肺の腫瘍と肺高血圧症

肺にできる腫瘍を、肺そのものから発生する原発性と、ほかの臓器のがんが流れ着く転移性に分けて理解する(イヌ・ネコでは転移性のほうが多い)。原発性で最も多い肺腺癌、症状(咳・胸水・呼吸困難)と治療、そして肺動脈圧が上がって右心に負担をかける肺高血圧症、左心不全・右心不全の症状の違いを、図ではなく文章で読んで学ぶ。

1肺の腫瘍―原発性と転移性

肺の腫瘍には、肺そのものから発生する『原発性』と、ほかの臓器のがんが血流にのって肺に流れ着く『転移性』がある。イヌ・ネコでは転移性のほうが多い。肺は全身の血液が集まるため、骨肉腫・乳腺癌・悪性黒色腫(メラノーマ)などの転移先になりやすい。

原発性肺腫瘍は肺の組織そのものから発生し、転移性肺腫瘍は他臓器のがんが血流にのって心臓を経て肺に流れ着く。全身の血液が集まる肺はがん細胞がとどまりやすい『関所』で、イヌ・ネコでは転移性のほうが多い。

肺の腫瘍は、どこから発生したかによって原発性と転移性に分けられる。

原発性肺腫瘍は、肺の組織そのものから発生したがんである。

転移性肺腫瘍は、ほかの臓器にできたがんが血流にのって肺へ流れ着き、そこで増えたものである。

イヌ・ネコでは、原発性よりも転移性のほうが多くみられる。

これは、全身を回った血液が心臓を経て必ず肺を通るため、肺ががん細胞のとどまりやすい『関所』になっているからである。

転移を起こしやすい代表的ながんには、骨肉腫、乳腺癌、悪性黒色腫(メラノーマ)などがあり、これらでは肺転移の有無を確認することが重要になる。

2原発性肺腫瘍の種類

原発性肺腫瘍のほとんどは悪性。最も多いのは肺腺癌で、ほかに扁平上皮癌、肉腫などがある(原発性そのものは比較的珍しい)。原発性の肺腺癌は1つのかたまり(孤立性)として見つかることが多い。

原発性肺腫瘍は、発生そのものが比較的珍しいが、できた場合はそのほとんどが悪性である。

種類としては、腺組織から発生する肺腺癌が最も多く、ほかに扁平上皮癌や、まれに肉腫などがみられる。

原発性の肺腺癌は、肺の一か所に1つのかたまり(孤立性の腫瘤)として見つかることが多いのが特徴である。

一方、転移性の肺腫瘍は、血流にのって運ばれた多数のがん細胞が散らばるため、両方の肺に複数の結節(多発性)として現れることが多く、画像所見が原発性と異なる傾向がある。

3肺腫瘍の症状と治療

症状は咳・痰、運動時の息切れや喘鳴、進行すると胸水がたまって呼吸困難になる。治療は、孤立した原発性腫瘍では外科切除が第一選択。抗がん剤(ビノレルビン、カルボプラチンなど)も用いる。シスプラチンはネコに禁忌(致死的な肺水腫を起こす)。

肺腫瘍の症状は、はじめは咳や痰として現れ、進むと少しの運動で息切れをしたり、ゼーゼーという喘鳴を伴う呼吸障害が出たりする。

腫瘍が原因で胸腔内に水(胸水)がたまると、肺がふくらめず呼吸困難になることがある。

治療は、1つのかたまりとして限局している原発性腫瘍では、外科的に切除することが第一選択となる。

あわせて、または切除が難しい場合には、抗がん剤による化学療法が用いられ、ビノレルビンやカルボプラチンなどが使われることがある。

抗がん剤には種類ごとに注意点があり、とくにシスプラチンはネコに禁忌で、投与すると致死的な肺水腫を起こすため使ってはならない(ネコにはカルボプラチンが用いられる)。

胸水がたまって苦しいときは、胸腔穿刺で水を抜いて呼吸を楽にする処置を行うこともある。

4肺高血圧症(肺動脈圧の上昇と右心の負担)

肺高血圧症は、肺動脈の内腔が何らかの原因で狭くなるなどして肺動脈の血圧(肺動脈圧)が上がる病気。肺へ血液を送り出す右心室に強い圧の負担がかかり、進行すると右心不全(胸水・腹水など)を引き起こす。

肺高血圧症は、肺動脈の血管の内側が何らかの原因で狭くなるなどして、肺動脈の血圧(肺動脈圧)が異常に高くなる病気である。

肺動脈は右心室から肺へ血液を送り出す血管なので、その圧が上がると、血液を押し出す右心室に強い圧の負担がかかる。

負担が続くと右心室は次第に疲れ、肺へ十分に血液を送り出せなくなって、心臓に負担がかかり心不全(とくに右心不全)を引き起こす。

その結果、右心系に血液がうっ滞し、胸水や腹水がたまるなどの症状が現れる。

症状としては、咳、運動を嫌がる、失神、呼吸困難などがみられる。

肺高血圧症は、肺の病気や心臓病(僧帽弁閉鎖不全症など)、フィラリア症などに続いて起こることが多い。

5心不全の症状―左心不全と右心不全

心不全は心臓のポンプ機能が低下した状態で、むくみや食欲不振などが起こる。左心不全は肺うっ血・肺水腫による症状(易疲労・末梢チアノーゼ・夜間や運動時の呼吸困難)が中心。右心不全は全身(体)のうっ血による症状(腹部膨満・腹水・胸水・肝腫大・むくみ)が中心。

心不全は、心臓のポンプとしての働きが低下し、必要な血液を十分に送り出せなくなった状態で、むくみや食欲不振、元気消失などの全身症状が現れる。

症状は、どちら側の心臓が弱ったかで分けて整理すると覚えやすい。

左心不全では、肺から戻った血液を全身へ送り出す力が落ちて肺に血液がうっ滞(肺うっ血・肺水腫)するため、疲れやすさ(易疲労)、末梢のチアノーゼ、夜間や運動時の呼吸困難、咳などが中心となる。

右心不全では、全身から戻る静脈血を受けて肺へ送る力が落ち、全身(体)の静脈系に血液がうっ滞するため、腹部膨満・腹水・胸水・肝腫大(肝うっ血)・手足のむくみ(浮腫)などが中心となる。

肺高血圧症は右心室に負担をかけるため、進行すると右心不全(胸水・腹水など)につながる、という流れで理解しておくとよい。

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