神経の病気(各論)

イヌ・ネコの神経の病気を、症状の見方から代表的な病気、検査と看護までを学ぶ。神経疾患のサイン、てんかん・発作、椎間板ヘルニアなど脊髄の病気、前庭疾患、そして検査と看護のポイントを、図ではなく文章で読んで理解する。

1神経疾患のサイン

けいれん(発作)、手足の麻痺・ふらつき(運動失調)、首が傾く(斜頸)・眼が揺れる(眼振)、行動の変化、痛み、意識障害などがサイン。脳・脊髄(中枢)の問題か、末梢神経の問題かで現れ方が異なる。

おもな神経の病気を、障害される部位(脳・脊髄という中枢神経と、前庭)で整理した図。同じ神経の病気でも、どこが障害されるかで代表的な疾患と現れる症状が異なる。

神経の病気は、脳・脊髄・末梢神経のどこが障害されるかによって、さまざまな症状を起こす。

代表的なサインには、全身や体の一部のけいれん(発作)、手足の麻痺や、酔ったようにふらつく運動失調、首が傾く斜頸、眼が勝手に揺れる眼振、性格や行動の変化、痛み、意識がぼんやりする意識障害などがある。

これらが、脳や脊髄といった中枢神経の問題によるものか、末梢神経の問題によるものかで、現れ方や対応が変わる。

症状が『いつ・どこに・どのように』出ているかを観察することが、診断の手がかりになる。

2てんかん・発作

発作(けいれん)を繰り返す状態。原因がはっきりしない特発性てんかんも多い。発作中は無理に押さえず口に手を入れず、周囲の危険物を除いて見守り、時間と様子を記録する。治療は抗てんかん薬の継続が中心。

発作(けいれん)は、脳の神経が異常に興奮することで起こり、これを繰り返す状態をてんかんという。

若い犬などでは、検査をしても明らかな原因が見つからない特発性てんかんも多い。

発作中は、全身が硬直したり震えたり、意識を失ったり、よだれや失禁がみられたりする。

対応としては、無理に体を押さえず、口に手や物を入れず、ぶつかってけがをしないよう周囲の危険物を遠ざけ、静かに見守る。

発作の始まった時刻・続いた時間・様子を記録し、可能なら動画に残すと診断に役立つ。

発作が長く続く・繰り返すときは緊急で受診する。

治療は、発作を抑える抗てんかん薬を毎日続けることが中心となり、自己判断で中断しないことが大切である。

3椎間板ヘルニアなど脊髄の病気

椎間板ヘルニアは、背骨の間のクッション(椎間板)が飛び出して脊髄を圧迫する病気。ダックスなど軟骨異栄養性の犬種に多く、背中の痛みや後肢の麻痺を起こす。重症度(グレード)に応じて内科治療や手術を行う。

脊髄は脳と全身をつなぐ神経の通り道で、ここが障害されると麻痺や痛みが起こる。

代表的な椎間板ヘルニアは、背骨と背骨の間でクッションの役割をする椎間板が飛び出し、脊髄を圧迫する病気である。

ダックスフンドやコーギーなど、胴長短足の軟骨異栄養性の犬種に多い。

背中や首の痛み、後肢のふらつきや麻痺、排尿の障害などがみられる。

症状の重さ(グレード)はさまざまで、痛みだけのものから、立てない・足の感覚がないものまである。

軽度なら安静と内科治療(鎮痛など)、重度では脊髄の圧迫を取り除く手術が検討される。

4前庭疾患

前庭は平衡感覚をつかさどる器官で、障害されると首が傾く(斜頸)、眼が揺れる(眼振)、ふらつく(運動失調)などが起こる。高齢で急に起こる特発性のものや、内耳の炎症などが原因となる。

前庭は、体の傾きや回転を感じて平衡(バランス)を保つ器官で、内耳や脳にある。

前庭が障害されると、平衡感覚が乱れ、首が一方向に傾く斜頸、眼が勝手に揺れる眼振、まっすぐ歩けずふらつく運動失調、ぐるぐる回る、吐き気などがみられる。

高齢の動物で、特に原因が分からず急に発症する特発性前庭疾患は比較的多く、多くは時間とともに改善していく。

そのほか、内耳の炎症(中耳炎・内耳炎)などが前庭疾患の原因になることもある。

症状が強い時期は、ふらついて転倒・けがをしないよう、安全な環境で見守ることが大切である。

5脳炎・水頭症・その他の脊髄疾患

脳炎はウイルス・細菌・免疫介在性など原因が多様で、急激な神経症状が特徴。水頭症は脳脊髄液が過剰にたまり脳を圧迫する先天性疾患で小型犬・短頭種に多い。ウォブラー症候群は大型犬の頚椎圧迫による特徴的なふらつき歩行を起こす。

脳や脊髄にはてんかんや椎間板ヘルニア以外にも重要な病気がある。

脳炎は、脳に炎症が起こる病気で、犬ジステンパーウイルスなどの感染・細菌・真菌・原虫のほか、免疫が自分の脳を攻撃する免疫介在性脳炎もある。

けいれん・意識障害・行動変化・頭部の傾きなど多様な神経症状が急速に進行することがある。

水頭症は、脳と脊髄を満たす脳脊髄液が過剰に蓄積し、脳が圧迫される状態である。

先天性が多く、チワワ・マルチーズ・ポメラニアンなどの小型犬や短頭種に多い。

ドーム型の頭、大きな大泉門(頭の骨の合わさっていない軟らかい部分)、外斜視などがみられ、発作・視力障害・行動変化などの神経症状が出ることがある。

ウォブラー症候群は、頚椎(首の骨)の変形や椎間板の異常によって脊髄が圧迫される病気で、ドーベルマン・グレートデーンなど大型犬に多い。

後肢から始まる酔ったようなふらついた歩き方(ウォブリング)が特徴で、進行すると四肢麻痺になることもある。

6検査と看護

神経学的検査で障害の部位を推定し、画像検査(MRI・CT・X線)で詳しく調べる。看護では、発作や症状の記録(動画)、転倒・けがの防止、寝たきりの動物の排泄・床ずれ・体位変換の管理、リハビリの補助などが重要。

神経の病気では、反射や感覚・姿勢などを調べる神経学的検査によって、障害がどこにあるかを推定する。

詳しく調べるには、脳や脊髄を画像にできるMRIやCT、骨を見るX線などが用いられる。

看護では、発作や症状の様子・回数・時間を記録(できれば動画)して伝えることが診断・治療に役立つ。

ふらつきや麻痺のある動物が転倒・けがをしないよう、滑らない床や柵などで安全な環境を整える。

麻痺で動けない・寝たきりの動物では、排泄の介助、床ずれ(褥瘡)の予防のための体位変換、体の清潔の保持が重要になる。

回復期には、関節を動かすなどのリハビリテーションの補助を行うこともある。

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