肺炎(誤嚥性・感染性)

肺炎は、肺胞や間質に炎症が起こりガス交換が妨げられる病気。犬の肺葉の解剖を押さえたうえで、食道の病気(巨大食道症)などから食物・唾液を吸い込んで起こる誤嚥性肺炎と、その予防(エレベーテッドフィーディング)、細菌・ウイルス・真菌・寄生虫による感染性肺炎の分類と代表的病原体、症状と看護を学ぶ。

1犬の肺葉の解剖と肺炎の基礎

犬・猫・ウサギの肺は、右肺が4葉(前葉・中葉・後葉・副葉)、左肺が3葉(前葉前部・前葉後部・後葉)に分かれる。心臓はやや左寄りにある。肺炎は、肺胞や間質に炎症が起きてガス交換が妨げられ、呼吸が苦しくなる病気。

肺炎は肺胞・間質の炎症でガス交換が妨げられる病気で、原因により食物などを吸い込む誤嚥性肺炎と病原体による感染性肺炎に大別される。おもな症状は咳・呼吸困難・元気消失・食欲不振・発熱で、重症ではチアノーゼを示す。

肺は、空気中の酸素を血液に取り込み、二酸化炭素を排出するガス交換の場である。

犬・猫・ウサギの肺は左右でいくつかの『肺葉』に分かれている。

右肺は4葉(前葉・中葉・後葉・副葉)、左肺は3葉(前葉前部・前葉後部・後葉)に分かれ、あわせて7葉になる。

心臓はやや左側に寄って位置している。

肺炎とは、これらの肺の組織——空気が入る袋である肺胞や、その間を埋める間質——に炎症が起こり、本来は空気で満たされている部分に滲出液や細胞がたまって、ガス交換が妨げられる病気である。

肺炎を起こすと、咳・速くて苦しそうな呼吸(呼吸困難)・元気消失・食欲不振・発熱などがみられ、重症になると酸素が足りずチアノーゼ(粘膜が青紫色になる)を示す。

肺炎は原因によって、食物などを吸い込んで起こる誤嚥性肺炎と、病原体による感染性肺炎などに分けられる。

2誤嚥性肺炎が起こるしくみと好発部位

誤嚥性肺炎は、食物・水・唾液・吐物などを誤って気管・肺へ吸い込んで起こる肺炎。横になって意識が低下しているとき(麻酔中・寝ているとき)に起こりやすい。気管支の走行と重力の関係で、犬では右中葉など右側の肺に好発する。

誤嚥(ごえん)とは、本来は食道から胃へ送られるべき食物・水・唾液・吐物などを、誤って気管から肺の方へ吸い込んでしまうことをいう。

これによって起こる肺炎が誤嚥性肺炎である。

ふだんは、ものを飲み込むときに喉頭のふた(喉頭蓋)が気管にふたをし、誤って気管に入りそうになっても咳反射で押し返す。

しかし、意識がもうろうとしているとき(全身麻酔中、鎮静中、ぐったりして寝ているとき、けいれん後など)は、これらの防御がうまく働かず、誤嚥しやすくなる。

吸い込まれた内容物は、気管支の走行と重力の影響を受けて流れ込みやすい場所に達する。

犬では、右の主気管支が比較的まっすぐで太いことや体位の影響から、右側の肺、とくに右中葉などに誤嚥性肺炎が起こりやすいとされる。

巨大食道症(後述)のように食道に食物がたまる病気や、頻繁に嘔吐する病気、喉頭・飲み込みの障害がある動物は、誤嚥性肺炎を繰り返しやすく注意が必要である。

3巨大食道症とエレベーテッドフィーディング

巨大食道症は食道が拡張して動きが悪くなり、食物・水・唾液が食道にたまって誤嚥性肺炎を繰り返す原因になる。予防には、頭を高くした起立位で食べさせ、食後も30分ほど立たせて重力で胃へ送る『エレベーテッドフィーディング』が有効。専用のベイリーチェアも使われる。

巨大食道症(食道拡張症)は、食道が何らかの原因で大きく拡張し、ぜん動運動(食物を胃へ送る動き)が低下する病気である。

食道に食物・水・唾液がたまって停滞し、それを吐き戻して誤嚥することで、誤嚥性肺炎を繰り返し、命に関わることも多い。

停滞した内容物による食道炎を合併することもある。

この誤嚥を防ぐ重要な管理が『エレベーテッドフィーディング(起立位給餌)』である。

頭〜上半身を高くした起立姿勢で食事や水を与え、重力を利用して食物を食道から胃へ落とす方法である。

さらに、食後すぐ横にすると逆流・誤嚥しやすいため、食後も少なくとも15〜30分程度は立たせた姿勢を保つことが推奨される。

長期管理には、動物を起立位に保つ専用の椅子(ベイリーチェア)が用いられることもある。

食事のテクスチャー(とろみ・形状)を個々の動物に合わせて調整することも誤嚥予防に役立つ。

4感染性肺炎の分類と代表的な病原体

感染性肺炎は病原体によって、細菌性・ウイルス性・真菌性・寄生虫性などに分けられる。細菌性ではボルデテラ・マイコプラズマ・パスツレラ、ウイルス性では犬パラインフルエンザウイルス・犬アデノウイルス2型・ジステンパー、真菌性ではクリプトコッカスなどが代表的。

感染性肺炎は、原因となる病原体の種類によっておもに4つに分けられる。

細菌性肺炎は最も多くみられ、ボルデテラ(Bordetella bronchiseptica)、マイコプラズマ、パスツレラなどが代表的な原因菌である。

ボルデテラやマイコプラズマは、犬伝染性気道(気管支)炎(ケンネルコフ)の原因としても知られる。

ウイルス性肺炎では、犬パラインフルエンザウイルス、犬アデノウイルス2型、犬ジステンパーウイルスなどが原因となる。

これらの多くは混合ワクチンで予防できる対象であり、ウイルス感染をきっかけに二次的な細菌性肺炎を起こすことも多い。

真菌性肺炎では、クリプトコッカスやアスペルギルスなどの真菌が原因となる。

そのほか、肺に寄生する寄生虫による寄生虫性肺炎もある。

実際には、ウイルス感染や体力・免疫力の低下が引き金となって細菌性肺炎を併発するなど、複数の要因・病原体が重なって重症化することが多い。

5肺炎の症状・診断と看護

肺炎では発熱・食欲不振・湿った咳・呼吸困難などがみられる。診断は聴診(肺の異常音)・胸部X線(透過性の低下)・血液検査などで行う。看護では、酸素・ネブライザー・体位変換・適切な栄養と保温を行い、誤嚥のリスクがある動物では予防管理を徹底する。

肺炎の症状としては、発熱、元気消失、食欲不振、湿った(痰のからむような)咳、速くて浅い呼吸や呼吸困難などがみられ、重症では酸素不足によるチアノーゼを示す。

診断は、聴診で肺の異常な呼吸音(湿性ラ音など)を確認し、胸部X線検査で肺の透過性が低下した陰影(白っぽくなる)を評価する。

あわせて血液検査で炎症の有無を調べ、必要に応じて気道からの検体採取で原因菌を調べる。

看護では、酸素が不足している場合の酸素室・酸素吸入、痰を出しやすくするためのネブライザー(吸入)療法や、軽く胸を叩いて排痰を助けるなどの呼吸ケアを行う。

横になりきりの動物では、同じ肺ばかりがうっ血しないように体位変換を行い、十分な栄養・水分(脱水補正)と保温に努める。

誤嚥のリスクがある動物では、起立位給餌(エレベーテッドフィーディング)や食後の体位保持など予防管理を徹底し、呼吸状態・体温・粘膜色を継続的に観察して悪化を早期に発見し、獣医師に報告することが動物看護師の役割である。

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