上皮組織の種類と分布

上皮組織を層の数(単層・重層)と細胞の形(扁平・立方・円柱)で分類し、それぞれがどの臓器・部位に存在するかを整理する。移行上皮の伸縮性、多列上皮の外観、甲状腺コロイドとサイログロブリンの関係、移行上皮癌・扁平上皮癌についても学ぶ。

1上皮組織の分類の考え方

上皮組織は「層の数(単層 or 重層)」と「最表層の細胞の形(扁平・立方・円柱)」の組み合わせで名前がつく。多列上皮は見た目は多層に見えるが実際には一層である。移行上皮は伸縮に特化した特殊型。

上皮の名称は「層の数(単層・重層)」と「最表層の細胞の形(扁平・立方・円柱)」の掛け合わせで決まる。多列上皮は全細胞が基底膜に接する実質単層で核が多層に見え、移行上皮は尿路特有で伸縮に応じ細胞の形が変わる。

上皮組織(epithelium)は身体の表面・体腔の内面・管腔臓器の内面を覆う組織で、防御・分泌・吸収・感覚など多彩な機能を担う。

名称のルールは「層の数」「細胞の形」の掛け合わせである。

層の数は単層(細胞が一列に並ぶ)と重層(二層以上に積み重なる)に分けられる。

細胞の形は扁平(薄く平たい)・立方(正方形に近い)・円柱(縦長)の3種類がある。

例えば「単層扁平上皮」は一層の薄い細胞が並んだ上皮、「重層扁平上皮」は扁平な細胞が何層にも積み重なった上皮である。

ただし、多列上皮(pseudostratified epithelium)は全細胞が基底膜に接しているので実質は一層だが、細胞の高さが不揃いなため核が複数の高さに並び、多層に見える。

移行上皮(transitional epithelium)は伸縮に応じて細胞の形が変わる特殊型で、尿路に特有の上皮である。

2単層扁平上皮―体腔膜・肺胞・血管

単層扁平上皮は薄く物質が通過しやすいため、ガス交換や物質透過が必要な部位に存在する。肺胞壁・体腔膜(胸膜・腹膜・心膜)・毛細血管内皮がその代表。

単層扁平上皮(simple squamous epithelium)は、薄く平たい細胞が一層に並んだ上皮で、物質の拡散・透過に適した構造である。

肺胞(はいほう)の壁はこの上皮でできており、薄い壁を通してO₂とCO₂のガス交換が効率よく行われる。

体腔を覆う漿膜(しょうまく)—胸膜(きょうまく)・腹膜(ふくまく)・心膜(しんまく)—も単層扁平上皮であり、滑らかな表面が臓器の動きを助ける。

血管・リンパ管の内皮(内膜の最内層)も単層扁平上皮で構成される。

なお、体腔を覆う漿膜の単層扁平上皮は特別に「中皮(mesothelium)」とも呼ばれる。

3単層立方上皮―甲状腺濾胞とコロイド

単層立方上皮は甲状腺濾胞(ろほう)の壁を構成し、濾胞内腔にはコロイド(サイログロブリン)が貯蔵される。また腎尿細管・卵巣表面上皮にも存在する。

単層立方上皮(simple cuboidal epithelium)は高さと幅がほぼ等しい立方形の細胞が一層に並ぶ上皮で、分泌・吸収・物質輸送に関わる部位に分布する。

最も試験に出やすい例が甲状腺の濾胞上皮細胞(ろほうじょうひさいぼう)である。

甲状腺は多数の球状の「濾胞(ろほう)」からなり、その壁が単層立方上皮で覆われている。

濾胞の内腔には「コロイド」と呼ばれるゼリー状の分泌物が貯蔵されており、その主成分はサイログロブリン(thyroglobulin)という糖タンパク質である。

サイログロブリンは甲状腺ホルモン(T₃・T₄)の前駆体として蓄えられ、必要に応じて切り出されて血中に分泌される。

その他、腎臓の尿細管・卵巣表面・小さな腺管にも単層立方上皮が見られる。

4単層円柱上皮―消化管の分泌・吸収

単層円柱上皮は縦長の細胞が一層に並び、分泌と吸収の両方を担う。胃・小腸・大腸(直腸まで)の粘膜上皮として広く分布し、粘液分泌・栄養吸収を行う。

単層円柱上皮(simple columnar epithelium)は縦に長い円柱状の細胞が一層に並んだ上皮で、分泌や吸収を効率よく行うために表面積が大きくとられる。

胃の粘膜上皮は単層円柱上皮で構成され、表面の細胞が粘液(ムチン)を分泌して胃酸から粘膜を保護する。

小腸では単層円柱上皮の細胞に微絨毛(びじゅうもう)が発達した刷子縁(さっしえん)が形成され、消化・吸収表面積を最大化している。

大腸・直腸の粘膜も単層円柱上皮で、主に杯細胞(goblet cell)が粘液を分泌して便の通過を助ける。

子宮内膜・胆管・膵管なども単層円柱上皮が覆っている。

5多列上皮―気道の繊毛による異物排除

多列上皮(多列繊毛円柱上皮)は全細胞が基底膜に接する一層の上皮だが、核の高さが不揃いで多層に見える。気道(鼻腔・気管・気管支)に分布し、繊毛と粘液でほこり・細菌を排除する「粘液繊毛クリアランス」を担う。

多列上皮(pseudostratified epithelium)は、すべての細胞が基底膜に接しているため構造上は「単層」であるが、細胞の高さがまちまちで核が複数のレベルに並ぶため断面が多層に見える上皮である。

最も重要な例は気道に存在する「多列繊毛円柱上皮(pseudostratified ciliated columnar epithelium)」で、鼻腔・咽頭・気管・気管支の粘膜を覆っている。

この上皮の細胞は表面に繊毛(cilia)を持ち、散在する杯細胞が分泌した粘液とともに、吸い込んだほこり・細菌・異物を気管支側から咽頭方向へと運ぶ「粘液繊毛クリアランス(mucociliary clearance)」を形成する。

多列上皮の「多層に見えるが一層である」という特徴は、試験で頻出の判断ポイントである。

泌尿器系では精巣上体管(副睾丸)や精管の一部にも多列上皮が見られる。

6重層扁平上皮―皮膚(角化)と口腔・食道(非角化)

重層扁平上皮は物理的摩擦に強い上皮で、皮膚(角化型)・口腔・食道・膣(非角化型)に分布する。角化型では最表層の細胞が死んでケラチンを充填し、バリアを形成する。

重層扁平上皮(stratified squamous epithelium)は扁平な細胞が何層にも積み重なった上皮で、機械的ストレス(摩擦・圧迫)に対する高い耐久性を持つ。

皮膚の表皮は「角化重層扁平上皮(keratinized stratified squamous epithelium)」の代表例である。

皮膚では基底層で新しい細胞が生まれ、表層に押し上げられながら死んでケラチン(keratin)というタンパク質を充填し、最終的に角質(かくしつ)として落屑する。

この角化層が水分の蒸発を防ぎ、外来の病原体・化学物質を遮断するバリア機能を発揮する。

一方、口腔・食道・肛門・膣の上皮は「非角化重層扁平上皮(non-keratinized stratified squamous epithelium)」で、常に湿潤な環境に保たれる。

角化しないことで柔軟性が維持され、食物の通過や粘液による保護に適した環境が作られる。

7移行上皮―尿路の伸縮性

移行上皮(尿路上皮)は膀胱・腎盂・尿管に存在する特殊な上皮で、膀胱が空のときは厚く見え(重層状)、充満時は引き伸ばされて薄くなる。この伸縮性が最大の特徴。

移行上皮(transitional epithelium)は「尿路上皮(uroepithelium)」とも呼ばれ、尿路系—腎盂(じんう)・尿管・膀胱・近位尿道—を覆う特殊な上皮である。

その最大の特徴は伸縮性で、膀胱が空のときは細胞が積み重なって厚い多層状に見えるが、尿が充満して膀胱が伸展すると細胞が扁平に引き伸ばされ、全体が薄くなる。

最表層には「傘細胞(umbrella cell)」と呼ばれる大きなドーム型の細胞があり、尿の浸透を防ぐバリアとして機能する。

移行上皮は尿路特有の上皮であり、他の臓器には存在しない。

この上皮から発生する悪性腫瘍が「移行上皮癌(transitional cell carcinoma)」で、膀胱腫瘍の大多数を占める。

8上皮性悪性腫瘍(癌)―移行上皮癌と扁平上皮癌

上皮組織から発生する悪性腫瘍を「癌腫(carcinoma)」と呼ぶ。移行上皮癌は膀胱に多く血尿が主訴。扁平上皮癌は皮膚・口腔・食道・肺など重層扁平上皮や扁平上皮化生が起きやすい部位に発生する。

上皮組織から発生した悪性腫瘍を総称して「癌腫(がんしゅ、carcinoma)」と呼ぶ。

移行上皮(尿路上皮)癌(transitional cell carcinoma / urothelial carcinoma)は膀胱・腎盂・尿管の移行上皮から発生する悪性腫瘍で、血尿(多くは無症候性)や頻尿が主な症状となる。

イヌでは膀胱腫瘍の90%以上が移行上皮癌とされており、スコティッシュ・テリアやシェットランド・シープドッグで発生率が高い。

扁平上皮癌(squamous cell carcinoma, SCC)は重層扁平上皮や扁平上皮化生(正常上皮が扁平上皮に置き換わった状態)から発生する。

好発部位として、皮膚(特に色素の薄い露出部位)・口腔・食道・鼻腔・肺・肛門周囲・鉤爪床などが挙げられる。

ネコでは耳介・鼻面・まぶたなど白猫の露光部位に扁平上皮癌が好発し、紫外線暴露が主なリスク因子とされる。

腺癌(adenocarcinoma)は腺上皮(単層円柱上皮などが腺を形成した組織)から発生する悪性腫瘍で、胃・腸・乳腺・肺などに見られる。

理解できたら腕試し!
このテーマの確認テスト