腸重積(イヌ・ネコ)―腸が腸に入り込む緊急疾患

腸重積は、腸管の一部が望遠鏡(テレスコープ)のように隣り合う腸管の内側へ入り込んでしまう病態。回盲部など小腸〜大腸のつなぎ目に多く、子犬・子猫など若齢に好発する。腸炎(感染症・寄生虫・パルボ)や消化管異物・腫瘍などによる腸の運動異常が引き金になる。嘔吐の反復・イチゴゼリー状の粘血便・腹痛が特徴で、腹部超音波の標的像(ターゲットサイン)で診断し、外科的整復や壊死部の腸切除を行う腸閉塞の緊急疾患。

1腸重積とは(病態)

腸重積(intussusception)は、腸管の一部が隣り合う腸管の内側に望遠鏡のように入り込んでしまう状態。入り込んだ腸が締めつけられて血流が悪くなり、放置すると腸閉塞・腸の壊死に進む外科的緊急疾患である。

腸重積では、腸管の一部(重積部・内筒)が隣り合う腸管(鞘部・外筒)の内側へ望遠鏡のように入り込む。重なった部分の血管が締めつけられて血流障害・むくみが進み、内容物が通過できない腸閉塞となり、放置すると壊死に至る。

腸重積(ちょうじゅうせき/intussusception)とは、腸管のある部分が、その先(あるいは手前)の腸管の中へ、望遠鏡(テレスコープ)の筒が縮むようにめり込んでしまう病態である。

入り込む側の腸を「重積部(内筒)」、それを受け入れる外側の腸を「鞘部(外筒)」という。

腸が二重に重なった部分では、腸壁や腸間膜の血管が締めつけられて血流(とくに静脈の戻り)が妨げられ、むくみ(うっ血・浮腫)が進む。

その結果、内容物が通過できなくなる『腸閉塞』の状態となり、さらに進むと締めつけられた腸が酸素不足で壊死(えし)に陥る。

腸が壊死すると穿孔(穴があく)して腹膜炎やショックを招くため、腸重積は早期の診断と外科的対応が必要な緊急疾患である。

2好発部位と好発年齢

好発部位は回盲部(小腸=回腸と大腸=盲腸・結腸のつなぎ目)をはじめとする小腸。好発年齢は子犬・子猫など若齢に多い(とくに1歳未満)。下痢や寄生虫感染を起こしやすい時期と重なる。

腸重積は腸のどこにでも起こり得るが、とくに『回盲部(かいもうぶ)』に多い。

回盲部は小腸の末端(回腸)と大腸の始まり(盲腸・結腸)が接続する部分で、腸の太さや動きが変わる境目のため重積が起こりやすい。

そのほか空腸・回腸などの小腸でもみられる。

好発年齢は『子犬・子猫など若齢』で、とくに1歳未満に多いとされる。

若齢に多い理由として、この時期は下痢を起こしやすく、寄生虫感染やウイルス性腸炎(パルボウイルスなど)にもかかりやすいことが挙げられる。

これらが腸の異常な運動を引き起こし、重積の引き金になると考えられている。

3原因

腸の運動(蠕動)が乱れることが引き金。①腸炎(細菌・ウイルス・寄生虫による感染性腸炎、とくにパルボウイルスや回虫など)②消化管異物・線状異物 ③消化管腫瘍(リンパ腫など)④IBD(炎症性腸疾患)⑤腹部手術後 など。若齢では感染性腸炎や寄生虫が特に多い。

腸重積は、腸の蠕動運動(内容物を先へ送る動き)のリズムが乱れて、一部の腸が強く動いた拍子に隣の腸へめり込むことで起こる。

その『きっかけ(基礎疾患)』として次のものが知られる。

【①感染性腸炎】細菌・ウイルス・寄生虫による腸炎が腸の運動を乱す。

とくに子犬ではパルボウイルス感染症(致死的な出血性腸炎)や、回虫などの寄生虫感染がきっかけになりやすい。

【②消化管異物】とくに紐状の『線状異物』は腸を手繰り寄せて重積を誘発しやすい。

【③消化管腫瘍】高齢動物ではリンパ腫などの腫瘍が腸壁にできて、そこを起点に重積が起こることがある。

【④炎症性腸疾患(IBD)】慢性的な腸の炎症も誘因となる。

【⑤腹部手術後】開腹手術のあと、一時的に腸の動きが乱れて重積を起こすことがある。

若齢の症例では、感染性腸炎や寄生虫が原因として特に重要であり、定期的な駆虫やワクチン接種が予防につながる。

4症状

嘔吐の反復、イチゴゼリー状の粘血便(粘液+血液が混じった便)、腹痛(おなかを触られるのを嫌がる)が特徴。進行すると元気・食欲の低下、脱水、腸閉塞による全身状態の悪化(ショック)に至る。症状が良くなったり悪くなったり変動することもある。

腸重積の症状は、重積の程度や部位によって幅があるが、代表的なものは次のとおり。

【嘔吐】腸の通過が妨げられるため、嘔吐を繰り返すようになる。

【粘血便(イチゴゼリー状)】重積部の腸粘膜がうっ血・損傷して、粘液と血液が混じった『イチゴゼリー状』と表現される特徴的な便が出ることがある。

【腹痛】おなかが痛むため、抱かれたり腹部を触られたりするのを嫌がる。

背中を丸めてうずくまる姿勢をとることもある。

【元気・食欲の低下、脱水】嘔吐・下痢が続くと脱水し、ぐったりして食欲も落ちる。

【全身状態の悪化】完全な腸閉塞や腸の壊死に進むと、脱水・電解質異常・敗血症性ショックなどで急速に全身状態が悪化する。

なお、内容物がわずかに通過できる不完全な重積では、症状が一時的に軽くなったり再び悪化したりと『変動』することがあり、軽い胃腸炎と紛らわしいので注意する。

5診断

腹部触診で『ソーセージ状の硬い腸塊』を触れることがある。確定診断に最も有用なのは腹部超音波検査で、腸を輪切り(短軸)にした像で腸壁が同心円状に何層も重なって見える『標的像(ターゲットサイン/的のような像)』が特徴。X線では腸閉塞像を示すが重積そのものは写りにくい。

【触診】腹部を触ると、重積した部分が『ソーセージ状の硬いかたまり(腸塊)』として触れることがあり、診断の手がかりになる。

【腹部超音波検査(エコー)】腸重積の診断に最も有用な検査。

重積部を輪切りにした短軸像では、腸壁が二重・多重に重なって『同心円状(的・標的のような像)』に見える。

これを『標的像(ターゲットサイン、target sign)』と呼び、見られれば腸重積を強く疑える。

縦に切った長軸像では層状(ミルフィーユ状)に見える。

【X線検査】腸閉塞を示すガス・拡張した腸管などの所見は得られるが、重積そのものははっきり写らないことも多い。

バリウム造影で通過障害を確認することもある。

若齢で嘔吐・粘血便・腹痛があり腹部に腫瘤を触れる場合は、腸重積を念頭に置いて速やかに画像検査へ進む。

6治療と動物看護

治療は外科手術が基本。開腹して重積を『整復(もとに戻す)』し、腸が壊死している場合は壊死部を切除してつなぎ直す『腸切除・吻合』を行う。原因(寄生虫・異物・腫瘍など)の除去・治療も重要。再発することがあるため術後の観察と、輸液・疼痛管理・栄養管理などの看護が必要。

【外科的整復】腸重積の治療は外科手術が原則。

開腹して、入り込んだ腸を愛護的に引き出して元の状態に戻す(整復する)。

【腸切除・吻合】重積部の腸がすでに壊死している場合は、整復だけでは不十分なため、壊死した腸管を部分的に切除し、健康な腸どうしをつなぎ合わせる(腸切除・吻合術)。

【原因への対処】寄生虫が原因なら駆虫、異物なら摘出、腫瘍ならその治療と、引き金になった基礎疾患への対応も同時に行う。

【再発に注意】腸重積は手術後に再発することがあるため、術後も症状の再燃に注意して観察する。

【動物看護のポイント】手術前後の脱水・電解質補正のための輸液管理、嘔吐・腹痛に対する制吐・疼痛管理、術後の食事再開(少量から)と便・嘔吐の観察、創部の管理を行う。

飼い主には再発の可能性と、若齢では駆虫・ワクチンによる予防の大切さを説明する。

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