図解で学ぶ
動物看護学

輸血の実際(血液型・クロスマッチ・輸血反応)

重い貧血や出血の動物を救う輸血を学ぶ。イヌの血液型はDEA式(DEA1.1の有無がとくに重要。DEA1.1陰性はユニバーサルドナーになりうる)、ネコの血液型はAB式(A型が多く、B型は少数、AB型はまれ)。とくにネコは、B型の猫がもつ抗A抗体が非常に強いため、初回の輸血でも血液型が合わないと激しい急性溶血反応を起こして命に関わる。輸血前には血液型の確認と、ドナーとレシピエントの血液が合うかを調べる交差適合試験(クロスマッチ)を行う。輸血反応(溶血・発熱・アレルギー・容量過負荷)の観察と、ゆっくり始めて見守る看護、ドナーの条件も、文章と確認問題で理解する。

このレッスンには芋づる表があります。表へ

1イヌ・ネコの血液型

要点イヌの血液型はDEA式で、DEA1.1・1.2・3〜8など複数ある。輸血でとくに問題になるのはDEA1.1の有無で、DEA1.1陰性の犬はユニバーサルドナー(広く与えられる供血犬)になりうる。ネコの血液型はAB式で、A型・B型・AB型の3つ。日本ではA型が多く、B型は少数、AB型はまれ。

イヌのDEA式(DEA1.1の有無が重要で、DEA1.1陰性はユニバーサルドナーになりうる)とネコのAB式(A型が多く、B型は少数、AB型はまれ)を対比した図。輸血前にはこの血液型の確認が欠かせない。

輸血を安全に行うには、血液型を知ることが欠かせない。

イヌの血液型は、DEA式(Dog Erythrocyte Antigen)とよばれ、DEA1.1、DEA1.2、DEA3〜8など複数の型がある。

それぞれの抗原を『もっていれば陽性(+)、もっていなければ陰性(−)』と表す。

イヌの輸血でとくに問題になるのは、反応が強いDEA1.1の有無で、DEA1.1陰性の犬は、多くの犬に与えられるユニバーサルドナー(万能供血犬)になりうる。

ネコの血液型は、AB式とよばれ、A型・B型・AB型の3つがある。

日本にいるネコの多くはA型で、B型は少数、AB型は非常にまれである(ただし品種により割合が異なる)。

この血液型のちがいを無視して輸血すると、重い反応が起こるため、輸血前の血液型確認が大切である。

2ネコの輸血は初回でも危険

要点ネコは、生まれつき自分と違う血液型に対する抗体(自然抗体)をもっている。とくにB型の猫は、抗A抗体が非常に強いため、初めての輸血でもA型の血液を入れると激しい急性溶血反応を起こし、命に関わる。だからネコでは、初回であっても必ず血液型を確認してから輸血する。

イヌでは、初めての輸血では血液型が合わなくてもすぐには強い反応が出にくいことが多い(2回目以降や感作されたあとに問題になる)。

一方、ネコは事情が異なる。

ネコは、生まれつき、自分とは違う血液型に対する抗体(自然抗体)をもっている。

とくにB型の猫がもつ『抗A抗体』は非常に強力で、B型の猫にA型の血液を輸血すると、初めての輸血であっても、赤血球が一気に壊される激しい急性溶血反応が起こり、命に関わる。

そのため、ネコでは初回の輸血であっても、必ず血液型を確認し、合った血液を使うことが絶対に必要である。

『イヌは初回はある程度大丈夫だが、ネコは初回でも血液型不適合が命取りになる』という違いを必ず押さえる。

3交差適合試験(クロスマッチ)

要点クロスマッチ(交差適合試験)は、ドナー(供血側)とレシピエント(受血側)の血液が実際に合うかを試験管などで確かめる検査。ドナーの赤血球とレシピエントの血漿を混ぜる主試験と、その逆(レシピエントの赤血球とドナーの血漿)の副試験を行い、凝集(固まり)や溶血がなければ適合とみなす。

血液型が合っていても、実際にはほかの抗原・抗体の影響で合わないこともあるため、輸血前には交差適合試験(クロスマッチ)を行う。

クロスマッチは、ドナー(血液を与える側)とレシピエント(血液をもらう側)の血液を、実際に混ぜて反応をみる検査である。

主試験(メジャー)は、ドナーの赤血球と、レシピエントの血漿(血清)を混ぜるもので、レシピエントがドナーの赤血球を攻撃しないかを調べる(もっとも重要)。

副試験(マイナー)は、レシピエントの赤血球と、ドナーの血漿(血清)を混ぜるもので、その逆を調べる。

混ぜたときに、赤血球が固まる(凝集)・溶ける(溶血)といった反応がなければ『適合』とみなし、その血液を輸血に用いる。

凝集や溶血がみられた血液は不適合なので、輸血には使わない。

4輸血反応と看護

要点輸血では、血液型不適合などによる急性溶血反応(最も危険。発熱・血色素尿・虚脱・ショック)、発熱、アレルギー(じんま疹・かゆみ)、入れすぎによる容量過負荷(肺水腫)などが起こりうる。看護では、最初はゆっくり投与して反応がないか観察し、体温・脈・呼吸・粘膜色・尿の色をこまめにチェックし、異常があればすぐ中止して獣医師に報告する。

輸血には、命を救う大きな効果がある一方、副反応(輸血反応)が起こりうるため、慎重な管理が必要である。

もっとも危険なのが、血液型不適合などによる急性溶血反応で、輸血した赤血球が一気に壊され、発熱・血色素尿(赤褐色の尿)・嘔吐・虚脱・ショックなどが急速に現れる。

そのほか、発熱(非溶血性)、アレルギー反応(じんま疹・かゆみ・顔のはれ)、入れすぎによる循環の容量過負荷(心臓に負担がかかり肺水腫を起こす)などがある。

看護では、輸血の最初の数十分はとくにゆっくり投与し、反応が出ないかをよく観察する。

輸血中は、体温・脈拍・呼吸・粘膜の色・尿の色などをこまめに確認し、ふるえ・発熱・嘔吐・じんま疹・呼吸促迫などの異常がみられたら、ただちに輸血を止めて獣医師に報告する。

血液製剤は適切な温度で扱い、決められた輸血セット(フィルター付き)を用いる。

5供血動物(ドナー)の条件

要点ドナー(供血する動物)は、健康で、適切な体重・年齢で、感染症(フィラリアや血液寄生虫など)にかかっておらず、ワクチン接種済みであることなどが条件。採血で供血動物に負担をかけすぎないよう、体重あたりの採血量を守る。血液は全血のほか、赤血球や血漿などの成分に分けて使われることもある。

輸血に使う血液を提供する動物を、供血動物(ドナー)という。

ドナーには条件があり、健康で性格がおだやか、一定以上の体重があり、若すぎず高齢すぎず、フィラリアや血液寄生虫(バベシア・ヘモプラズマなど)の感染症にかかっておらず、ワクチンを接種している、などが求められる。

採血によってドナー自身が貧血や体調不良にならないよう、体重に応じた安全な採血量を守る。

提供された血液は、そのまま使う全血のほか、遠心分離して赤血球(濃厚赤血球)や血漿などの成分に分け、必要なものだけを使うこともある(成分輸血)。

たとえば、貧血には赤血球、凝固因子が足りないときには血漿、というように、病態に応じて使い分ける。

動物看護師は、ドナーの健康管理、採血や輸血の準備・介助、輸血中の観察などを担う。

芋づる表

輸血(犬と猫の違い)

要点犬は DEA式で DEA1.1 の有無が大事。猫は AB式で自然抗体をもち、B型の猫は抗A抗体が強いので初回の輸血でも血液型の確認が必須。

隠して覚える(?を押すとめくれる)
空欄の表を印刷(紙に書く用)

血液型

血液型の型式
DEA式 DEA1.1・1.2・3〜8 など複数
AB式(A型・B型・AB型) 日本では A型が多く、B型は少数、AB型はまれ
輸血で大事な型
DEA1.1 の有無 DEA1.1 陰性はユニバーサルドナーになりうる
B型 B型の猫の抗A抗体が非常に強い

抗体と初回の輸血

自然抗体
猫と違い、ふつうは問題にならない
生まれつき、違う血液型への抗体をもつ
初回の輸血
型が合わなくても強い反応は出にくい 2回目以降・感作されたあとに問題
初回でも型違いで激しい急性溶血反応 B型の猫に A型の血液→命に関わる

輸血の前の検査

血液型判定
DEA1.1 の有無を調べる
初回でも必ず調べる
クロスマッチ 交差適合試験
血液型判定に加えて行う 主試験=ドナーの赤血球+受血側の血漿(最重要)
血液型判定に加えて行う 副試験=受血側の赤血球+ドナーの血漿
理解できたら腕試し
確認問題 9問をとく