会陰ヘルニアと肛門周囲の腫瘍

肛門のまわり(会陰部)の病気を学ぶ。直腸を支える骨盤の筋肉群が萎縮してすき間(ヘルニア孔)ができ、そこから臓器が脱出する会陰ヘルニアと、その性ホルモン(アンドロゲン)の関与を理解する。あわせて、未去勢の高齢雄に多い良性の肛門周囲腺腫と、去勢済みでも発生する悪性の肛門周囲腺癌の違いを、図ではなく文章で読んで学ぶ。

1会陰ヘルニアとは

会陰ヘルニアは、肛門のまわり(会陰部)で直腸を支える筋肉群(骨盤隔膜)が萎縮してすき間(ヘルニア孔)ができ、そこを通って骨盤腔や腹腔の臓器・組織が会陰部の皮下へ脱出する病気。中高齢の未去勢の小型〜中型犬に多い。

正常な会陰部では骨盤隔膜(筋肉)が直腸を支えているが、会陰ヘルニアでは筋肉が萎縮してヘルニア孔ができ、直腸・膀胱・小腸・前立腺などが会陰部の皮下へ脱出する。

会陰ヘルニア(えいんヘルニア)は、肛門のまわり(会陰部)に起こるヘルニアである。

肛門のまわりには、直腸を支えている筋肉群(骨盤隔膜)があり、これがしっかりしていることで直腸の位置が保たれている。

この筋肉群が萎縮すると、間にすき間(ヘルニア孔)ができ、そこを通って骨盤腔内や腹腔内の臓器・組織が会陰部の皮膚の下へ脱出してしまう。

脱出する代表的なものには、たわんで曲がった直腸(憩室化した大腸)、膀胱、小腸、前立腺などがある。

中高齢の、去勢をしていない(未去勢の)小型〜中型の雄犬に多くみられるのが特徴である。

2会陰ヘルニアの原因とリスク

性ホルモン(アンドロゲン)の影響で、骨盤腔を構成する筋肉が萎縮し、直腸の支持が脆弱になることが背景にある。未去勢であること、前立腺肥大、慢性の便秘やしぶり(排便時のいきみ)などがリスク要因。若いうちの去勢で予防できる。

会陰ヘルニアの背景には、性ホルモン(雄性ホルモン=アンドロゲン)の関与が強く疑われている。

アンドロゲンの影響などにより、骨盤腔を構成している筋肉(尾骨筋・肛門挙筋・外肛門括約筋など)が萎縮し、直腸を支える力が脆弱になることでヘルニア孔ができる。

リスク要因としては、去勢をしていない(未去勢の)雄であること、前立腺肥大があること、慢性の便秘やしぶり(排便時に強くいきむこと)で会陰部に繰り返し圧がかかることなどが挙げられる。

予防の面では、若いうちに去勢手術をしておくことが有効とされる。

3会陰ヘルニアの症状と治療

もっとも多い症状は、脱出・たわんだ直腸による便秘やしぶり。膀胱が脱出すると排尿が出にくくなり、膀胱が反転・絞扼されると緊急事態になる。治療は、ヘルニア孔を筋肉やメッシュで閉じる整復手術が基本で、あわせて去勢を行う。内科的には摘便・浣腸・便軟化剤で管理する。

会陰ヘルニアでもっとも多い症状は、脱出してたわんだ直腸による便秘やしぶり(排便しようとしても出にくい)である。

膀胱が脱出すると、尿が出にくくなる排尿障害が起こり、膀胱が反転して締めつけられる(絞扼される)と、尿が出せなくなって命に関わる緊急事態になることもある。

治療の基本は外科手術で、開いたヘルニア孔を骨盤隔膜の筋肉どうしを縫い合わせる、あるいはメッシュなどのインプラントを用いて閉じる整復術を行う。

性ホルモンの関与があるため、再発予防の意味でも、手術とあわせて去勢を行うことが多い。

内科的な管理としては、定期的に便を取り除く摘便や浣腸、便を軟らかくする薬(便軟化剤)で症状をやわらげる方法がある。

4肛門周囲腺腫(良性)

肛門周囲腺腫は、肛門のまわりにある肛門周囲腺(皮脂腺が変化した腺)が腫瘍化した良性腫瘍。雄性ホルモン(アンドロゲン)で増殖が促され、エストロゲンで抑えられるため、高齢の未去勢の雄犬に最も多い。去勢が治療・予防に有効。

肛門周囲腺腫は、肛門のまわりに輪状に存在する肛門周囲腺(皮脂腺が変化した腺)が腫瘍化した良性腫瘍である。

この腫瘍は、雄性ホルモン(アンドロゲン)によって増殖が促進され、雌性ホルモン(エストロゲン)によって抑制されるという、ホルモン依存性の性質をもつ。

そのため、アンドロゲンの刺激を受け続けている高齢の未去勢の雄犬に最も多く発生する。

ホルモン依存性であることから、去勢をしてアンドロゲンの供給を断つことが、治療および再発予防に有効である。

良性なので、去勢と切除によって良好に管理できることが多い。

5肛門周囲腺癌(悪性)と見分け方

肛門周囲腺癌は肛門周囲腺由来の悪性腫瘍で、腺腫より頻度は低い。明確なホルモン依存性は乏しく、未去勢・去勢済みの雄、雌のいずれにも発生する。急速に増大する・硬い・潰瘍化するなどが悪性を疑う所見。とくに去勢済みの個体や雌にできた場合は腺癌(悪性)を疑う。

肛門周囲腺癌は、肛門周囲腺から発生する悪性腫瘍で、良性の肛門周囲腺腫に比べると発生頻度は低い。

腺腫と違って明確なホルモン依存性は乏しく、未去勢・去勢済みの雄や、雌のいずれにも発生しうる。

見分けるポイントとして、急速に大きくなる、硬い、潰瘍化する(表面が崩れる)といった所見は悪性(腺癌)を疑わせる。

また、肛門周囲腺腫はアンドロゲン依存性で未去勢の雄に多いため、未去勢の雄にできたものはまず良性の腺腫を疑うが、去勢済みの個体や雌にできた場合や、増大が速い場合には、悪性の肛門周囲腺癌を疑う必要がある。

悪性が疑われる場合は、転移の評価を行い、外科切除を中心に対応する。

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