免疫介在性血小板減少症(IMT)

免疫介在性血小板減少症(IMT)は、本来は外敵を攻撃する免疫が、誤って自分自身の血小板を破壊してしまう自己免疫疾患。血小板が減ると止血ができなくなり、点状出血・紫斑(青あざ)・鼻出血・血尿などの出血傾向が現れる。病態、症状、一次性・二次性の区別、プレドニゾロンを中心とした免疫抑制療法と看護を学ぶ。

1血小板のはたらきとIMTとは

血小板は出血したときに傷口に集まって血を止める(一次止血)細胞成分。免疫介在性血小板減少症(IMT)は、免疫が誤って自分の血小板を攻撃・破壊してしまう自己免疫疾患で、血小板が極端に減って血が止まりにくくなる。

IMTでは、免疫が誤って自分自身の血小板を攻撃・破壊し、血小板が極端に減少することで出血傾向が現れる。一次止血を担う血小板が減るため、血が止まりにくくなる。

血小板は、血液中を流れる小さな細胞成分で、血管が傷ついて出血したときに、その傷口に集まって栓をつくり、最初に血を止める(一次止血)役割を担っている。

免疫介在性血小板減少症(IMT:Immune-Mediated Thrombocytopenia。

ITPとも呼ばれる)は、本来は細菌やウイルスなど外敵を攻撃するはずの免疫が、誤って『自分自身の血小板』を異物とみなして攻撃し、破壊してしまう自己免疫疾患である。

血小板が次々に破壊されて極端に減ると、わずかな刺激でも出血しやすく、いったん出血すると止まりにくくなる(出血傾向)。

つまりIMTは、『自分で自分の血小板を壊して、血が止まらなくなる病気』とまとめられる。

イヌに多くみられ、中年の雌に好発するとされる。

重症では命に関わることもあるが、治療に反応すれば予後は比較的良好なことが多い。

2症状(出血傾向のサイン)

血小板減少による出血傾向が主症状。皮膚や粘膜の点状出血(赤い小さな点)、紫斑・斑状出血(青あざ)、鼻出血、歯ぐきからの出血、血尿、黒いタール状の便(メレナ)などがみられる。元気消失や粘膜蒼白を伴うこともある。

IMTの主な症状は、血小板が減ることで起こる『出血傾向』である。

出血は体のさまざまな場所にみられる。

皮膚や歯ぐき・口の中などの粘膜に、赤い小さな点のような出血(点状出血)や、もう少し広い紫色〜青色のあざ(紫斑・斑状出血=いわゆる青あざ)が現れる。

そのほか、鼻血(鼻出血)、歯ぐきからの出血、尿に血がまじる血尿、便に血がまじったり黒いタール状の便(メレナ)になる、嘔吐物に血がまじるなどの消化管出血もみられる。

出血が続くと貧血になり、歯ぐきや結膜が白っぽくなる(粘膜蒼白)、元気がない、ぐったりするといった症状を伴うことがある。

皮膚の点状出血や青あざ、原因のはっきりしない出血が複数みられたときは、IMTなど血小板減少を起こす病気を疑う。

3一次性と二次性、診断

IMTには、明らかな原因がない一次性(特発性)と、感染症・腫瘍・薬剤・他の免疫疾患などがきっかけの二次性がある。診断は血液検査で血小板数の著しい減少を確認し、出血を起こす他の病気(DICや凝固異常など)を除外して行う。

IMTは、原因によって大きく2つに分けられる。

明らかなきっかけが見つからないものを一次性(特発性)IMTといい、何らかの基礎疾患がきっかけで起こるものを二次性IMTという。

二次性の原因には、感染症、腫瘍、薬剤やワクチンへの反応、他の免疫介在性疾患(免疫介在性溶血性貧血を合併することもある)などがある。

二次性の場合は、もとの原因(基礎疾患)への対応も必要になる。

診断では、まず血液検査で血小板数が著しく減少していることを確認する。

あわせて、貧血の有無や全身状態を評価する。

出血傾向を起こす他の病気——播種性血管内凝固(DIC)、肝疾患や中毒による凝固因子の異常、骨髄の病気など——を検査によって除外していくことが重要である。

血小板を破壊する自己抗体を直接証明するのは難しいため、著しい血小板減少と他疾患の除外、治療への反応などを総合してIMTと診断することが多い。

4治療(プレドニゾロンと免疫抑制剤)

治療の柱は、暴走した免疫を抑えるための副腎皮質ステロイド『プレドニゾロン』。重症例や効果が不十分な場合、ステロイドの量を減らす目的で、シクロスポリン・ビンクリスチン・ヒト免疫グロブリンなどの免疫抑制療法を併用する。重度の貧血には輸血を行うこともある。

IMTの治療は、誤って自分の血小板を攻撃している免疫のはたらきを抑えることが中心となる。

治療の柱は、副腎皮質ステロイド(糖質コルチコイド)であるプレドニゾロンで、免疫抑制量を用いて血小板の破壊を抑える。

多くの症例ではまずプレドニゾロンで寛解(血小板数の回復)をめざす。

重症のIMTや、プレドニゾロンだけでは効果が不十分な場合、あるいはステロイドの副作用を減らして効果を高める目的で、作用のしくみが異なる免疫抑制剤を併用する。

代表的なものにシクロスポリン、ビンクリスチン、ヒト免疫グロブリン(人IVIG)、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリンなどがある。

治療に反応して血小板が回復するまでには数日〜10日ほどかかることがあり、その間の出血管理が重要である。

重度の貧血や危険な出血がある場合には輸血を行うこともある。

血小板数が正常に戻れば予後は比較的良好だが、再発することもあるため、ステロイドは急にやめず、獣医師の指示に従って徐々に減らしていく。

5IMTの動物看護

出血を悪化させないことが看護の要。打撲・転落を避け、安静を保ち、筋肉注射や採血部位の圧迫止血に配慮する。点状出血・血尿・便の色・粘膜色・元気を観察し、ステロイドの副作用(多飲多尿・易感染)にも注意して、確実な投薬と再発の早期発見を支える。

IMTの動物看護では、出血を助長しないことが最も大切である。

ぶつける・転落する・激しく遊ぶといった衝撃で出血が悪化するため、安静を保ち、ケージレストなどで安全な環境を整える。

採血や注射のあとはしっかり圧迫して止血し、出血リスクの高い筋肉注射はできるだけ避けるなど、処置にも配慮する。

観察では、皮膚・粘膜の点状出血や青あざが増えていないか、鼻出血・血尿の有無、便の色(黒いタール状便は消化管出血のサイン)、歯ぐきや結膜の色(蒼白は貧血のサイン)、元気・食欲を継続的にチェックし、変化を獣医師に報告する。

治療で使うプレドニゾロンなどのステロイドには、多飲多尿・食欲増加・易感染(感染しやすくなる)などの副作用があるため、飲水量・尿量や感染徴候にも注意する。

飼い主には、薬を自己判断で中断・減量しないこと(急な中止は再発や状態悪化を招く)、出血や元気消失などの異変があればすぐ受診することを伝え、確実な投薬と再発の早期発見を支えるのが動物看護師の役割である。

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