ワクチンで防ぐ主な感染症

ワクチンは、致死率が高く重要な病気に備える『コアワクチン』と、生活環境に応じて選ぶ『ノンコアワクチン』に分けられる。犬・猫それぞれのコアワクチンの対象疾患、狂犬病をはじめとする法的・実務上のポイント、子犬子猫の接種計画や接種時の看護までを文章で理解する。

1ワクチンの基礎(コア/ノンコアと移行抗体)

コアワクチンは致死率が高く重要な病気に対するもので全頭に推奨、ノンコアは生活環境に応じて選ぶ。子犬・子猫は母親由来の移行抗体が切れる時期に合わせて複数回接種し、以後は定期的に追加接種する。

ワクチンは全頭に推奨されるコアワクチンと、地域・生活スタイルに応じて選ぶノンコアワクチンに分けられる。子犬・子猫は移行抗体が切れる時期に合わせて複数回接種し、その後も定期的に追加接種する。

ワクチンは、あらかじめ病原体(やその一部)を接種して免疫の記憶をつくり、本物の感染に備える予防法である。

ワクチンは、致死率が高く感染力も強い重要な病気に対する『コアワクチン』と、住んでいる地域や生活スタイルに応じて選ぶ『ノンコアワクチン』に分けられる。

コアワクチンはすべての犬・猫に接種が推奨される。

子犬・子猫は母親の初乳から移行抗体をもらって守られているが、これがあるうちはワクチンが効きにくいため、抗体が切れる時期に合わせて数週間おきに複数回接種する。

その後も、免疫を保つために定期的な追加接種(再接種)を行う。

2生ワクチンと不活化ワクチン

生ワクチンは弱毒化した『生きた』病原体を使い、細胞性免疫・液性免疫の両方を強く誘導して免疫が長持ちするが、まれに発症のリスクがあり、移行抗体に中和されやすい。不活化ワクチンは『死んだ』病原体や毒素を無毒化したトキソイドを使い、安全だが主に液性免疫で、効果が弱め・短めのため複数回接種やアジュバント(免疫増強剤)の添加が行われる。

ワクチンは、何を使うかによって生ワクチンと不活化ワクチンに大きく分けられる。

生ワクチンは、病原性を弱めた(弱毒化した)『生きた』病原体を使う。

体内で少し増えて自然の感染に近い反応を起こすため、細胞性免疫と液性免疫の両方を強く誘導でき、免疫の持続時間が長いのが利点である。

一方で、弱毒とはいえ生きているため、まれに感染・発症することがあり(免疫が弱い動物では注意)、また母親由来の移行抗体に中和されやすい(影響を受けやすい)。

不活化ワクチンは、死滅させた(不活化した)病原体や、毒素を無毒化したトキソイドを使う。

体内で増えないため安全性が高く発症の心配がないが、得られる免疫は主に液性免疫で、効果が弱め・短めになりやすい。

そのため、不活化ワクチンは複数回の接種が必要なことが多く、免疫反応を高める『アジュバント』という補助成分を加えたものもある(加えていないものもある)。

『生ワクチン=生きた弱毒・両方の免疫・長持ち・移行抗体の影響を受ける、不活化ワクチン=死んだ病原体やトキソイド・主に液性免疫・複数回/アジュバント』と整理して覚える。

3犬のコアワクチンで防ぐ病気

犬のコアは、犬ジステンパー(呼吸器・消化器・神経症状、致死率が高い)、犬パルボウイルス感染症(出血性の腸炎)、犬伝染性肝炎(犬アデノウイルス)。これらは混合ワクチンで予防する。

犬のコアワクチンが予防する代表的な病気には、次のものがある。

犬ジステンパーは、発熱・呼吸器症状・消化器症状に加え、進行すると神経症状を起こす、致死率の高いウイルス感染症である。

犬パルボウイルス感染症は、激しい嘔吐と血の混じった下痢(出血性腸炎)を起こし、とくに幼犬で重篤化しやすい。

環境抵抗性が強い。

犬伝染性肝炎は、犬アデノウイルスによる肝臓などの感染症である。

これらは、複数の病気をまとめて予防する混合ワクチンとして接種されることが多い。

4犬の狂犬病とノンコアワクチン

狂犬病は人を含むほぼすべての哺乳類に感染し、発症するとほぼ100%死亡する人獣共通感染症。日本では狂犬病予防法により、犬の登録と年1回の予防接種が義務づけられている。レプトスピラなどはノンコア。

狂犬病は、人を含むほとんどの哺乳類に感染し、発症するとほぼ100%が死亡する、きわめて重大な人獣共通感染症である。

日本では狂犬病予防法により、飼い犬の市区町村への登録と、年1回の狂犬病予防接種が義務づけられている(混合ワクチンとは別に接種する)。

そのほかのノンコアワクチンには、水や感染動物の尿を介して広がるレプトスピラ症や、咳を主症状とするケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)に関わるパラインフルエンザ・ボルデテラなどがある。

これらは、レジャーや地域・多頭飼育など、感染のリスクに応じて接種を検討する。

5猫のコアワクチンで防ぐ病気

猫のコアは、猫汎白血球減少症(猫パルボ)、猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペスウイルス)、猫カリシウイルス感染症の3つ。後者2つは猫の代表的なかぜ(猫上部気道感染症)の原因。

猫のコアワクチンが予防する代表的な病気は、次の3つである。

猫汎白血球減少症は、猫パルボウイルスによる感染症で、激しい嘔吐・下痢と白血球の著しい減少を起こし、致死率が高い。

猫ウイルス性鼻気管炎は猫ヘルペスウイルスによるもので、くしゃみ・鼻水・結膜炎などを起こす。

猫カリシウイルス感染症は、口内炎や舌の潰瘍、上部気道症状を起こす。

後者2つは、いわゆる『猫かぜ(猫上部気道感染症)』の主な原因であり、これら3つをまとめた3種混合ワクチンが猫のコアワクチンとして広く用いられる。

6猫のノンコアワクチン

猫白血病ウイルス(FeLV)感染症などはノンコア。屋外に出る猫や多頭飼育など、感染リスクの高い猫で接種を検討する。猫免疫不全ウイルス(FIV)など、生活環境に応じて判断する。

猫のノンコアワクチンには、猫白血病ウイルス(FeLV)感染症に対するものなどがある。

猫白血病ウイルスは、感染猫との接触(グルーミングや咬傷など)で広がり、免疫の低下や貧血・腫瘍などを起こす。

そのため、屋外に出る猫や、感染状況の分からない猫との接触がある猫、多頭飼育の環境などで接種が検討される。

完全に室内で飼われ、ほかの猫との接触がない猫では、必要性は相対的に低い。

このように、ノンコアワクチンはその猫の生活環境と感染リスクをふまえて、接種するかどうかを判断する。

7接種の実際と看護のポイント

接種前に健康状態を確認し、接種後はまれに起こるアレルギー反応(顔の腫れ・嘔吐・ぐったり、まれにアナフィラキシー)を観察する。接種証明・記録の管理、狂犬病の登録・毎年接種の確認も看護の役割。

ワクチン接種では、まず体調が良いかを確認する(発熱や体調不良時は延期を検討する)。

接種後は、まれにアレルギー反応が起こることがあるため、しばらくは様子を観察する。

顔(特に目や口のまわり)の腫れ、嘔吐、元気消失などがみられることがあり、まれに急激なアナフィラキシーを起こすこともあるため、接種直後の変化に注意する。

動物看護師は、接種の記録や接種証明書の管理、次回接種時期の案内を行う。

とくに狂犬病ワクチンは法的な義務であり、登録と毎年の接種が行われているかの確認も大切な役割である。

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