呼吸器の病気(各論)

イヌ・ネコの呼吸器の病気を、症状の見方から部位ごとの代表的な病気、検査と看護までを学ぶ。呼吸器疾患のサイン、上部気道の病気、下部気道・肺の病気、胸腔の病気、そして検査と看護のポイントを、図ではなく文章で読んで理解する。呼吸困難は命に関わることがある。

1呼吸器疾患のサイン

咳、くしゃみ、鼻水、呼吸が速い・苦しそう(努力呼吸)、口を開けて呼吸する(ネコの開口呼吸は異常)、舌が青い(チアノーゼ)などがサイン。呼吸困難は緊急のことがあり、とくにネコの開口呼吸は危険。

空気の通り道を上気道(鼻・咽頭・喉頭・気管)と下気道・肺(気管支・肺)に分け、本文で扱う代表的な病気を部位別に並べたもの。肺水腫は心臓病に伴って起こる。

呼吸器は、鼻から肺までの空気の通り道とガス交換を担う器官系で、その病気はさまざまな症状を起こす。

代表的なサインは、咳、くしゃみ、鼻水、呼吸が速い・浅い、おなかや体を大きく使って苦しそうに呼吸する(努力呼吸)などである。

舌や歯ぐきが青っぽくなるチアノーゼは、酸素が足りていない危険なサインである。

ネコはふだん口を閉じて鼻で呼吸しており、口を開けて呼吸する(開口呼吸)のは強い呼吸困難を示す異常で、緊急性が高い。

呼吸困難の動物は、無理に保定したり興奮させたりするとさらに悪化するため、慎重に扱う必要がある。

2上部気道の病気

鼻炎・副鼻腔炎、ネコの上部気道感染症(猫かぜ)、短頭種気道症候群、喉頭の病気、気管虚脱(小型犬に多く、ガチョウの鳴き声のような咳)など。空気の通り道が狭くなり、いびきや呼吸困難を起こす。

上部気道(鼻・咽頭・喉頭・気管)の病気は、空気の通り道が狭くなることで症状を起こす。

鼻炎や副鼻腔炎ではくしゃみや鼻水がみられ、ネコではヘルペスウイルスやカリシウイルスによる上部気道感染症(いわゆる猫かぜ)が多い。

短頭種では、生まれつき気道が狭い短頭種気道症候群により、いびきや呼吸のしづらさが起こる。

喉頭の病気(喉頭麻痺など)でも呼吸がしにくくなる。

気管虚脱は、気管がつぶれて狭くなる病気で、小型犬に多く、ガチョウの鳴き声のような特徴的な咳がみられる。

これらは興奮や暑さで悪化しやすいため注意する。

3下部気道・肺の病気

気管支炎、ネコの喘息(気管支が狭くなり発作的な呼吸困難・咳)、肺炎(細菌性や誤嚥性など)、心臓病による肺水腫などがある。ガス交換の場である肺が障害されると、酸素が十分とり込めなくなる。

下部気道(気管支)から肺にかけての病気は、ガス交換に直接影響する。

気管支炎では慢性的な咳がみられる。

ネコの喘息(気管支喘息)は、気管支が狭くなって発作的な呼吸困難や咳を起こす病気である。

肺炎は、細菌などの感染や、嘔吐物などを誤って吸い込む誤嚥によって起こり、発熱や呼吸困難を伴う。

また、心臓病に伴って肺に水がたまる肺水腫も、呼吸困難の重要な原因である(循環器の病気とも関わる)。

肺が障害されると酸素を十分にとり込めなくなるため、酸素の補給が必要になることがある。

4胸腔の病気

胸腔(肺の入った空間)に水がたまる胸水(膿がたまる膿胸、リンパ液の乳び胸など)、空気がたまる気胸、腹部臓器が胸に入り込む横隔膜ヘルニアなど。肺が広がれず強い呼吸困難を起こし、緊急のことが多い。

肺をおさめている空間(胸腔)に異常があると、肺が十分に広がれず呼吸困難になる。

胸水は胸腔に液体がたまる状態で、膿がたまる膿胸、リンパ液がたまる乳び胸、心臓病やがんに伴うものなどがある。

気胸は、けがなどで胸腔に空気がたまり、肺がしぼんでしまう状態である。

横隔膜ヘルニアは、交通事故などで横隔膜が破れ、腹部の臓器が胸の中に入り込んでしまうもので、肺を圧迫する。

これらはいずれも肺が広がれず強い呼吸困難を起こすため、緊急の対応(胸にたまった液体や空気を抜くなど)が必要になることが多い。

5感染性呼吸器疾患(ジステンパー・ケンネルコフ)

犬ジステンパーは多臓器に及ぶウイルス感染症で、呼吸器症状から神経症状まで進行する。ケンネルコフは複数の病原体による犬の感染性気管気管支炎で、乾いた特徴的な咳がみられる。どちらもワクチンで予防できる。

犬ジステンパーは、犬ジステンパーウイルスによる多臓器性の感染症で、子犬や未ワクチン犬に多い。

初期は発熱・鼻水・目やに・咳などの呼吸器症状から始まり、消化器症状(嘔吐・下痢)へと進み、さらに神経症状(けいれん・麻痺・行動変化)が現れることがある。

免疫が未熟な子犬では致死率が高く、有効な治療薬がないため、ワクチン接種による予防が最も重要である。

ケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)は、ボルデテラ・ブロンキセプティカや犬パラインフルエンザウイルスなど複数の病原体が関わる感染性の気道炎である。

犬が多く集まるペットショップ・犬舎・ドッグランなどで広まりやすく、集団飼育環境での感染リスクが高い。

「ガアッ」と吐き出すような乾いた特徴的な咳が主な症状で、多くは自然に回復するが、免疫が弱い動物では肺炎に進行することもある。

ケンネルコフもワクチン(鼻腔内ワクチンを含む)での予防が可能であり、施設に入る前のワクチン確認が推奨される。

6検査と看護

聴診、X線、呼吸数・呼吸様式の観察などで評価する。看護では、呼吸困難の動物を興奮させないこと、酸素室での酸素供給、ネブライザー(吸入)、安静が重要。とくにネコの呼吸困難はストレスで急変するため、最小限の刺激で扱う。

呼吸器の病気では、聴診で肺や気管の音を確認し、X線で肺や心臓・胸腔の状態を調べる。

呼吸の回数や、どのように呼吸しているか(努力呼吸・開口呼吸など)の観察も重要な情報になる。

看護では、まず呼吸困難の動物を興奮させないことが大切で、無理な保定や処置を避ける。

酸素が足りない動物には、酸素室などで酸素を供給する。

ネブライザー(薬や水分を霧状にして吸わせる吸入)が用いられることもある。

とくに呼吸困難のネコは、強いストレスで急に状態が悪化し命に関わることがあるため、刺激を最小限にし、落ち着いた環境でそっと扱うことが重要である。

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