遺伝形式(優性・劣性・伴性・限性・母系)

遺伝のしかた(遺伝形式)には、いくつかの型がある。常染色体上の遺伝子による遺伝は性別に関係なく現れ、性染色体上の遺伝子による遺伝(伴性遺伝)は性別と関係する。1つの異常で発症する優性(顕性)遺伝と、両方の遺伝子に異常がそろって発症する劣性(潜性)遺伝、血友病のような伴性遺伝、片方の性にだけ現れる限性遺伝、ミトコンドリアによる母系遺伝を整理する。

1常染色体と性染色体・対立遺伝子

染色体には、性別に関係しない『常染色体』と、性別を決める『性染色体』(哺乳類ではX・Y)がある。相同染色体の同じ位置にある一対の遺伝子を対立遺伝子(アレル)といい、2つが同じならホモ接合体、異なればヘテロ接合体という。

染色体は性別に関係しない常染色体と、性別を決める性染色体(雌XX・雄XY)に分かれ、性染色体上の遺伝は伴性遺伝として性別と関係する。相同染色体の同じ遺伝子座にある一対の対立遺伝子が同じならホモ接合体、異なればヘテロ接合体となる。

体の細胞には、父由来と母由来の染色体が対(ペア)になって入っている。

染色体は大きく2種類に分けられる。

常染色体は、性別の決定に直接関わらない染色体で、ここにある遺伝子による遺伝は、原則として雌雄(性別)に関係なく現れる。

性染色体は、性別を決める染色体で、哺乳類ではX染色体とY染色体がある(雌はXX、雄はXY)。

性染色体上の遺伝子による遺伝は、性別と関係して現れることがある(後述の伴性遺伝)。

対になった相同染色体の、同じ位置(遺伝子座)にある一対の遺伝子を『対立遺伝子(アレル)』という。

2つの対立遺伝子が同じタイプならその個体を『ホモ接合体(同型接合体)』、異なるタイプなら『ヘテロ接合体(異型接合体)』という。

この『ホモかヘテロか』が、優性・劣性の発症を理解する鍵になる。

2優性(顕性)遺伝と劣性(潜性)遺伝

ヘテロ接合体(片方だけ異常)でも形質が現れるものを優性(顕性)、両方の遺伝子に異常がそろった(ホモ接合)ときだけ現れるものを劣性(潜性)という。優性遺伝性疾患は一方の異常で発症、劣性遺伝性疾患は両方の異常がそろって初めて発症する。

対になった2つの対立遺伝子のうち、片方だけ(ヘテロ接合体)でも表に現れる形質を『優性(顕性)』、両方がそろわないと表に現れない(隠れる)形質を『劣性(潜性)』という。

ここで大切なのは、『劣性(潜性)』は“劣っている”という意味ではなく、“表に現れにくい(隠れている)”という意味だということである。

最近は誤解を避けて、優性を『顕性』、劣性を『潜性』とも呼ぶ。

これを病気にあてはめると、優性(顕性)遺伝性疾患は、対立遺伝子のどちらか一方に異常があるだけ(ヘテロ接合体)で発症する。

一方、劣性(潜性)遺伝性疾患は、両方の対立遺伝子に異常がそろった(ホモ接合体になった)ときに初めて発症する。

片方だけに異常をもつ個体は、発症しないが異常な遺伝子を伝える『保因者(キャリア)』となる。

そのため、保因者どうしをかけ合わせると、一定の確率(常染色体潜性では約1/4)で発症する子が生まれる。

3伴性遺伝(性染色体上の遺伝子による遺伝)

性染色体(おもにX染色体)上の遺伝子による遺伝を伴性遺伝という。血友病はX染色体上の劣性遺伝子による代表例。雄はX染色体が1本しかないため、その1本に異常があると(保因者になれず)発症しやすい。

性染色体の上にある遺伝子によって起こる遺伝を『伴性遺伝(はんせいいでん)』という。

多くはX染色体上の遺伝子による遺伝(X連鎖遺伝)である。

代表例が血友病で、X染色体上の劣性(潜性)遺伝子による病気である。

ここで雌雄の差が出る。

雌は性染色体がXXと2本あるため、片方のX染色体に異常があっても、もう片方の正常なXが補い、発症せずに保因者となることが多い。

一方、雄は性染色体がXYで、X染色体が1本しかない。

そのため、その1本のXに異常な遺伝子があると、補う相手がおらず、そのまま発症してしまう。

こうして、X連鎖劣性の病気(血友病など)は雄に多く現れる、という特徴が生じる。

これが『性別に関係する遺伝=伴性遺伝』の典型である。

(常染色体上の遺伝は性別に関係なく現れるのと対照的である。

4限性遺伝と従性遺伝

限性遺伝は、ある形質が雌雄のどちらか一方の性にだけ現れる遺伝(例:一方の性にしかない器官に関わる形質など)。従性遺伝は、同じ遺伝子型でも雌雄で優性・劣性の出方(現れやすさ)が変わる遺伝。どちらも性と関わるが、伴性遺伝とは区別される。

性と関わる遺伝には、伴性遺伝のほかにも区別すべきものがある。

限性遺伝(げんせいいでん)は、ある形質が雌雄のうち一方の性にのみ現れる遺伝である。

たとえば、その性にしか存在しない器官や機能に関わる形質などがこれにあたる。

遺伝子は両方の性がもっていても、形質として表に出るのは片方の性だけ、という点が特徴である。

従性遺伝(じゅうせいいでん)は、同じ遺伝子型をもっていても、雌雄によってその形質の現れやすさ(優性として出るか劣性として出るか)が変わる遺伝である。

性ホルモンなどの影響で、同じ遺伝子でも雄では現れやすく雌では現れにくい(あるいはその逆)といったことが起こる。

これらは『性染色体上にあるかどうか』で定義される伴性遺伝とは異なり、形質の“現れ方”が性によって変わる遺伝として区別される。

用語の聞き分けとして、『伴性=性染色体上の遺伝子による』『限性=一方の性にだけ現れる』『従性=性で優劣の出方が変わる』と整理しておくとよい。

5ミトコンドリア遺伝(母系遺伝)

ミトコンドリアは独自のDNA(mtDNA)をもつ。受精のとき、精子のミトコンドリアは失われ、卵子のミトコンドリアだけが子へ受け継がれる。そのため、ミトコンドリアが関わる遺伝は母親からのみ伝わる『母系遺伝』になる。

遺伝情報は、核の中の染色体だけにあるのではない。

細胞内でエネルギーをつくる小器官『ミトコンドリア』も、独自のDNA(ミトコンドリアDNA=mtDNA)をもっている。

受精のときには、卵子に精子が入るが、精子側のミトコンドリアは受精卵が育つ過程で失われ(分解され)、卵子(母親)由来のミトコンドリアだけが子へ受け継がれる。

そのため、ミトコンドリアDNAが関わる遺伝は、父親からは伝わらず、母親からのみ子へ伝わる。

これを『母系遺伝(母性遺伝)』という。

母系遺伝では、母親がその性質をもっていれば、息子・娘の性別に関係なくすべての子に伝わりうるが、父親がもっていても子には伝わらない、という特徴がある。

まとめると、遺伝形式には、常染色体性(性別に関係なく現れる)・伴性(性染色体上)・限性/従性(性で現れ方が変わる)・母系(ミトコンドリアによる)などがあり、『どの染色体(または小器官)の、どんな遺伝子によるか』で整理できる。

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