レプトスピラ症・猫白血病ウイルス・猫クラミジア感染症

代表的な感染症3つを学ぶ。レプトスピラ症は、らせん状のグラム陰性菌(スピロヘータ)レプトスピラによる人獣共通感染症で、感染症法の四類(届出が必要)。おもにネズミが保菌し、水害や地震のあとに尿で汚染された水・土から感染する。多くは無症状(不顕性感染)だが、出血型(カニコーラ型)や、より重い黄疸出血型(イクテロヘモラジー型=ワイル病)もある。猫白血病ウイルス(FeLV)はレトロウイルスで、生まれたての子猫が感染するとほぼ100%持続感染し、造血器腫瘍・免疫抑制・貧血を起こす(年齢が上がるほど持続感染しにくい)。猫クラミジア感染症は偏性細胞内寄生の細菌(クラミジア・フェリス)による結膜炎が中心で、テトラサイクリン系で治療する。これらを文章と確認問題で理解する。

1レプトスピラ症の基礎(人獣共通・四類)

レプトスピラ症は、らせん状のグラム陰性菌(スピロヘータ)レプトスピラによる人獣共通感染症で、感染症法では四類(届出が必要)。おもにネズミなどが菌を保有し(保菌しても無症状)、その尿で汚染された水や土から、傷口や粘膜を通して感染する。水害や地震のあとに感染が増えることがある。

3疾患(レプトスピラ症・猫白血病ウイルスFeLV・猫クラミジア感染症)の病原体・主症状・ポイントを対比した表。レプトスピラは人獣共通(四類)の細菌で黄疸・出血・腎障害、FeLVはレトロウイルスで造血器腫瘍・免疫抑制・貧血、猫クラミジアは偏性細胞内寄生の細菌で結膜炎が中心である。

レプトスピラ症は、レプトスピラという細菌による感染症で、人にも動物にもうつる人獣共通感染症(動物由来感染症)である。

レプトスピラは、らせん状(ねじれた形)をしたグラム陰性の細菌で、スピロヘータの仲間である。

ヒトの感染症を分類する感染症法では、レプトスピラ症は四類感染症に位置づけられ、診断した医師の届出が必要な届出感染症である。

自然界では、おもにネズミなどのげっ歯類が菌を保有しており、ネズミ自身は保菌していても症状を示さないことが多い。

保菌動物は、長期にわたって尿の中に菌を排出する。

そのため、菌を含む尿で汚染された水や土壌に、皮膚の傷や口・目などの粘膜が触れることで感染する。

とくに、水害や地震などの災害のあとは、汚染された水に触れる機会が増え、感染が広がることがある。

2レプトスピラ症の病型とワクチン

感染しても多くは無症状(不顕性感染)だが、ほかの動物・人への感染源になる。症状の出る型には、出血型(おもにカニコーラ型による。発熱・嘔吐・血便・血尿など)と、より重い黄疸出血型(おもにイクテロヘモラジー型による。ワイル病。黄疸・出血・腎障害)がある。レプトスピラには多くの血清型があり、ワクチンで防げるのは数種類のみ。

レプトスピラに感染しても、多くは症状を示さない不顕性感染で、自然に治ることも多い。

ただし、不顕性感染の動物も尿に菌を排出し、ほかの動物や人への感染源になるため注意が必要である。

症状が出る場合、その重さによっていくつかの型に分けられる。

出血型は、おもにカニコーラ型の感染で起こり、40度前後の高熱、食欲不振、結膜の充血、嘔吐、血便、血尿などがみられる。

黄疸出血型は、おもにイクテロヘモラジー型(黄疸出血型レプトスピラ)の感染で起こり、強い黄疸・粘膜からの出血・腎障害などを起こす重い型で、ヒトでは『ワイル病』とよばれる。

黄疸出血型は出血型(カニコーラ型)よりも重篤になりやすい。

レプトスピラには非常に多くの型(血清型)があり、ワクチンで予防できるのはそのうちの数種類に限られる。

犬のワクチンでは、カニコーラ型・イクテロヘモラジー型の2種類をカバーするもの(7種混合など)や、さらにグリッポチフォーサ型・ポモナ型を加えた4種類をカバーするもの(10種混合など)がある。

3猫白血病ウイルス(FeLV)の感染と年齢抵抗性

猫白血病ウイルス(FeLV)はレトロウイルス。感染猫との接触(グルーミング・唾液・咬傷)、交尾、母子感染などで広がる。感染後に体に住みつく『持続感染』になるかは年齢に大きく左右され、生まれたての子猫はほぼ100%、離乳後は約50%、1歳以上では10〜20%程度と、年齢が上がるほど持続感染しにくくなる(年齢抵抗性)。

猫白血病ウイルス(FeLV)は、レトロウイルス(RNAウイルスの一種)である。

感染した猫との接触で広がり、グルーミング(毛づくろい)や食器の共有による唾液、咬傷(けんか)、交尾、母猫から子猫への母子感染などが感染経路になる。

感染すると、ウイルスはまず口やのどのリンパ組織で増え、そこから血液に入って全身(骨髄など)に広がる。

ここで、ウイルスを体から排除できずに住みつかせてしまう状態を『持続感染』という。

持続感染になるかどうかは、感染したときの年齢に大きく左右される(年齢抵抗性)。

生まれたての子猫が感染するとほぼ100%が持続感染になり、発症しやすく予後も悪い。

離乳期を過ぎた子猫では約50%、1歳以上の成猫では10〜20%程度と、年齢が上がるほど持続感染しにくくなる。

つまり、若い猫ほど感染・発症のリスクが高いため、子猫の管理がとくに重要である。

4FeLVの病態・検査・治療と消毒

持続感染すると、ウイルスが長く体に残り、リンパ腫・白血病などの造血器腫瘍、免疫抑制(二次感染しやすくなる)、貧血を起こす。無症状の時期もある。診断は血液でFeLV抗原を調べる院内検査キット。治療は対症療法が中心で、インターフェロンも使われる(効果は確実ではない)。FeLVはエンベロープをもち、一般的な消毒薬で消毒できる。

FeLVが持続感染すると、ウイルスが長期間体に残り、さまざまな病気を引き起こす。

代表的なものに、リンパ腫や白血病などの造血器腫瘍(血液のがん)、免疫が低下して感染症にかかりやすくなる免疫抑制、そして貧血がある。

ただし、しばらくは無症状で経過することもある。

診断は、血液中のFeLVの抗原を調べる院内の検査キットが普及しており、少量の採血で短時間に結果が出る。

FeLVに効く確実な特効薬はなく、治療は症状をやわらげる対症療法が中心となる。

猫自身の免疫を助ける目的でインターフェロンが使われることもあるが、効果が確実とまではいえない。

FeLVはエンベロープ(外膜)をもつウイルスなので、消毒薬で比較的容易に不活化でき、グルタルアルデヒド・ポビドンヨード・消毒用エタノール・次亜塩素酸ナトリウムなどが使える。

予防はワクチン(ノンコア)があり、屋外に出る猫や多頭飼育など感染リスクの高い猫で接種を検討する。

5猫クラミジア感染症

猫クラミジア感染症は、クラミジア・フェリスという細菌による感染症。クラミジアは球状でグラム陰性、生きた細胞の中でしか増えられない偏性細胞内寄生の細菌。症状は結膜炎が中心で、鼻炎、重症では結膜どうしの癒着(眼球癒着)や肺炎を起こす。診断はPCR、治療はテトラサイクリン系の抗菌薬(点眼を含む)。

猫クラミジア感染症は、クラミジア・フェリス(Chlamydia felis)という細菌による感染症である。

クラミジアは、球状でグラム陰性の細菌だが、自分だけでは増えることができず、生きた細胞の中でのみ増殖できる『偏性細胞内寄生』の細菌である。

(同じ仲間に、鳥から人にうつるオウム病の病原体であるクラミジア・シッタシがあり、これは人獣共通感染症として重要である。

)猫クラミジア感染症の症状は、目の結膜の炎症(結膜炎)が中心で、鼻炎(くしゃみ・鼻水)をともなうこともある。

重症になると、はれた結膜どうしがくっつく癒着(眼球癒着)を起こしたり、肺炎に進んだりすることがある。

結膜炎は、猫カリシウイルスや猫ヘルペスウイルスでも起こるため、これらとの見分け(鑑別)が必要で、診断にはPCR法でクラミジアの遺伝子を検出する。

治療には、クラミジアによく効くテトラサイクリン系(ドキシサイクリンなど)の抗菌薬を用い、目には抗菌薬の点眼も行う。

6まとめ ― 人獣共通感染症と看護の注意

レプトスピラ症は人にもうつる四類感染症で、感染動物の尿の扱いに注意(手袋・消毒)。FeLVは猫同士でうつるが人にはうつらず、感染猫は隔離して多頭飼育での拡大を防ぐ。猫クラミジアやオウム病など、目・呼吸器の感染症では飼い主・スタッフの衛生管理も大切。

これらの感染症では、それぞれに応じた注意が必要である。

レプトスピラ症は人にもうつる人獣共通感染症(四類)なので、感染が疑われる動物の尿や血液を扱うときは、手袋を着け、しっかり消毒し、自分への感染を防ぐ。

猫白血病ウイルス(FeLV)は猫同士でうつるが人にはうつらない。

感染猫は他の猫と分けて飼い、多頭飼育やシェルターでの広がりを防ぐことが大切である。

猫クラミジア感染症は猫の目・呼吸器の感染症で、まれに人の結膜炎の原因になることもあり、オウム病(クラミジア・シッタシ)は人に重い肺炎を起こすため、目やにや分泌物を扱うときの手洗い・消毒など、衛生管理に気をつける。

動物看護師は、それぞれの感染経路に応じた隔離・消毒・防護を行い、院内感染や人への感染を防ぐ役割をもつ。

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