肝臓の機能と肝疾患(肝硬変・脂肪肝・肝性脳症)

肝臓は、栄養素を扱う『代謝』、有害物質を無害化する『解毒』、脂肪の消化を助ける『胆汁の生成』という3つの大きな役割をもつ。予備能が高く『沈黙の臓器』と呼ばれる一方、ダメージが続くと肝硬変に至る。ネコの肝リピドーシス(脂肪肝)、ビリルビンと黄疸、アンモニアの蓄積による肝性脳症など、代表的な肝疾患の考え方を学ぶ。

1肝臓の3つの大きな役割(代謝・解毒・胆汁生成)

肝臓のおもな機能は3つ。①代謝:吸収した栄養素を使いやすい形に変えて貯蔵し、必要に応じて分解してエネルギーを取り出す。②解毒:有害な物質を毒性の低いものに変えて尿・胆汁へ排出する。③胆汁の生成・分泌:脂肪の消化吸収を助ける胆汁をつくる。

肝臓の代表的な3大機能を整理した図。①代謝で栄養素を扱い、②解毒で有害物質を無害化し、③胆汁を生成・分泌して脂肪の消化吸収を助ける。

肝臓は体内で最大の臓器で、たくさんの化学反応を行う『体の化学工場』とも呼ばれる。

おもな役割は大きく3つある。

1つ目は『代謝』である。

消化管で分解・吸収された栄養素(糖・タンパク質・脂質)を、体が利用しやすい物質につくり変えて貯蔵し、必要なときに分解してエネルギーを取り出す。

たとえば糖をグリコーゲンとして蓄え、空腹時に再び糖に戻して供給する。

2つ目は『解毒』である。

摂取した有害物質や、体内の代謝で生じた有害な老廃物(アンモニアなど)を、毒性の低い物質に変え、尿や胆汁の中へ排出する。

3つ目は『胆汁の生成・分泌』である。

肝臓は胆汁を絶えずつくり出す。

胆汁は脂肪を乳化して消化・吸収を助け、コレステロールや不要物を体外へ排出するのにも使われる(胆汁は胆のうにいったん蓄えられ、食事に合わせて腸へ出される)。

2肝臓は『沈黙の臓器』(高い予備能と再生力)

肝臓は予備能が高く再生力も強いため、機能が少し落ちた程度でははっきりした症状が出にくい。一般に75〜80%もの機能が失われるまで症状が現れにくいため『沈黙の臓器』と呼ばれる。気づいたときには進行していることがある。

肝臓は、予備の能力(予備能)がとても大きく、再生力も強い臓器である。

そのため、多少ダメージを受けて機能が低下しても、残った部分が補ってしまい、はっきりした症状がなかなか現れない。

一般に、肝臓は75〜80%程度の機能が失われるまで明らかな症状が出にくいといわれる。

この性質から、肝臓は『沈黙の臓器』と呼ばれる。

裏を返せば、食欲不振・元気消失・黄疸などの症状がはっきり出てきたときには、すでに肝障害がかなり進行していることがある、ということでもある。

だからこそ、健康診断の血液検査(肝酵素やビリルビンなど)で早めに異常をとらえることが大切で、動物看護師はその採血・検査の介助や、飼い主への定期健診のすすめにおいて重要な役割を担う。

3肝硬変とネコの肝リピドーシス(脂肪肝)

肝硬変は、長くダメージを受け続けた肝臓が硬く変化して機能しなくなる病気。ネコの肝リピドーシス(脂肪肝)は、食欲不振で栄養が不足すると体脂肪が分解されて肝臓に急激に脂肪がたまり機能が低下する、ネコに特徴的な肝疾患。

肝臓の病気はさまざまあるが、ここでは代表的な2つを取り上げる。

肝硬変は、肝炎や中毒などで肝臓が長期間ダメージを受け続けた結果、肝細胞が壊れて線維(かたい組織)に置きかわり、肝臓全体が硬く変化して本来の機能を果たせなくなった状態である。

進行すると元には戻りにくい。

ネコの肝リピドーシス(脂肪肝)は、ネコに特徴的な肝疾患である。

何らかの理由でネコが十分に食事をとれず食欲不振・絶食状態が続くと、エネルギーを補うために体内の脂肪が一気に分解されて肝臓へ運ばれ、肝臓に過剰な脂肪が急激に蓄積する。

脂肪でいっぱいになった肝臓は機能が低下し、放置すると肝不全に至る。

とくに肥満のネコが数日間食べない状態が続くと発症しやすい。

症状は、食欲低下・元気消失、黄疸などで、治療では十分な栄養を確実に与えること(強制給餌やチューブによる栄養補給)が重要になる。

4ビリルビンと黄疸

ビリルビンは、古くなった赤血球のヘモグロビンが分解されてできる黄色い色素。通常は肝臓で処理されて胆汁中に排出されるが、肝機能が低下すると血液中のビリルビンが増え、皮膚や粘膜が黄色くなる『黄疸』が現れる。

ビリルビンは、寿命を終えた赤血球が壊れ、その中のヘモグロビンが分解されてできる黄色い色素(胆汁色素)である。

ビリルビンは血液で肝臓へ運ばれ、肝臓で処理(抱合)されて胆汁の成分として腸へ排出される。

ところが、肝機能が低下したり、胆汁の流れがせき止められたり、赤血球が大量に壊れたりすると、ビリルビンが処理・排出しきれず血液中にたまる(高ビリルビン血症)。

血液中のビリルビンが増えると、皮膚・粘膜・白目(強膜)などが黄色く染まる『黄疸(おうだん)』が現れる。

黄疸は、肝臓・胆道の病気や重い溶血(赤血球の破壊)を示す重要なサインで、ネコの肝リピドーシスや肝硬変、胆道閉塞などでみられる。

血液検査ではビリルビン値の上昇として確認される。

5アンモニア・門脈体循環シャントと肝性脳症

腸でつくられたアンモニア(有害な老廃物)は、通常は門脈から肝臓へ運ばれて解毒される。肝機能が低下したり、門脈の血液が肝臓を通らず大循環へ流れ込む門脈体循環シャント(PSS)があると、解毒されないアンモニアが全身に回り、脳のはたらきを障害する『肝性脳症』を引き起こす。

腸内では、タンパク質などが分解される過程で、有害な老廃物であるアンモニアが生じる。

通常、このアンモニアを含む腸からの血液は、門脈という血管を通っていったん肝臓へ運ばれ、肝臓でアンモニアが毒性の低い尿素などに変えられて(解毒)から全身へ送られる。

ところが、肝硬変などで肝機能が大きく低下すると、アンモニアを十分に解毒できず、血液中のアンモニア濃度が上昇する(高アンモニア血症)。

また、生まれつきや病気により、門脈の血液が肝臓を通らずに直接大循環へ流れ込んでしまう『門脈体循環シャント(PSS)』があると、アンモニアが肝臓で処理されないまま全身に回る。

PSSでは肝臓が小さくなり、タンパク質の合成低下による低タンパク(低アルブミン)血症もみられることがある。

解毒されないアンモニアが脳に達すると、脳のはたらきが障害され、ふらつき・元気消失・よだれ・徘徊・けいれん・意識障害などの神経症状(肝性脳症)が現れる。

高タンパクの食事のあとに悪化しやすいのも特徴である。

理解できたら腕試し!
このテーマの確認テスト