代表的な検査法(PCR・ELISA・薬剤感受性・クームス)

動物医療では、病気の原因を突き止めるためにさまざまな検査法が使われる。遺伝子を増やして病原体を見つけるPCR法、抗原抗体反応を利用するELISA、細菌にどの抗菌薬が効くかを調べる薬剤感受性試験、赤血球に自己抗体が付いているかを調べるクームス試験(直接抗グロブリン試験)。それぞれの原理と『何を調べる検査か』を整理する。

1PCR法(ポリメラーゼ連鎖反応)

PCR法(ポリメラーゼ連鎖反応)は、DNA(遺伝子)の特定の部分を、酵素(DNAポリメラーゼ)を使って何百万倍にも増やす(増幅する)技術。微量の病原体の遺伝子でも増幅して検出できるため、感度が高く、感染症の診断などに使われる。

代表的な4つの検査法(PCR・ELISA・薬剤感受性試験・クームス試験)について、その原理と「何がわかるか」を並べた一覧表。PCRは遺伝子、ELISAは抗原・抗体を見る点が対比になる。

PCR法(ポリメラーゼ連鎖反応)は、DNA(遺伝子)のねらった部分を、DNAを合成する酵素(DNAポリメラーゼ)を使って、くり返し反応させることで何百万〜何十億倍にも増やす(増幅する)技術である。

増やしたいDNA(鋳型)、ねらった部分にくっつく短いDNA(プライマー)、DNAの材料(ヌクレオチド)、DNAポリメラーゼを混ぜ、温度の上げ下げをくり返すことで、目的のDNAだけが増えていく。

ごく少量しかない病原体(ウイルスや細菌など)の遺伝子でも、増幅すれば検出できるようになるため、PCR法は非常に感度が高い検査である。

動物医療では、感染症の病原体(その遺伝子)を見つける診断に使われる。

ポイントは、PCR法が『遺伝子(DNA)を増やして検出する検査』だということである。

2ELISA(酵素免疫測定法)

ELISA(エライザ)は、抗原と抗体が特異的に結びつく『抗原抗体反応』を利用して、目的の抗原または抗体を検出・測定する検査。酵素を目印(標識)に使い、色の変化などで結果を読む。感染症の抗体・抗原検査やホルモン測定などに広く使われる。

ELISA(エライザ、酵素免疫測定法)は、抗原(病原体など)と抗体が、鍵と鍵穴のようにぴったり特異的に結びつく『抗原抗体反応』を利用した検査である。

調べたい抗原(または抗体)に対して、それと結びつく抗体(または抗原)を用意し、その目印として酵素を付けておく(標識する)。

抗原抗体反応が起これば、酵素のはたらきで基質の色が変わるなどの反応が起こり、これを測定して、目的のものがあるか・どれくらいあるかを調べる。

ELISAは、感染症の抗体検査・抗原検査、ホルモンの測定、アレルギーの検査など、幅広く使われている。

ポイントは、ELISAが『抗原抗体反応を利用して、抗原や抗体を検出・測定する検査』だということである。

PCRが遺伝子(DNA)を見るのに対し、ELISAは抗原・抗体(タンパク質)を見る、という違いを押さえておく。

3薬剤感受性試験

薬剤感受性試験は、感染症の原因となっている細菌に対して、どの抗菌薬(抗生物質)が効くか・効かないか(感受性/耐性)を調べる検査。結果をもとに、その細菌に効く適切な抗菌薬を選ぶ。むやみな抗菌薬の使用を避け、耐性菌を防ぐうえでも重要。

薬剤感受性試験は、感染症を起こしている細菌を培養し、その細菌に対していろいろな抗菌薬(抗生物質)がどれくらい効くかを調べる検査である。

細菌を培地で育て、各抗菌薬に対して、菌の発育が抑えられるか(効く=感受性あり)、抑えられないか(効かない=耐性)を判定する。

この結果をもとに、その感染症の原因菌に本当に効く抗菌薬を選んで治療できる。

やみくもに抗菌薬を使うのではなく、効く薬をねらって使うことで、治療効果を高め、効かない薬を使う無駄や、耐性菌が増えるのを防ぐことにつながる。

ポイントは、薬剤感受性試験が『細菌にどの抗菌薬が効くかを調べ、抗菌薬を選ぶための検査』だということである。

動物看護師は、検体(膿・尿など)の適切な採取・取り扱いを通じて、この検査を支える。

4クームス試験(直接抗グロブリン試験)

クームス試験(直接抗グロブリン試験)は、赤血球の表面に、自分の体の抗体や補体がくっついていないかを調べる検査。免疫介在性溶血性貧血(IMHA)の診断に用いられ、陽性ならIMHAが疑われる。

クームス試験(直接抗グロブリン試験、直接クームス試験)は、赤血球の表面に、本来は付かないはずの『自分の体の抗体(自己抗体)や補体』がくっついていないかを調べる検査である。

検査では、抗グロブリン試薬(赤血球に付いた抗体・補体に結合する試薬)を加え、赤血球が凝集(かたまる)するかどうかを見る。

凝集すれば、赤血球に抗体・補体が付いている(陽性)と分かる。

この検査は、免疫が自分の赤血球を攻撃して壊す免疫介在性溶血性貧血(IMHA)の診断に用いられ、陽性であればIMHAが強く疑われる。

ポイントは、クームス試験が『赤血球に付いた自己抗体・補体を調べ、IMHAの診断に使う検査』だということである。

(赤血球に付いた抗体を調べる『直接』に対し、血清中の抗体を調べる『間接』クームス試験もあるが、IMHAの診断には直接クームス試験を用いる。

5検査法の整理と動物看護

PCR=遺伝子(DNA)を増やして病原体を検出、ELISA=抗原抗体反応で抗原・抗体を検出、薬剤感受性試験=細菌に効く抗菌薬を選ぶ、クームス試験=赤血球の自己抗体を調べIMHAを診断。看護では、検体の正しい採取・取り扱い・保存と、検査の介助が役割。

ここまでの検査法を、『何を調べるか』で整理する。

PCR法は、遺伝子(DNA)を増幅して、病原体などを高感度に検出する検査。

ELISAは、抗原抗体反応を利用して、抗原や抗体(タンパク質)を検出・測定する検査。

薬剤感受性試験は、細菌にどの抗菌薬が効くかを調べて、適切な抗菌薬を選ぶための検査。

クームス試験(直接抗グロブリン試験)は、赤血球に付いた自己抗体・補体を調べて、免疫介在性溶血性貧血(IMHA)を診断する検査である。

これらの検査が正しい結果を出すには、検体(血液・尿・膿・スワブなど)を正しく採取し、適切に取り扱い・保存することが欠かせない。

動物看護師は、検査に応じた採血・採材の介助、検体の正しい容器・保存方法の選択、ラベルの確認、検査の準備・介助などを担い、正確な診断を支える。

それぞれの検査が『何を見ているのか』を理解しておくと、検体の扱いや飼い主への説明にも役立つ。

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