尿石症(尿結石の種類)

尿石症は、尿中の成分が結晶化し、やがて結石となって膀胱や尿道・尿管に詰まる病気。代表はストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)とシュウ酸カルシウムで、尿のpHや結晶の形、溶けるか・溶けないかが異なる。ほかにシスチン(六角形結晶・遺伝性)、尿酸アンモニウム(ダルメシアン・門脈シャント)など、結石の種類ごとの特徴と予防を学ぶ。

1尿石症とは(結晶から結石へ)

尿石症は、尿に溶けていた成分が結晶として析出し、それが集まって結石(石)になる病気。膀胱・尿道・尿管・腎臓にでき、尿道や尿管に詰まると排尿障害や尿路閉塞を起こす。尿のpHや濃さ、感染などが結晶のできやすさに影響する。

本文で扱う4種類の結石を、尿pH・溶解の可否・特徴で対比した一覧。ストルバイトだけが尿を酸性側にして内科的に溶かせ、他は外科的摘出や予防・原因管理が中心となる。

尿石症(尿路結石症)は、本来は尿に溶けているミネラルなどの成分が、何らかの条件で溶けきれずに結晶として現れ(析出し)、それが集まって固まり、結石(石)になる病気である。

はじめは顕微鏡でしか見えない細かい『結晶』だが、これが集まって大きくなると、目に見える『結石』となる。

結石は、腎臓・尿管・膀胱・尿道のどこにでもでき、とくに膀胱にできやすい。

結石が尿道や尿管に詰まると、おしっこが出せなくなる尿路閉塞となり、緊急事態になることがある。

症状としては、血尿、頻尿、排尿時の痛み(しぶり)、なかなか尿が出ない、といったものがみられる。

結晶・結石のできやすさには、尿のpH(酸性かアルカリ性か)、尿の濃さ(水分のとり方)、細菌感染、食事内容、体質(遺伝)などが関わる。

結石は種類によって性質が違うため、まず種類を見分けることが大切である。

2ストルバイト結石(リン酸アンモニウムマグネシウム)

ストルバイトはリン酸アンモニウムマグネシウムからなる結石で、犬・猫に最も多い。尿がアルカリ性に傾くとできやすく、尿路の細菌感染(ウレアーゼ産生菌)が関与することが多い。療法食や尿酸化剤で尿を酸性に近づけると溶かせる(内科的に溶解可能な)数少ない結石。

ストルバイト結石は、リン酸アンモニウムマグネシウム(リン酸マグネシウムアンモニウム)という成分からなる結石で、犬・猫の尿石症で最も多くみられる。

尿がアルカリ性(pHが高い)に傾くとできやすい。

とくに、尿素をアンモニアに分解して尿をアルカリ化するウレアーゼ産生菌(細菌)による尿路感染が引き金になることが多く、感染と関連が深い。

ストルバイトの大きな特徴は、療法食(マグネシウム・リンなどを制限し尿を酸性側にするフード)や尿酸化剤で尿を酸性に近づけることで、内科的に溶かせる(溶解できる)点である。

これは多くの結石が溶かせない中で例外的である。

ただし、感染が原因の場合は抗菌薬で感染を治療しないと再発しやすい。

尿道などに詰まって閉塞している場合は、まず閉塞の解除(緊急処置)が優先される。

3シュウ酸カルシウム結石

シュウ酸カルシウム結石は、ストルバイトと並んで多い結石。酸性〜中性の尿でできやすく、食事や尿酸化剤では溶かせない(内科的に溶解できない)ため、外科的な摘出が必要。再発しやすく、予防が重要。

シュウ酸カルシウム結石は、ストルバイトと並んで犬・猫に多い結石である。

とくに猫の尿管結石では、その大部分(98%以上ともいわれる)をシュウ酸カルシウムが占める。

ストルバイトとは反対に、尿が酸性〜中性のときにできやすい傾向がある。

最大の注意点は、シュウ酸カルシウム結石は食事療法や尿酸化剤などの内科治療では溶かせないことである。

そのため、症状を起こす結石は外科的に摘出する(取り出す)必要がある。

また再発しやすい結石でもあるため、摘出後も飲水を増やして尿を薄く保つ、適切な療法食を続けるなどの予防が重要になる。

(参考:尿沈渣でシュウ酸カルシウムの結晶は、封筒〔エンベロープ〕のような正八面体の形に見えることが多い。

4シスチン結石・尿酸アンモニウム結石(遺伝が関わる結石)

シスチン結石は六角形の結晶が特徴で、尿細管でのアミノ酸再吸収の遺伝的異常(シスチン尿症)により酸性尿でできる。尿酸アンモニウム結石はダルメシアンやブルドッグ(尿酸代謝の遺伝的特性)や、門脈体循環シャント・肝不全(高アンモニア血症)の犬にみられる。

結石の中には、体質(遺伝)が深く関わるものがある。

シスチン結石は、アミノ酸の一種シスチンからなる結石で、尿沈渣では特徴的な『六角形』の結晶として見える。

腎臓の尿細管でシスチンなどのアミノ酸をうまく再吸収できない遺伝的な異常(シスチン尿症)によって、尿中にシスチンが増えて、酸性尿で結石ができる。

尿酸アンモニウム(尿酸塩)結石は、尿酸の代謝に関わる体質によってできる。

代表的な好発犬種はダルメシアンで、ブルドッグなどにもみられ、尿酸トランスポーター遺伝子の特性が関与する。

また、門脈体循環シャント(PSS)や重度の肝不全がある犬では、肝臓でアンモニアや尿酸をうまく処理できず血中濃度が高くなるため、尿酸アンモニウム結石ができやすくなる。

これらの結石も基本的に内科的に溶かしにくく、原因(遺伝的体質・肝疾患)への対応と、低タンパク食・飲水管理などの予防・管理が中心になる。

5尿石症の予防と看護

尿石症の予防・管理の基本は、飲水を増やして尿を薄く保つこと(尿量を増やす)と、結石の種類に合わせた療法食。ストルバイトは溶解・尿pH管理、シュウ酸カルシウムなどは飲水と再発予防が中心。看護では排尿状態の観察と、閉塞(尿が出ない)の早期発見が重要。

尿石症の予防・再発防止で共通して大切なのは、飲水量を増やして尿を薄くし、結晶ができにくい状態を保つことである。

新鮮な水をいつでも飲めるようにする、ウェットフードを活用する、複数の水飲み場を用意するなどの工夫がある。

そのうえで、結石の種類に合わせた療法食を選ぶ。

ストルバイトでは尿を酸性側にして溶解・予防する食事、シュウ酸カルシウムでは尿を薄く保ち再発を防ぐ食事、というように使い分ける。

尿のpH管理が必要な結石もあるため、定期的な尿検査でpHや結晶の有無、再発をチェックする。

動物看護師は、排尿の回数・量・色(血尿の有無)、排尿時に痛がっていないか、トイレに行くのに尿が出ていないかを観察する。

とくに『何度もトイレに行くのに尿が出ない』ときは、尿道閉塞による緊急事態(とくに雄)の可能性があり、放置すると急性腎不全・膀胱破裂・死に至るため、すぐ受診・処置につなげることが重要である。

理解できたら腕試し!
このテーマの確認テスト