狂犬病(病態・歴史・予防)

狂犬病は、ラブドウイルス科リッサウイルス属のウイルスによる人獣共通感染症。おもに感染動物の咬み傷から唾液中のウイルスが入り、末梢神経をつたって中枢神経(脳)へ広がる。人でも動物でも、発症するとほぼ100%死亡する。日本では国内発生がないが世界では多く発生しており、輸入症例もある。病態・歴史と、狂犬病予防法による予防を学ぶ。

1狂犬病ウイルスと感染経路

狂犬病の原因は、ラブドウイルス科リッサウイルス属の狂犬病ウイルス。ほとんどの哺乳類が感染する。おもに、感染した動物に咬まれることで、唾液中のウイルスが傷口から体内に入って感染する(咬傷感染)。

狂犬病ウイルスは、おもに感染動物に咬まれたときに唾液中のウイルスが咬み傷から体内へ入って感染する(咬傷感染)。傷口をなめられ、唾液が傷や粘膜に触れて感染することもある。

狂犬病は、ラブドウイルス科リッサウイルス属に分類される狂犬病ウイルスによって起こる感染症である。

犬・猫をはじめ、ほとんどすべての哺乳類が感染し、人にもうつる人獣共通感染症(ズーノーシス)である。

おもな感染経路は咬傷感染で、ウイルスをもった動物に咬まれると、その唾液にふくまれるウイルスが咬み傷(傷口)から体内に入って感染する。

傷口をなめられた場合など、唾液が傷や粘膜に触れて感染することもある。

世界では、犬が人への主要な感染源になっている地域が多い。

ポイントは、『狂犬病ウイルス(ラブドウイルス/リッサウイルス)が、おもに咬傷で唾液から感染する』ということである。

2病態(末梢神経から脳へ・ほぼ100%致死)

傷口から入ったウイルスは、末梢神経をつたって、ゆっくりと中枢神経(脊髄・脳)へと広がっていく。潜伏期のあと、興奮・恐水・麻痺などの神経症状が現れ、最終的に呼吸障害などで死亡する。いったん発症すると、人でも動物でもほぼ100%死亡する。

咬み傷から体内に入った狂犬病ウイルスは、その場の末梢神経に入り込み、神経の中を伝って(神経をつたって)少しずつ中枢神経(脊髄・脳)へと広がっていく。

このため、感染してから症状が出るまでの潜伏期は比較的長く、ウイルスが脳に達して増えると発症する。

発症すると、不安・興奮・水を怖がる(恐水)・よだれ・けいれんなどの神経症状や、進行すると麻痺が現れ、最終的に呼吸障害などで死に至る。

もっとも重要なのは、狂犬病はいったん発症すると、人でも動物でも有効な治療法がなく、ほぼ100%死亡するという点である。

致死率がきわめて高い、最も恐ろしい感染症の一つである。

だからこそ、発症させないための予防(ワクチン)と、咬まれた後の早期対応が決定的に重要になる。

3日本と世界の発生状況

日本では、人は1956年、動物は1957年(猫)を最後に国内発生がなく、数少ない『清浄地域』。ただし、海外で感染して帰国・入国後に発症した輸入症例がある(1970年ネパール、2006年・2020年フィリピンなど)。世界では今も多くの国で発生している。

日本は、島国であることや、狂犬病予防法による対策が功を奏し、現在は国内に狂犬病のない数少ない国(清浄地域)の一つである。

国内での発生は、人では1956年、動物では1957年の猫を最後に確認されていない。

ただし、『日本にない』のはあくまで国内発生であって、海外には今も多くの国で狂犬病が存在する。

実際に、海外で動物に咬まれて感染し、帰国・入国後に発症して亡くなった『輸入症例』がある。

1970年にネパールからの帰国者で1例、2006年にフィリピンからの帰国者で2例、2020年にもフィリピンからの入国者で1例が報告されている。

つまり、日本に住んでいても、海外渡航時に咬まれて持ち込む危険は今もある。

また、万一、感染した動物が国内に入れば再びまん延する危険があるため、油断せず予防を続けることが大切である。

4狂犬病予防法による予防

日本では狂犬病予防法により、生後91日以上の犬は、取得から30日以内に市区町村へ登録(生涯1回、鑑札を交付)し、毎年1回狂犬病予防注射を受けて注射済票の交付を受ける義務がある。犬が死亡したときも30日以内に届け出る。鑑札・注射済票は犬に着けておく。

日本で狂犬病の侵入・まん延を防ぐための法律が、狂犬病予防法である。

飼い犬の飼い主には、おもに次の義務がある。

登録:生後91日以上の犬を飼い始めたら、取得(飼い始め)から30日以内に市区町村へ登録する。

登録は原則として生涯に1回で、登録すると『鑑札』が交付される。

予防注射:生後91日以上の飼い犬には、毎年1回、狂犬病予防注射を受けさせ、『注射済票』の交付を受ける。

鑑札・注射済票は、登録済み・接種済みであることの証明として、飼い犬に着けておく。

届出:登録した犬が死亡したときは、原則として30日以内に市区町村へ届け出る(住所変更なども届け出る)。

なお、狂犬病予防法では、輸入検疫や、狂犬病が疑われる動物の抑留・観察などの対象動物として、犬のほか猫・アライグマ・キツネ・スカンクが定められている。

(聞き間違えやすいが、犬の死亡届は『30日以内』である。

5咬傷時の対応と公衆衛生・看護

海外などで動物に咬まれたら、すぐに傷を water と石けんでよく洗い、医療機関を受診する。狂犬病は発症するとほぼ100%死亡するが、咬まれた後に速やかにワクチン(曝露後接種)を受ければ発症を防げる。看護では、予防注射の重要性や海外でのリスクを飼い主に伝える。

狂犬病は発症するとほぼ100%死亡するが、予防は可能である。

万一、海外などで動物に咬まれた場合は、すぐにその傷口を流水と石けんで十分に洗い流し(ウイルスを物理的に洗い流す)、できるだけ早く医療機関を受診する。

咬まれた後でも、発症する前に速やかにワクチン接種(曝露後免疫=暴露後接種)を受ければ、発症を防ぐことができる。

発症してからでは手遅れになるため、『咬まれたらすぐ受診』が鉄則である。

動物看護師・動物医療スタッフの役割として、飼い犬への年1回の予防注射の大切さを飼い主に伝えること、海外旅行などで安易に動物に触れない・咬まれないよう注意を促すこと、咬傷時の正しい対応を伝えることなどがある。

また、狂犬病が疑われる動物に咬まれた場合の届出や、咬んだ動物の観察など、公衆衛生上の手続きにも関わる。

『発症すればほぼ100%死亡、しかし予防はできる』——この両面を正しく理解し、伝えることが重要である。

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