赤血球の形態(血液塗抹でみる異常赤血球)

血液塗抹標本でみる赤血球の形の異常と、それが示す病気を学ぶ。正常な赤血球は中央が淡く見える(中心淡明=セントラルペーラー)円板状。これが消えて小さく濃く染まる球状赤血球(免疫介在性溶血性貧血)、中心淡明が広がり淡く見える低色素性赤血球(鉄欠乏性貧血)、ちぎれた破片の破砕赤血球(DIC・微小血管障害)、的のように中央が盛り上がる標的赤血球(肝障害・ヘモグロビン合成障害)、そして若い赤血球で再生のサインになる網状赤血球(ニューメチレンブルー染色)を、文章と確認問題で理解する。

1正常な赤血球と中心淡明(セントラルペーラー)

正常な赤血球(とくにイヌ)は、中央がくぼんだ円板状(両凹円板)で、染めると中央が淡く抜けて見える。これを中心淡明(セントラルペーラー、central pallor)という。赤血球の形・大きさ・染まり方の異常を、この正常像と比べて読み取る。

正常赤血球(中心淡明あり)を基準に、球状・低色素性・破砕・標的・網状赤血球の見え方と関連する病態を並べた模式図。実際の色や網目は染色でみえる特徴を単純化して示している。

赤血球の形態は、血液をうすくのばして染めた血液塗抹標本を顕微鏡で観察して評価する。

正常な赤血球(とくにイヌ)は、中央がくぼんだ円板の形(両凹円板)をしている。

そのため染色すると、ヘモグロビンが多い周辺は濃く、うすい中央は淡く抜けて見える。

この中央の淡く見える部分を、中心淡明(セントラルペーラー、central pallor)という。

中心淡明は、正常な赤血球がきちんとヘモグロビンを含み、ほどよい形をしていることのあらわれである。

赤血球の異常は、この正常像(大きさ・形・中心淡明の有無や広さ・染まり方)と比べることで読み取る。

(ネコの赤血球はもともと中心淡明が目立ちにくいなど、動物種による違いもある。

2球状赤血球(スフェロサイト)

球状赤血球は、正常より直径が小さく、厚みがあって濃く染まり、中心淡明が見られない(消えている)赤血球。赤血球膜の一部が失われて球形になったもので、免疫介在性溶血性貧血(IMHA)の重要な手がかりになる。

球状赤血球(スフェロサイト)は、正常な赤血球より直径が小さく、厚みのある(球形に近い)赤血球である。

厚みがあってヘモグロビンが詰まっているため濃く染まり、正常では見える中心淡明(セントラルペーラー)が見られなくなる(消えている)のが特徴である。

これは、赤血球の膜の一部が失われて、本来の円板状を保てなくなり、表面積が減って球形になったために起こる。

球状赤血球は、自分の赤血球を自己抗体が攻撃して壊す免疫介在性溶血性貧血(IMHA)で多くみられ、診断の重要な手がかりになる。

(IMHAでは、抗体が結合した赤血球の膜が脾臓などで一部かじり取られ、球状赤血球になる。

)『小さい・濃い・中心淡明がない』の3つで球状赤血球をとらえる。

(球状赤血球を手がかりにできるのは主にイヌで、ネコはもともと中心淡明が目立たないため判定しにくい点に注意する。

3低色素性赤血球(鉄欠乏)

低色素性赤血球は、ヘモグロビンが少ないために淡く染まり、中心淡明が広がって(拡大して)見える赤血球。鉄が不足してヘモグロビンを十分に作れない鉄欠乏性貧血でみられる。透明感が強く、薄いリングのように見える。

低色素性赤血球は、赤血球に含まれるヘモグロビンが少ないために、全体に淡く(薄く)染まる赤血球である。

ヘモグロビンが中央だけでなく広い範囲で不足するため、中心淡明(セントラルペーラー)が正常より広がって(拡大して)見え、透明感が強く、うすいリングのように見える。

これは、鉄が不足してヘモグロビンを十分に作れない鉄欠乏性貧血で典型的にみられる。

鉄は、慢性的な出血(消化管出血やノミの寄生による失血など)で失われて不足することが多い。

球状赤血球が『中心淡明が消えて濃い』のに対し、低色素性赤血球は『中心淡明が広がって淡い』と、正反対の見え方になる点を対比して覚えるとよい。

4破砕赤血球(シストサイト)

破砕赤血球は、赤血球が物理的にちぎれてできる、不規則な形の破片状の赤血球。血管の中で赤血球が傷つけられる病態でみられ、播種性血管内凝固(DIC)、微小血管障害、血栓症、血管肉腫などが原因になる。

破砕赤血球(シストサイト、分裂赤血球)は、赤血球が物理的な力でちぎれて(破断して)できる、不規則な形・とがった破片状の赤血球である。

これは、血管の中で赤血球が機械的に傷つけられたり、こすられて切れたりする病態で出現する。

代表的な原因に、全身の小さな血管で血液が固まってしまう播種性血管内凝固(DIC)、細い血管がせまくなる微小血管障害、血栓症、血管にできる腫瘍である血管肉腫などがある。

これらでは、血管内にできた網(フィブリン)や狭くなった血管を赤血球が通るときに切られて、破砕赤血球ができる。

そのため、血液塗抹で破砕赤血球が多くみられるときは、DICなどの血管内で赤血球が壊れる重い病態を疑う手がかりになる。

5標的赤血球(ターゲットセル)

標的赤血球は、中心淡明の中央にヘモグロビンが盛り上がって、弓の的(ターゲット)のように見える赤血球。ヘモグロビンの合成障害や、肝障害・閉塞性黄疸などでみられる。膜の量に対してヘモグロビンや表面の状態のバランスが変わって生じる。

標的赤血球(ターゲットセル、コドサイト)は、中心淡明(淡い部分)の中央に、ヘモグロビンが島のように盛り上がって見え、全体が弓の的(ターゲット)のような模様に見える赤血球である。

中央の盛り上がり・そのまわりの淡い輪・いちばん外の濃い縁、という三重の見え方が特徴である。

これは、ヘモグロビンの合成障害や、肝臓の障害(肝疾患)、胆汁の流れがとどこおる閉塞性黄疸などでみられる。

赤血球の膜の量に対して、ヘモグロビンの量や膜のコレステロールなどのバランスが変わると、膜が余って中央が盛り上がり、標的のような形になる。

標的赤血球が多くみられるときは、肝臓やヘモグロビン合成の異常を考える手がかりになる。

6網状赤血球(レチクロサイト)

網状赤血球は、骨髄から出たばかりの最も若い赤血球。中に残ったRNA(リボソーム)が、ニューメチレンブルーなどの超生体染色で網目状に青く染まる。貧血のときに網状赤血球が増えていれば、骨髄が活発に赤血球を作っている『再生性貧血』とわかる。

網状赤血球(レチクロサイト)は、骨髄でつくられ、核を失った(脱核した)直後の、最も若い赤血球である。

若い赤血球の中には、まだRNA(リボソーム)が残っている。

このRNAは、ふつうの染色では見えないが、ニューメチレンブルーなどの色素で生きたまま染める『超生体染色』を行うと、網目(あみめ)のように青く染まって見える。

この網目状に見えることから『網状赤血球』とよばれる。

網状赤血球は、骨髄が新しい赤血球をどれだけ作って送り出しているかの目安になる。

貧血のときに網状赤血球が増えていれば、骨髄ががんばって赤血球を作って補おうとしている『再生性貧血』(出血性・溶血性)とわかる。

逆に、貧血なのに網状赤血球が増えていなければ、骨髄での産生が追いついていない『非再生性貧血』(腎性・骨髄疾患など)を考える。

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