発情・排卵の型と季節繁殖

動物の繁殖のしかたは種によってちがう。発情が年に1回か何度もくるか(単発情・多発情)、排卵がひとりでに起こるか交尾の刺激で起こるか(自然排卵・交尾排卵)、繁殖期が日の長さで決まるか(長日繁殖・短日繁殖)を整理する。さらに、交尾排卵動物であるフェレットで、避妊していないと持続発情からエストロゲン過剰症(再生不良性貧血)を起こす重要な問題を学ぶ。

1発情周期と発情の型(単発情・多発情)

雌は発情周期にしたがって発情(交尾を受け入れる時期)をくり返す。1年に1回しか発情がこない動物を単発情動物、繁殖期の間に何度も発情がくる動物を多発情動物という。イヌは年に1〜2回(単発情に近い)、ネコは多発情。

発情周期は卵胞の発育・排卵・黄体形成をくり返し、雄を受け入れる時期が発情。発情がくる頻度で、年に1回だけの単発情動物(例:イヌ)と、繁殖期に何度もくり返す多発情動物(例:ネコ)に分けられる。

雌の動物は、卵胞の発育・排卵・黄体形成といったホルモンの変化を周期的にくり返す(発情周期=性周期)。

その中で、雄を受け入れて交尾できる時期を『発情(発情期)』という。

発情がどのくらいの頻度でくるかによって、動物は大きく2つに分けられる。

単発情動物は、1年に1回(または繁殖期に1回)しか発情がこない動物である。

多発情動物は、繁殖期のあいだに何度も発情をくり返す動物である。

たとえばネコは、繁殖期に交尾・妊娠しないと、発情を何度もくり返す多発情動物である。

イヌは年に1〜2回ほど発情がくるタイプで、ネコのように繁殖期に何度も発情をくり返すわけではない。

この『発情が年1回か、何度もくるか』が、発情の型を理解する出発点になる。

2排卵の型(自然排卵・交尾排卵)

排卵の起こり方には2種類ある。自然排卵は、交尾がなくても発情のなかでひとりでに排卵が起こる型(イヌ・モルモット・チンチラ・ウシ・ウマ・ブタ・ヒトなど)。交尾排卵(誘起排卵)は、交尾の刺激がきっかけで排卵が起こる型(ネコ・ウサギ・フェレットなど)。

排卵(卵子が卵巣から放出されること)が何によって起こるかにも、2つの型がある。

自然排卵(自発排卵)は、交尾があってもなくても、発情周期のなかで自然に(ひとりでに)排卵が起こる型である。

イヌ、モルモット、チンチラ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒトなど、多くの動物がこの型である。

自然排卵の動物では、排卵の前後の限られた時期に交尾できれば受精が成立する。

交尾排卵(誘起排卵)は、交尾という刺激がきっかけになって、はじめて排卵が起こる型である。

ネコ、ウサギ、フェレットなどがこの型である。

交尾排卵の動物では、交尾の刺激がないと排卵が起こらず、発情がなかなか終わらない(発情が続く)という特徴がある。

これは次のセクションのフェレットの問題につながる重要な点である。

『自然排卵=イヌ・ウシ・ウマ・ブタ・ヒトなど多数、交尾排卵=ネコ・ウサギ・フェレット』と覚える。

3季節繁殖(長日繁殖・短日繁殖)

決まった季節にだけ繁殖期がくる動物を季節繁殖動物という。多くは日の長さ(日照時間・光周期)に反応する。日が長くなる春〜夏に繁殖するのが長日繁殖動物(ウマ・ネコ・フェレット・ハムスターなど)、日が短くなる秋〜冬に繁殖するのが短日繁殖動物(ヒツジ・ヤギ・シカなど)。

1年中いつでも繁殖できる動物(ヒト・ウシ・ブタなど)もいれば、決まった季節にだけ繁殖期がくる動物もいる。

後者を季節繁殖動物という。

季節繁殖の引き金になる主な環境因子は、日の長さ(日照時間=光周期)である。

子が育ちやすい季節に出産できるよう、日長の変化を手がかりに繁殖期が調節されている。

長日繁殖動物は、日が長くなっていく春から夏にかけて繁殖期を迎える動物で、ウマ、ネコ、フェレット、ハムスターなどがこれにあたる。

短日繁殖動物は、日が短くなっていく秋から冬にかけて繁殖期を迎える動物で、ヒツジ、ヤギ、シカなどがこれにあたる。

短日繁殖動物は、妊娠期間を経て、子が育ちやすい春に出産するように繁殖期がずれている。

『長日=ウマ・ネコ・フェレット・ハムスター、短日=ヒツジ・ヤギ・シカ』と、代表動物で覚えるとよい。

4フェレットの持続発情とエストロゲン過剰症

フェレットは、季節繁殖の多発情動物で、かつ交尾排卵動物。避妊手術をしていない雌は、発情しても交尾(排卵刺激)がないと排卵せず発情が終わらず、エストロゲンが出続ける。このエストロゲン過剰が骨髄のはたらきを抑え、再生不良性貧血を起こして死に至ることがある。

フェレットは、日が長くなる春〜夏に繁殖期を迎える季節繁殖動物で、繁殖期に何度も発情する多発情動物であり、しかも交尾の刺激で排卵する交尾排卵動物である——という3つの性質をあわせもつ。

ここで問題になるのが、避妊手術(卵巣・子宮の摘出)をしていない雌フェレットである。

交尾排卵動物なので、発情しても交尾(排卵の刺激)がなければ排卵が起こらない。

すると発情が終わらず、卵巣から女性ホルモンであるエストロゲンが長期間にわたって出続けてしまう(持続発情)。

このエストロゲンの過剰・持続が、血球をつくる骨髄のはたらきを抑え込んでしまう(骨髄抑制)。

その結果、赤血球・白血球・血小板がつくれなくなる再生不良性貧血(汎血球減少)が起こり、貧血・出血・易感染から全身状態が悪化し、死に至ることがある。

これをフェレットのエストロゲン過剰症(高エストロゲン血症)という。

両側性の脱毛(左右対称の脱毛)もよくみられる。

(注:この病態の本質は『骨髄抑制による再生不良性貧血』であり、骨がもろくなる骨粗鬆症ではない点に注意する。

5フェレットの予防と看護

繁殖に使わない雌フェレットでは、エストロゲン過剰症を防ぐために避妊手術が勧められる。看護では、未避妊の雌で発情(外陰部の腫れ)が長く続いていないか、貧血・脱毛・元気消失などのサインに注意し、早期発見・受診につなげる。飼い主への予防の説明も重要。

フェレットのエストロゲン過剰症は、いったん進むと命に関わる重大な病気であるため、予防がとても重要である。

繁殖に使う予定のない雌フェレットでは、卵巣(・子宮)を摘出する避妊手術を行うことで、発情によるエストロゲンの過剰分泌そのものを起こさないようにするのが最も確実な予防となる。

(避妊済みでも、別の病気である副腎疾患でホルモン異常が起こることがあるため、脱毛などがみられたら受診が必要である。

)動物看護の場面では、未避妊の雌フェレットで、発情のサイン(外陰部の腫れ)が長期間続いていないか、エストロゲン過剰症を疑う貧血(粘膜蒼白)、左右対称の脱毛、元気・食欲の低下、出血傾向などがないかを観察し、早めに獣医師へつなげる。

飼い主に対しては、フェレット(とくに雌)では発情を放置するとエストロゲン過剰症で命に関わること、繁殖させないなら避妊手術が予防になることを、ふだんから伝えておくことが大切である。

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