腎臓病の食事療法・尿比重と蛋白漏出性腎症

慢性腎臓病では、腎臓の負担を減らす食事療法(良質なタンパク質を必要量だけ・低リン・低ナトリウム)と、進行を遅らせるリン管理が重要。尿比重は腎臓の濃縮能を映す指標で、犬・猫で目安が異なる。さらに、犬で多い糸球体障害による蛋白漏出性腎症・ネフローゼ症候群と、猫で多い尿細管・間質の障害という、種ごとの傾向の違いを学ぶ。

1腎臓病の食事療法(タンパク・リン・ナトリウム)

慢性腎臓病の食事療法の基本は、①良質なタンパク質を必要量だけ与える(質の悪いタンパクの過剰は老廃物を増やす)、②リンを制限する、③ナトリウム(塩分)を控える、の3つ。腎臓専用の療法食を用い、必要なエネルギーは確保する。

慢性腎臓病の食事療法の3つの基本(良質タンパクを必要量だけ・リン制限・ナトリウム制限)を示す。療法食を用いつつ必要なカロリーは確保する。

慢性腎臓病(慢性腎不全)では、弱った腎臓の負担を減らす食事療法が、進行を遅らせる重要な柱になる。

基本は3つの調整である。

1つ目はタンパク質の調整である。

タンパク質を代謝すると、アンモニアや尿素などの老廃物が出て腎臓の負担になる。

そこで、量は控えめ(低タンパク)にしつつ、利用効率のよい『良質なタンパク質』で必要量をしっかり供給するのがポイントである。

やみくもに減らして栄養失調にならないよう、質を高めて必要量を満たす。

2つ目はリンの制限である。

リンの制限は、慢性腎臓病で生存期間を延ばすことが示された最も重要な管理のひとつで、早期から行う。

食事だけでリンを十分に下げられない(療法食を食べてくれないなど)場合は、腸でリンの吸収を抑える『リン吸着剤(炭酸カルシウム、炭酸ランタンなど)』を食事に加える。

3つ目はナトリウム(塩分)の制限である。

塩分のとりすぎは高血圧や体液量の増加につながるため控える。

これらを満たすよう設計された腎臓病用の療法食を用い、同時に必要なカロリーは確保して体重・筋肉を保つ。

2尿比重と腎臓の濃縮能

尿比重は尿の濃さを示す指標で、腎臓が尿をどれだけ濃縮できているか(濃縮能)を映す。目安は犬でおおむね1.015〜1.045(1.030以上で十分濃縮)、猫で1.035〜1.060(1.035以上)。腎機能が落ちると濃縮できず、薄い尿(低比重)を多量に出すようになる。

尿比重は、尿の中にどれだけ老廃物などの成分が溶け込んでいるか(尿の濃さ)を示す数値で、腎臓が水分を再吸収して尿を濃縮する能力(濃縮能)を反映する。

正常な濃縮能の目安は、犬でおおむね1.015〜1.045(一般に1.030以上あれば十分に濃縮できているとされる)、猫で1.035〜1.060(1.035以上が十分な濃縮の目安)である。

猫はもともと尿を濃くする能力が高い。

腎臓の機能が低下して尿を濃縮できなくなると、水分を再吸収しきれず、色の薄い尿(低比重尿)をたくさん出すようになる。

その結果、体は水分を失って脱水し、それを補おうとしてたくさん水を飲む(多飲多尿)。

とくに、尿比重が1.008〜1.012くらいの『等張尿』(血漿とほぼ同じ濃さ)が続く場合は、腎臓が尿をまったく濃縮・希釈できていない状態で、慢性腎臓病に特徴的な所見である。

尿比重は、たくさん水を飲んでいても薄いままか、脱水しているのに薄いか、といった点が腎機能評価の手がかりになる。

3犬で多いパターン:糸球体障害と蛋白漏出性腎症

犬では、尿をろ過する『糸球体』が障害されてタンパク質が尿に漏れ出るパターン(蛋白漏出性腎症・糸球体腎炎)が多い。尿タンパクが出現し、重症化すると低タンパク(低アルブミン)血症・むくみ(浮腫)・高コレステロール血症・タンパク尿を伴うネフローゼ症候群になる。

腎臓病の現れ方には、動物種によって傾向の違いがある。

犬で目立つのは、尿をろ過する装置である『糸球体』が障害されるパターンである。

糸球体は、血液をろ過して老廃物を尿へ出す一方、体に必要なタンパク質(アルブミンなど)は通さない『ふるい』の役割をもつ。

ここが糸球体腎炎などで障害されると、本来は通さないはずのタンパク質が尿に漏れ出てしまう。

これを蛋白漏出性腎症といい、尿検査でタンパク尿として現れる。

タンパク質が尿へ大量に失われ続けると、血液中のタンパク質(とくにアルブミン)が減り、低タンパク(低アルブミン)血症になる。

アルブミンが減ると血管内に水分を保てなくなり、組織に水がたまって『むくみ(浮腫)』や腹水・胸水が生じる。

さらに体が代償的にコレステロールを増やすため高コレステロール血症もみられる。

この『タンパク尿・低アルブミン血症・浮腫・高コレステロール血症』がそろった状態をネフローゼ症候群という。

治療では原因への対応に加え、降圧薬などでタンパク尿を減らす管理が行われる。

4猫で多いパターン:尿細管・間質の障害

猫の慢性腎臓病では、尿をろ過したあとに水分や成分を再吸収する『尿細管』や、その周りの『間質』が障害されるパターンが多い。再吸収がうまくいかず、早い段階から尿を濃縮できなくなって、薄い尿(低比重)を多量に出し、脱水・多飲多尿が目立つ。

猫の慢性腎臓病では、犬とは少し傾向が異なり、ろ過後の尿から水分やミネラルなどを再吸収する『尿細管』や、その周囲を支える『間質』が障害される(尿細管間質性の障害)パターンが多いとされる。

尿細管での再吸収がうまくいかなくなると、水分を体に取り戻せず、比較的早い段階から尿を濃縮できなくなる。

その結果、色の薄い尿(低比重尿)を多量に出すようになる。

いくら水を飲んでも薄い尿がどんどん出てしまうため、体は脱水し、それを補おうとさらに水を飲む——という多飲多尿が、猫の慢性腎臓病で目立つサインになる。

進行すると、老廃物(尿素窒素・クレアチニンなど)が排泄されずに体にたまり、尿毒症(食欲不振・嘔吐・口臭・元気消失)を起こす。

猫は腎臓病が多い動物であり、高齢猫では飲水量・尿量の変化や体重減少に早く気づき、尿比重や血液検査で早期にとらえることが大切である。

5腎臓病の動物看護

看護では、飲水量・尿量・尿の濃さ(尿比重)・体重・食欲・嘔吐などを観察する。療法食を続けられる工夫、脱水に対する皮下・静脈輸液の介助、リン吸着剤など投薬の管理が中心。食べないと栄養とリン管理が崩れるため、食事がとれているかの確認も重要。

腎臓病は多くが慢性に進行するため、日々の観察と管理を支える動物看護師の役割が大きい。

観察では、飲水量と尿量(増えていないか)、尿の色・濃さ、体重の変化(減っていないか)、食欲、嘔吐・口臭・元気の有無などをチェックし、変化を獣医師へ報告する。

可能であれば尿比重も継続的に確認する。

治療の中心は食事療法と脱水の管理である。

腎臓病用の療法食を続けられるよう、温める・ふやかす・種類を工夫するなどして食べてもらう支援を行う。

脱水に対しては、皮下輸液や静脈輸液の介助を行う(在宅皮下輸液の指導をすることもある)。

リン吸着剤など、食事に合わせて与える薬の管理や、降圧薬・吐き気止めなどの投薬管理も担う。

なお、食べてくれないと必要なカロリーが不足し、リン制限などの食事療法も成り立たなくなるため、『きちんと食べられているか』を確認し、食べないときは早めに相談につなげることが大切である。

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