雄ネコの尿道閉塞(緊急対応のくわしく)

尿が全く出せなくなる雄ネコの尿道閉塞を、緊急対応の視点で深く学ぶ。イヌ(陰茎骨があり前立腺部尿道をもつ。尿道栓子はまれ)とネコ(尿道が細く陰茎部で狭くなり、尿道栓子で詰まりやすい)の尿道の違い、閉塞で腎臓から尿を出せなくなり高カリウム血症・代謝性アシドーシス・高窒素血症が進んで徐脈・低体温・ぐったりに至るしくみ、そして高カリウム血症の安定化→カテーテルによる閉塞解除→解除後にどっと尿が出る閉塞後利尿への輸液対応までを、文章と確認問題で理解する。

1イヌとネコの尿道の違い

イヌの雄は陰茎の中に陰茎骨(おちんちんの骨)があり、膀胱を出てすぐに前立腺部尿道を通る。ネコの雄は尿道が細く、陰茎部で特に狭くなるため詰まりやすい。イヌでは尿道栓子はまれで、詰まるとすれば結石が陰茎骨のところに引っかかることが多い。ネコでは尿道栓子(プラグ)による閉塞が多い。

イヌ(雄)とネコ(雄)の尿道のちがい。イヌは陰茎の中に陰茎骨があり尿道はその溝を通る/膀胱を出てすぐ前立腺部尿道を通る。ゼリー状の尿道栓子はまれで、詰まるとすれば結石が陰茎骨の所に引っかかる。ネコは尿道がもともと細く、陰茎部でとくに狭くS字に曲がるため、結石・砂・尿道栓子で詰まりやすく、尿道閉塞は雄ネコの緊急疾患として重要。

尿道は、膀胱にたまった尿を体の外へ出す管である。

イヌの雄では、膀胱を出た尿道がまず前立腺の中を通る(前立腺部尿道)。

さらに陰茎の中には陰茎骨(いんけいこつ)という骨があり、尿道はその溝を通る。

そのためイヌでは、結石が流れてきても陰茎骨のあるところで引っかかって詰まることが多く、ゼリー状の尿道栓子による閉塞はまれである。

一方、ネコの雄は尿道がもともと細く、陰茎の部分(先端に近い部分)でとくに狭くなっていて、S字状に曲がっている。

このため、ネコの雄は結石や砂、そして尿道栓子(プラグ)で非常に詰まりやすい。

尿道栓子は、膀胱の炎症で出た細胞のかけらや粘液、結晶などがゼリー状に固まったもので、細い尿道の出口に近いところに詰まりやすい。

このような解剖の違いから、尿道閉塞は『雄ネコの緊急疾患』として特に重要である。

2尿道閉塞で体に何が起こるか

尿道が詰まると尿が出せず、腎臓も新しい尿を出せなくなる(腎後性の障害)。老廃物がたまる高窒素血症、尿に捨てられないカリウムがたまる高カリウム血症、体が酸性に傾く代謝性アシドーシスが進む。膀胱はパンパンに張り、進行すると徐脈・低体温・ぐったりして食欲もなくなり、短時間で致死的になる。

尿道閉塞で体に起こることの流れ。尿道が詰まると膀胱がパンパンに張り、腎臓も新しい尿を出せなくなって(腎後性)、高窒素血症・高カリウム血症・代謝性アシドーシスが進む(代謝性アシドーシスはカリウムを細胞外へ移して高カリウム血症を悪化させる)。やがて徐脈・低体温・ぐったりに至り、数時間〜半日で命に関わる緊急事態となる。

尿道が詰まると、膀胱にたまった尿を出せなくなり、やがて腎臓も新しい尿を送り出せなくなる(腎臓より先(下流)が詰まる腎後性の障害)。

尿として体の外に捨てるはずだった老廃物・水分・電解質が体内にたまっていく。

まず、老廃物(尿素窒素など)がたまって高窒素血症になる。

次に、本来は尿に捨てられるカリウムが排泄できずにたまり、高カリウム血症になる。

さらに、酸を尿に捨てられないことや組織の障害により、体が酸性に傾く代謝性アシドーシスが進む。

代謝性アシドーシスでは、カリウムが細胞の外(血液中)へ移動するため、高カリウム血症をいっそう悪化させる。

膀胱は尿でパンパンに張って硬く大きくなり、触ると痛がる。

これらが進むと、高カリウム血症によって心臓の動きが乱れて脈が遅くなり(徐脈)、体温が下がり(低体温)、ぐったりして食欲もなくなる。

尿道閉塞は、数時間〜半日ほどで命に関わる、まさに一刻を争う緊急事態である。

3高カリウム血症がいちばん危険

尿道閉塞でいちばん命に関わるのが高カリウム血症。カリウムが高くなると心臓の電気活動が乱れ、徐脈・不整脈から心停止(心室細動)に至る。心電図ではテント状T波・QRS幅の延長などがみられる。閉塞を解除する前に、まず高カリウム血症と全身状態を安定させることが優先される。

尿道閉塞の患者でいちばん命を脅かすのが高カリウム血症である。

カリウムは心臓の電気活動に深く関わる電解質で、血中濃度が高くなりすぎると心臓のリズムが乱れる。

脈が遅くなる徐脈や不整脈が現れ、放置すると心室細動・心停止に至る。

心電図では、とがった大きなT波(テント状T波)、P波が小さくなる・消える、QRS幅が広くなるといった変化がみられる。

そのため、尿道閉塞ではいきなり詰まりを取りにいくのではなく、まず輸液を始めて脱水とアシドーシスを補正し、危険な高カリウム血症を下げて全身状態を安定させることが優先される。

高カリウム血症の対応には、輸液のほか、心臓を守るカルシウム製剤、カリウムを細胞内に移動させるブドウ糖・インスリンや、酸性が強いときの重炭酸ナトリウムなどが状況に応じて使われる。

全身が安定してから、あるいは並行して、閉塞の解除を行う。

4閉塞の解除(カテーテル)

閉塞の解除は、尿道に細いカテーテルを入れて、詰まった栓子や結石を膀胱内へ押し戻したり洗い流したりして行う。雄ネコには専用の細いカテーテル(トムキャットカテーテルなど)を使い、痛みが強いので鎮静・麻酔をかける。解除後はカテーテルをしばらく留置して膀胱を洗い、再閉塞を防ぐ。くり返す場合は会陰尿道瘻術を検討する。

全身状態を整えながら、尿道の詰まりを取り除く(閉塞解除)。

方法は、尿道口から細いカテーテル(管)を挿入し、詰まっている尿道栓子や結石を、生理食塩水などで膀胱の中へ押し戻したり洗い流したりするものである。

雄ネコの尿道は細いため、専用の細い尿道カテーテル(トムキャットカテーテルなど)を用いる。

処置は痛みが強く動物が痛がるため、鎮静や麻酔をかけて行う。

詰まりが取れたら、膀胱にたまった尿を抜き、膀胱の中を洗浄して炎症産物や結晶を洗い流す。

解除後は、しばらく尿道カテーテルを留置して尿の通り道を確保し、膀胱を休ませて再閉塞を防ぐ。

尿道栓子や結石による閉塞を何度もくり返すネコでは、細く曲がった尿道の先のほうを切り取り、より太い手前の部分を会陰部(肛門の下あたり)に開口させる会陰尿道瘻術(えいんにょうどうろうじゅつ)という再発予防の手術を検討する。

5閉塞解除後の管理 ― 閉塞後利尿

閉塞を解除すると、たまっていた分を取り戻すように、一時的にどっと大量の尿が出ることがある(閉塞後利尿)。尿でどんどん水分と電解質が失われるため、出ていく尿の量に合わせて輸液で水分・電解質を補い、脱水や低カリウム血症にならないよう管理する。尿量・体重・電解質をこまめに確認する。

尿道閉塞を解除したあとには、閉塞後利尿(へいそくごりにょう)という現象が起こることがある。

閉塞中にたまっていた老廃物を一気に出そうとすることや、障害された腎臓の再吸収力が一時的に落ちることなどから、解除後にふだんよりはるかに多い量の尿がどっと出る。

このとき、尿といっしょに大量の水分とカリウムなどの電解質が体から失われていく。

そのため、出ていく尿の量に見合った量の輸液を行い、水分と電解質を補って脱水や低カリウム血症(今度はカリウムが下がりすぎること)を防ぐ。

看護では、尿量の測定(カテーテルからの尿をためて量る)、体重の変化、血中カリウムなどの電解質の推移をこまめに確認し、輸液量の調整に役立てる。

また、再閉塞のサイン(尿が出なくなる、再びいきむ、元気・食欲の低下)にも注意して観察する。

落ち着いたら、結石や特発性膀胱炎などのもとの病気に対して、療法食・十分な飲水・ストレス軽減といった再発予防に取り組む。

理解できたら腕試し!
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