血液・皮・毛・羽・角・蹄・臓器などの畜産物が含まれる。

さらに、骨や肉などを原料とするソーセージ・ハム・ベーコンといった加工品も指定検疫物に含まれる。

これらは、肉などを通じて病原体が国内に侵入するのを防ぐためであり、海外から無断で畜産物を持ち込めないのはこのためである。

3人獣共通感染症(ズーノーシス)とは

人獣共通感染症(ズーノーシス、動物由来感染症)は、動物と人の間で自然にうつる病気・感染の総称。狂犬病・鳥インフルエンザ・炭疽・鼻疽・SFTS・エボラ出血熱など多数あり、世界で200種類以上が知られる。家畜伝染病のうち多くがこれにあたる。

人獣共通感染症(ズーノーシス)は、世界保健機関(WHO)により『脊椎動物と人の間で自然に移行するすべての病気または感染』と定義される。

動物由来感染症とも呼ばれる。

世界では200種類以上が知られており、よく知られたものに、狂犬病、高病原性鳥インフルエンザ、エボラ出血熱、中東呼吸器症候群(MERS)、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)などがある。

うつり方はさまざまで、咬まれる(狂犬病)、糞や体液・土壌に触れる(炭疽・鳥インフルエンザ)、マダニに刺される(SFTS)などがある。

家畜伝染病に指定されている28疾病のうち、狂犬病・炭疽・鼻疽・リフトバレー熱・高病原性鳥インフルエンザなど、多くが人にもうつる人獣共通感染症でもある。

そのため、これらの病気では、動物の治療・防疫だけでなく、人(飼い主・畜産従事者・獣医療スタッフ)への感染を防ぐ視点(ワンヘルス)が重要になる。

4狂犬病(最も重要な人獣共通感染症)

狂犬病は、おもに感染動物に咬まれて唾液中のウイルスが体内に入って感染する。発症するとほぼ100%死亡する、人獣共通感染症のなかでも最重要の病気。日本では狂犬病予防法で犬の登録と年1回の予防注射が義務づけられている。

狂犬病は、狂犬病ウイルスによる人獣共通感染症で、家畜伝染病にも指定されている。

哺乳類が広く感染し、おもに感染した動物に咬まれることで、唾液中のウイルスが傷口から体内に入って感染する。

潜伏期のあと、興奮・錯乱・麻痺などの神経症状が現れ、最終的に呼吸困難などで死に至る。

いったん発症すると、人でも動物でもほぼ100%死亡する、極めて致死性の高い病気である。

日本国内では現在、狂犬病の発生はみられないが、世界では多くの国でなお発生しており、海外で咬まれて持ち込まれる危険がある。

日本では、狂犬病予防法により、飼い犬の市区町村への登録と、年1回の狂犬病予防注射が飼い主に義務づけられている。

これは、万一の侵入時にまん延を防ぐための重要な備えである。

動物看護師は、予防注射の重要性を飼い主に伝えること、海外での咬傷などのリスクを理解しておくことが求められる。

5炭疽と鼻疽(細菌性の人獣共通感染症)

炭疽は炭疽菌による病気で、芽胞が土壌中で長く生き残り、草食動物が摂取して感染、人にもうつる。鼻疽は馬などに起こる鼻疽菌による病気で、人にも感染する。いずれも家畜伝染病・人獣共通感染症で、強い防疫措置と取り扱いの注意が必要。

細菌による重要な家畜伝染病で、人獣共通感染症でもあるものに、炭疽と鼻疽がある。

炭疽(たんそ)は、炭疽菌(Bacillus anthracis)による病気である。

炭疽菌は環境中で抵抗性の強い『芽胞』をつくり、土壌の中で長期間生き残る。

これを草食動物(牛・羊など)が口から取り込んで感染し、急死することがある。

人も、感染動物やその製品・芽胞に触れたり吸い込んだりして感染しうる。

鼻疽(びそ)は、鼻疽菌による病気で、おもに馬・ロバなどに起こり、鼻腔や皮膚・肺などに結節・潰瘍をつくる。

人にも感染する人獣共通感染症で、取り扱いには注意を要する。

これらは家畜伝染病に指定されており、発生時には届出と、殺処分・消毒などの強い防疫措置がとられる。

とくに芽胞をつくる炭疽は、適切に処理しないと汚染が長く残るため、取り扱いに細心の注意が必要である。

6高病原性鳥インフルエンザ・牛疫・牛肺疫

高病原性鳥インフルエンザは家きん(ニワトリなど)に高い死亡を起こすウイルス病で、人にもうつりうる人獣共通感染症。発生時は大規模な殺処分・移動制限が行われる。牛疫・牛肺疫は牛などの重大な伝染病で、家畜伝染病に指定されている(牛疫は世界的に撲滅)。

家きん(鳥)の重大な家畜伝染病が、高病原性鳥インフルエンザである。

これは病原性の高いA型インフルエンザウイルスによる病気で、ニワトリなどに高い死亡率を起こす。

糞などを介して広がり、人にも感染しうる人獣共通感染症でもある(高熱・筋肉痛などインフルエンザ様症状)。

発生時には、まん延防止のため農場の家きんの大規模な殺処分や移動制限が行われる。

牛などの重大な伝染病として、牛疫と牛肺疫がある。

牛疫は、牛などに高い死亡を起こすウイルス病で、歴史的に大きな被害を出してきたが、国際的な取り組みにより世界的に撲滅された(根絶が宣言された数少ない動物の病気)。

牛肺疫は、牛の肺・胸膜を侵す細菌性の伝染病である。

いずれも家畜伝染病(法定伝染病)に指定されている。

これら家畜伝染病は、いったん発生すると畜産に甚大な被害を与え、人にうつるものもあるため、早期発見・早期届出と、国・自治体による迅速な防疫措置が何より重要である。

(参考:法定伝染病28疾病には、ほかに口蹄疫・CSF〔豚熱〕・ASF〔アフリカ豚熱〕・ブルセラ症・結核・ヨーネ病・ニューカッスル病なども含まれる。

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