腎臓のはたらき総整理―役割・尿素・再吸収・血圧・上皮

腎臓は尿を作るだけでなく、体液量・浸透圧・電解質・pH(酸塩基)を調節し、血圧調節やホルモン分泌も担う多機能臓器。タンパク質代謝で生じたアンモニアが肝臓で尿素になり腎臓で排泄される流れ、ネフロン(腎小体+尿細管)でのろ過と部位別の再吸収、血圧を上げる/下げるホルモン、腎不全で起こる代謝性アシドーシス、泌尿器の上皮組織までを横断的に復習する。

1腎臓の6つの役割と、障害されたときの症状

腎臓は①尿の生成(老廃物排泄)②体液量・浸透圧の調節 ③電解質(Na・K・Ca等)の調節 ④酸塩基平衡(pH)の調節 ⑤血圧の調節 ⑥ホルモンの分泌・活性化(EPO・レニン・活性型ビタミンD)を担う多機能臓器。機能が低下すると浮腫・尿路症状・高血圧・心不全などが現れる。

腎臓は「尿を作る臓器」というイメージが強いが、実際には尿の生成・体液量と浸透圧の調節・電解質の調節・酸塩基平衡の調節・血圧の調節・ホルモンの分泌と活性化という6つの役割を担う多機能臓器である。機能が低下するとこれらすべてに影響が及び、浮腫・尿路症状・高血圧・心不全などが現れる。

腎臓(kidney)は腹腔内に左右1対ある臓器で、「尿を作る臓器」というイメージが強いが、実際には体液の恒常性(ホメオスタシス)を支える多くの役割を一手に担っている。

【①尿の生成】血液をろ過して尿素・クレアチニンなどの老廃物を尿として体外へ排泄する。

【②体液量・浸透圧の調節】水分と塩分の再吸収・排泄を調節し、体液量と浸透圧を一定に保つ。

【③電解質の調節】Na⁺・K⁺・Ca²⁺・リンなどの電解質バランスを調整する。

【④酸塩基平衡(pH)の調節】水素イオン(H⁺)の排泄や重炭酸イオンの再吸収を通じて血液のpHを保つ。

【⑤血圧の調節】レニンを分泌し、レニン−アンジオテンシン−アルドステロン系(RAAS)を介して血圧を調節する。

【⑥ホルモンの分泌・活性化】エリスロポエチン(造血)を分泌し、ビタミンDを活性型に変換する。

腎機能が低下すると、これらすべてに影響が及ぶ。

水・Naが貯留すると浮腫が、尿の異常で尿路症状(多尿・乏尿・血尿など)が、RAAS過活性で高血圧が、体液量増加や高血圧の持続で心不全が起こり得る。

2老廃物のゆくえ―タンパク質からアンモニア、そして尿素へ

タンパク質→アミノ酸→(分解で)アンモニアが生じる。アンモニアは毒性が強いため、肝臓の尿素回路(オルニチン回路)で無害な尿素に変換され、腎臓でろ過されて尿として排泄される。『アンモニアを尿素に変えるのは肝臓、それを尿に出すのは腎臓』という分業がポイント。

食事などで取り込まれたタンパク質は、消化・代謝の過程でアミノ酸に分解される。

アミノ酸がさらに分解(脱アミノ)されると、不要になったアミノ基から「アンモニア(NH₃)」が生じる。

アンモニアは神経毒性が強く、体内に溜まると危険な物質である。

そこで肝臓が、門脈を通って運ばれてきたアンモニアを「尿素回路(オルニチン回路)」で毒性の低い『尿素』に変換する。

尿素回路は基本的に肝臓にのみ存在する。

生成された尿素は血流に乗って腎臓へ運ばれ、糸球体でろ過されて尿の成分として排泄される。

つまり『アンモニアを尿素に変えるのは肝臓』『尿素を血液から分けて尿に排泄するのは腎臓』という分業になっている。

肝不全ではアンモニアを尿素に変換できず高アンモニア血症(肝性脳症)に、腎不全では尿素を排泄できず血中尿素窒素(BUN)が上昇する。

3ネフロンの構造―腎小体と尿細管

腎臓の機能単位がネフロン。ネフロン=腎小体+尿細管。腎小体は『糸球体+ボーマン嚢』からなり、ここで血液をろ過する。尿細管は近位尿細管→ヘンレループ(ヘンレのループ)→遠位尿細管→集合管と続き、必要なものを再吸収して尿を完成させる。

腎臓は無数の「ネフロン(nephron=腎単位)」が集まってできており、ネフロンが尿生成の最小単位である。

ネフロンは大きく『腎小体』と『尿細管』の2つの部分からなる。

【腎小体(マルピーギ小体)】毛細血管が毛糸玉のように集まった『糸球体』と、それを包む袋状の『ボーマン嚢』からなる。

糸球体で血液がろ過され、ろ過された液がボーマン嚢に集まる。

【尿細管】腎小体に続く1本の管で、流れる順に『近位尿細管 → ヘンレループ(ヘンレのループ/ヘンレのわな)→ 遠位尿細管 → 集合管』と続く。

尿細管を流れる間に、必要な水・電解質・栄養素が血液側へ再吸収され、不要なものは尿として残されていく。

複数のネフロンの集合管が合流し、腎盂(じんう)→尿管→膀胱→尿道という経路で尿が体外へ運ばれる。

4ろ過と再吸収―原尿から尿へ、部位ごとの再吸収

糸球体でろ過された液を『原尿』という。原尿には血球とタンパク質は含まれない(大きすぎてろ過されない)。近位尿細管でグルコース・アミノ酸・ビタミンはほぼ100%再吸収、水・Na⁺・K⁺は約3分の2〜8割が再吸収される。残りが尿として濃縮されていく。

糸球体では、血液から血球(赤血球など)と大きなタンパク質を除いた液体がろ過される。

このろ過直後の液を『原尿(げんにょう)』という。

原尿は1日に大量に作られるが、その大部分は尿細管で再吸収されるため、実際に排泄される尿はごくわずかになる。

【近位尿細管】グルコース(ブドウ糖)・アミノ酸・ビタミンは、体に必要な栄養素なのでほぼ100%再吸収される(健常なら尿に糖は出ない)。

水・Na⁺・K⁺などはおよそ3分の2〜8割がここで再吸収される。

【ヘンレループ】水やNa⁺・Cl⁻・Ca²⁺などが再吸収され、尿の濃縮にかかわる対向流系を形成する。

【遠位尿細管・集合管】残った水・Na⁺の再吸収が、アルドステロンや抗利尿ホルモン(バソプレシン)などのホルモンによって微調整される。

集合管でバソプレシンが水の再吸収を促進すると尿が濃縮される。

こうして原尿から必要なものが回収され、不要な老廃物が濃縮された『尿』が完成する。

5血圧を上げるホルモン・下げるホルモンと、アルドステロンの電解質調節

血圧を上げる:アドレナリン・ノルアドレナリン・アンジオテンシンII(レニン系)・バソプレシン(ADH)・アルドステロン。血圧を下げる:ANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)。アルドステロンは副腎『皮質』のホルモンで、尿細管でNa⁺(と水)を再吸収しK⁺を排出する(※副腎『髄質』のアドレナリンとは別物)。

【血圧を上げる方向に働くもの】・アドレナリン/ノルアドレナリン(副腎髄質・交感神経)…血管を収縮させ心拍出量を上げる。

・アンジオテンシンII(レニン−アンジオテンシン系)…強力に血管を収縮させる。

・バソプレシン(ADH=抗利尿ホルモン、下垂体後葉)…腎での水再吸収を増やし血液量を増やす。

・アルドステロン(副腎皮質)…Naと水を保持して血液量を増やす。

【血圧を下げる方向に働くもの】・ANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)…心房の圧が上がると分泌され、腎での利尿(Naと水の排泄)を促して血圧を下げる。

【アルドステロンの電解質調節】アルドステロンは副腎『皮質』(球状帯)から分泌され、腎臓の遠位尿細管・集合管で『Na⁺の再吸収を促進し、K⁺の排出を促進する』。

Naとともに水も保持されるため血液量が増えて血圧が上がる。

※よくある誤りとして『アドレナリン=アルドステロン』があるが、アドレナリンは副腎『髄質』、アルドステロンは副腎『皮質』のまったく別のホルモンである。

Na再吸収・K排出を担うのはアルドステロン。

6腎臓が分泌・活性化するホルモンと、その欠乏症

腎臓は3つのホルモンに関わる。①エリスロポエチン(EPO)=赤血球産生を促進→欠乏で腎性貧血。②レニン=RAASを介して血圧を上げる。③活性型ビタミンD(カルシトリオール)=Ca吸収を促進→欠乏でくる病・骨軟化症。

腎臓は『内分泌器官』としての顔も持ち、次の3つのホルモンに深く関わる。

【①エリスロポエチン(EPO)】骨髄に働きかけて赤血球(RBC)の産生を促進する造血ホルモン。

慢性腎不全でEPO産生が低下すると赤血球が作られにくくなり、『腎性貧血』が生じる(動悸・息切れ・易疲労感・粘膜蒼白)。

【②レニン】腎臓の傍糸球体細胞から分泌される酵素で、レニン−アンジオテンシン−アルドステロン系(RAAS)の起点となり、結果的に血圧を上昇させる。

【③活性型ビタミンD(1,25-(OH)₂-D、カルシトリオール)】肝臓で25-OH-DとなったビタミンDを、腎臓が活性型に変換する。

活性型ビタミンDは小腸でのカルシウム(Ca)吸収を促進し、骨の形成を支える。

活性型ビタミンDが欠乏すると、骨の石灰化(ミネラル化)がうまくいかず、成長期では『くる病』、骨の成長が止まった後では『骨軟化症』が起こり得る。

腎不全ではビタミンDが活性化できず、低カルシウム血症や腎性骨異栄養症につながる。

7酸塩基平衡(pH)の調節と、腎不全での代謝性アシドーシス

腎臓は水素イオン(H⁺)を尿中に排泄し、重炭酸イオン(HCO₃⁻)を再吸収して血液のpHを一定(弱アルカリ性、約7.4)に保つ。腎機能が低下するとH⁺を十分に排泄できず体内に酸が溜まり、体液が酸性に傾く『代謝性アシドーシス』になる。

血液のpHは約7.35〜7.45の狭い範囲に保たれており、これが崩れると全身の細胞機能に支障が出る。

腎臓は肺とともにこのpH調節(酸塩基平衡)の要を担う。

腎臓は『余分な水素イオン(H⁺)を尿中に排泄する』『重炭酸イオン(HCO₃⁻=アルカリ性の緩衝物質)を再吸収・再生する』ことで、体が酸性に傾きすぎないよう調整している。

腎機能が正常なら、代謝で生じる酸(H⁺)はきちんと尿に捨てられ、pHは保たれる。

しかし腎機能が低下すると、H⁺をうまく排泄できず体内に酸が蓄積し、またHCO₃⁻も失われるため、体液が酸性側に傾く『代謝性アシドーシス』が生じる。

(メモにあった『腎機能が低下するとH⁺がなくなる』は逆で、正しくは『排泄できずH⁺が溜まる→アシドーシス』である。

)代謝性アシドーシスでは、呼吸を速く深くして二酸化炭素(CO₂)を吐き出し、酸を減らそうとする代償(クスマウル呼吸)がみられることがある。

8泌尿器・消化管などの上皮組織の種類

上皮は場所により形が違う。移行上皮=膀胱・尿管(伸び縮みする)。単層立方上皮=腎尿細管。単層円柱上皮=胃・腸などの消化管。重層扁平上皮=皮膚・口腔・食道(物理的な刺激に強い)。

上皮組織は体や臓器の表面・内腔をおおう組織で、置かれた場所の役割に応じて形が異なる。

【移行上皮】膀胱・尿管・腎盂などにみられる。

尿の量に応じて伸び縮みできるのが特徴で、膀胱が空のときは厚く、尿が溜まると薄く引き伸ばされる。

【単層立方上皮】サイコロ状の細胞が1層に並ぶ。

腎臓の尿細管などにみられ、再吸収や分泌にかかわる。

【単層円柱上皮】背の高い円柱状の細胞が1層に並ぶ。

胃・小腸・大腸などの消化管の粘膜にみられ、吸収・分泌を行う。

【重層扁平上皮】平たい細胞が何層も重なる。

皮膚の表皮・口腔・食道など、こすれなどの物理的刺激を受ける部位にみられ、機械的な保護にすぐれる。

このように、伸縮が必要な膀胱は移行上皮、吸収を行う腸は単層円柱上皮、刺激に耐える皮膚は重層扁平上皮、というように『場所=役割=上皮の形』が結びついている。

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