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細菌性・ウイルス性食中毒と公衆衛生(浄水・疫学用語・BSL)

細菌性食中毒は、菌が腸管内で増えて発症する『感染型』(サルモネラ・カンピロバクター・腸炎ビブリオ)と、毒素によって発症する『毒素型』(食物内毒素型の黄色ブドウ球菌・ボツリヌス菌、生体内毒素型の腸管出血性大腸菌・ウェルシュ菌)に分けられる。少量で感染し冬季に多いノロウイルス、食中毒予防の三原則(つけない・増やさない・やっつける)、水道水の浄水処理(凝集沈殿→ろ過→塩素消毒)、疫学用語(有病率・罹患率、エンデミック・エピデミック・パンデミック)、そして病原体の危険度に応じたバイオセーフティレベル(BSL)までを、図ではなく文章で読んで理解する。

1食中毒の全体像 ― 感染型と毒素型

要点細菌性食中毒は、原因菌が食品や腸管内で増殖して発症する『感染型』と、菌がつくる毒素によって発症する『毒素型』に大別される。毒素型はさらに、食品中で毒素がつくられる『食物内毒素型』と、腸管内で毒素がつくられる『生体内毒素型』に分けられる。

食中毒には、細菌によるもの、ウイルスによるもの、自然毒(動物性・植物性)やカビ毒によるものなど、いくつかの原因がある(自然毒・カビ毒については別レッスンで扱う)。

このレッスンでは、細菌性食中毒とウイルス性食中毒を中心に整理する。

細菌性食中毒は、大きく『感染型』と『毒素型』の2つに分けて理解すると整理しやすい。

感染型は、原因菌そのものが食品とともに体内に入り、腸管内でさらに増殖することで発症するタイプである。

毒素型は、菌が増殖する過程でつくり出す『毒素』によって発症するタイプで、さらに、①食品の中であらかじめ毒素がつくられる『食物内毒素型』と、②菌が腸管内に入ってから毒素をつくる『生体内毒素型』に分けられる。

この分類を押さえておくと、それぞれの食中毒の潜伏期間の違いや予防のポイントが理解しやすくなる。

2細菌性食中毒 ― 感染型(サルモネラ・カンピロバクター・腸炎ビブリオ)

要点感染型食中毒の代表は、サルモネラ属菌(卵・食肉)、カンピロバクター(鶏肉の加熱不足)、腸炎ビブリオ(生の魚介類、塩分を好む)。いずれも原因菌そのものが腸管内で増殖して発症する。

感染型食中毒の代表的な原因菌を3つ挙げる。

サルモネラ属菌は、卵や食肉(とくに鶏肉)に付着していることが多く、加熱不足の卵料理・食肉で食中毒を起こす。

発熱・腹痛・下痢などの症状が出る。

カンピロバクターは、鶏肉に付着していることが多い菌で、加熱不足の鶏肉(鶏刺し・鶏たたきなど)が主な原因になる。

国内の細菌性食中毒の中でも発生件数が多い原因菌の1つである。

腸炎ビブリオは、海水中に生息し、塩分を好む性質をもつ菌で、生の魚介類(刺身・寿司など)の食中毒の原因になる。

真水や加熱に弱いため、調理器具の洗浄や十分な加熱が予防になる。

これらはいずれも、原因菌自体が食品とともに体内に入り、腸管内でさらに増殖することで症状を起こす『感染型』の食中毒である。

3細菌性食中毒 ― 毒素型(黄色ブドウ球菌・ボツリヌス菌など)

要点食物内毒素型の代表は黄色ブドウ球菌(おにぎり等、手指の傷から)とボツリヌス菌(真空パック食品・はちみつ、神経毒)。生体内毒素型の代表は腸管出血性大腸菌(O157等、ベロ毒素)とウェルシュ菌(大量調理のカレー等)。

毒素型食中毒のうち、食品の中であらかじめ毒素がつくられる『食物内毒素型』の代表は、黄色ブドウ球菌とボツリヌス菌である。

黄色ブドウ球菌は、手指の傷やのどなどに存在することがある菌で、おにぎりや弁当など、人の手で調理された食品を通じて毒素(エンテロトキシン)が食品中につくられる。

この毒素は熱に強く、加熱しても分解されにくい。

ボツリヌス菌は、酸素の少ない環境(真空パック食品、缶詰、はちみつなど)で増殖し、神経毒素(ボツリヌス毒素)をつくる。

この毒素は非常に強力な神経毒で、呼吸筋麻痺など重篤な症状を起こしうる。

乳児にはちみつを与えてはいけない理由も、乳児ボツリヌス症を防ぐためである。

一方、菌が腸管内に入ってから毒素をつくる『生体内毒素型』の代表は、腸管出血性大腸菌(O157など、ベロ毒素をつくり出血性大腸炎や溶血性尿毒症症候群を起こすことがある)と、ウェルシュ菌(カレーやシチューなど大量に調理し常温で放置された料理で増殖しやすい)である。

4ウイルス性食中毒 ― ノロウイルス

要点ノロウイルスは、少ないウイルス量(100個程度)でも感染するほど感染力が強く、冬季(11月〜3月)に多発するウイルス性食中毒の代表。潜伏期間は24〜48時間で、嘔吐・下痢・腹痛・発熱がみられる。中心温度85〜90℃で90秒以上の加熱で失活する。

ウイルス性食中毒の代表がノロウイルスによるものである。

ノロウイルスは非常に感染力が強く、わずか100個程度という少ないウイルス量でも感染が成立するとされる。

潜伏期間(感染してから発症するまでの期間)は24〜48時間で、吐き気・おう吐・下痢・腹痛、37〜38℃程度の発熱などの症状がみられる。

感染性胃腸炎・食中毒は年間を通じて発生するが、ノロウイルスによるものはとくに11月から3月にかけての冬の時期に多発する。

ノロウイルスは、中心温度85〜90℃で90秒以上加熱することで感染性を失う(失活する)。

カキなどの二枚貝は、ノロウイルスを体内に蓄積しやすいため、十分な加熱が予防のポイントになる。

また、感染者の便やおう吐物にも大量のウイルスが含まれ、人から人への二次感染(接触感染・飛沫感染)も起こりやすい点が、細菌性食中毒との大きな違いである。

5食中毒予防の三原則

要点食中毒予防の三原則は、①つけない(食品に菌をつけない=手洗い・器具の使い分け)、②増やさない(低温保存で菌の増殖を抑える)、③やっつける(十分な加熱で菌・ウイルスを死滅させる=中心温度75℃・1分以上が目安)。

食中毒を防ぐための基本的な考え方として、厚生労働省などが示しているのが『食中毒予防の三原則』である。

①つけない:食品に菌をつけないことを意味する。

調理前後の手洗いを徹底する、生肉・生魚と他の食品で調理器具(まな板・包丁)を使い分ける、といった対策が含まれる。

②増やさない:食品についた菌を増やさないことを意味する。

多くの菌は低温で増殖が抑えられるため、購入した生鮮食品はできるだけ早く冷蔵・冷凍保存する。

③やっつける:食品についた菌やウイルスを死滅させることを意味する。

多くの細菌・ウイルスは加熱によって死滅するため、とくに肉料理は中心部の温度が75℃で1分以上になるよう、十分に加熱することが目安とされる。

この三原則は、動物病院での給餌・調理環境の衛生管理を考えるうえでも基本になる考え方である。

6水道水の浄水処理

要点標準的な浄水処理は、①凝集沈殿(凝集剤で濁りをフロック状に固めて沈める)→②ろ過(砂層等に通して濁りを取り除く)→③塩素消毒、の順で行われる。この工程を経ることで、水質基準に適合した安全な水道水がつくられる。

私たちが利用する水道水は、川や湖などの原水を、浄水場でいくつかの工程を経て処理することでつくられている。

標準的な浄水処理(急速ろ過方式)の工程は、次の順序で行われる。

①凝集沈殿:原水に凝集剤を加えて混ぜることで、水中の濁りの粒子を大きな塊(フロック)に固め、沈殿させて取り除く。

②ろ過:沈殿で取りきれなかった細かい濁りを、砂などの層に通すことで、さらにきれいに取り除く。

③消毒:ろ過を終えた水に塩素剤を加えて消毒し、病原微生物を殺菌する。

この『凝集沈殿 → ろ過 → 消毒』という順序を経ることで、水質基準に適合した安全な水道水が安定してつくられ、家庭や施設に送られている。

7疫学用語 ― 有病率・罹患率・流行の規模

要点有病率は、ある一時点で疾病をもっている人の割合。罹患率は、一定期間に新しく発症した人の割合。流行の規模は、狭い範囲でポツポツ発生するエンデミック、急速に広がるエピデミック、世界的規模に広がるパンデミックの順に大きくなる。

感染症・疾病の広がりを数値でとらえるための用語(疫学用語)を整理する。

有病率は、ある一時点において、その疾病をもっている人(有病者)が、集団の中にどれだけの割合でいるかを示す指標である。

有病期間が長く、致命率が低い慢性疾患の実態把握に向く。

罹患率は、ある一定期間に、新しくその疾病を発症した人がどれだけいるかを示す指標である。

有病期間が短い急性疾患(感染症など)の実態把握に向く。

『有病率=ある時点での患者の割合』『罹患率=一定期間の新規発症の割合』と整理して覚えるとよい。

また、感染症の流行の規模を表す言葉にも段階がある。

エンデミックは、特定の地域で、ある程度の患者数が継続的にみられる状態(地域的な流行)。

エピデミックは、正常な範囲を明らかに超えて、地域や社会に急速に感染が広がる状態。

パンデミックは、エピデミックがさらに世界的な規模(複数の大陸)に広がった状態で、最も規模が大きい。

8バイオセーフティレベル(BSL)

要点バイオセーフティレベル(BSL)は、病原体の危険度(人や動物への病原性、伝播のしやすさ、有効な治療法の有無)に応じて、BSL1(低リスク)からBSL4(最も危険)まで4段階に分けた基準。レベルが上がるほど、安全キャビネットの使用など、より厳重な取り扱い・施設基準が求められる。

病原体は、その危険度に応じて『バイオセーフティレベル(BSL)』という基準で4段階に分類されている。

BSL1は、人や動物に重篤な疾患を起こす可能性が低い病原体を扱うレベルで、通常の微生物実験室での取り扱いが基本となる。

BSL2は、人や動物に病原性はあるが、重大な災害となる可能性が低い病原体を扱うレベルで、国際バイオハザード標識の表示、施錠可能な部屋、保護衣の着用などが求められる。

BSL3は、感染すると通常重篤な疾病を起こすが、個体から個体への伝播の可能性が低い病原体を扱うレベルで、封じ込め実験室とし、操作には安全キャビネット(生物学的安全キャビネット)などの一次封じ込め装置を使用することが必須となる。

BSL4は、重篤な疾病を起こし、かつ個体間の伝播が容易で、有効な治療法・予防法が通常得られない、最も危険な病原体を扱うレベルである。

レベルが上がるほど、病原体の危険度が高く、安全キャビネットの使用や施設の隔離性など、より厳重な管理が求められる。

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