溶血性貧血の鑑別とクームス試験

赤血球が壊される溶血性貧血には、いくつもの原因がある。免疫が自分の赤血球を壊すIMHA(クームス試験で診断)、タマネギやアセトアミノフェンなどの酸化障害によるハインツ小体性、マダニが媒介するバベシアや赤血球に寄生する猫ヘモプラズマなどの感染性。溶血のしくみ(血管内・血管外)と、それぞれの原因の見分け方・治療を整理する。

1溶血性貧血とは(血管内・血管外溶血)

溶血性貧血は、赤血球が壊される(溶血する)ことで起こる貧血。壊れ方には、血管の中で壊れる血管内溶血(ヘモグロビンが尿に出て赤褐色尿=ヘモグロビン尿になる)と、脾臓などで処理される血管外溶血(黄疸が目立つ)がある。多くは骨髄が反応する再生性貧血。

血管内溶血では放出されたヘモグロビンが腎臓から尿へ出て赤褐色のヘモグロビン尿(血色素尿)となり、血管外溶血では脾臓・肝臓でのヘモグロビン分解によりビリルビンが増えて黄疸が目立つ。

溶血性貧血は、赤血球そのものが壊される(溶血する)ことで赤血球が減る貧血である。

骨髄は失われた分を補おうとするため、ふつう再生性(網状赤血球が増える)を示す。

溶血には大きく2つの起こり方がある。

血管内溶血は、血管の中で赤血球が壊れるもので、放出されたヘモグロビン(赤い色素)が血液中に増え(ヘモグロビン血症)、腎臓から尿へ出て尿が赤褐色になる(ヘモグロビン尿=血色素尿)。

血管外溶血は、傷んだ赤血球が脾臓や肝臓のマクロファージに取り込まれて壊されるもので、ヘモグロビンの分解で生じるビリルビンが増え、黄疸(皮膚・粘膜が黄色くなる)が目立つ。

症状は、貧血による粘膜蒼白・元気消失・頻脈・頻呼吸に加え、黄疸や赤褐色尿がみられる。

溶血性貧血では、『なぜ赤血球が壊れているのか(原因)』を見分けることが治療につながる。

2免疫介在性溶血性貧血(IMHA)とクームス試験

IMHAは、自己抗体が自分の赤血球に結合して破壊する自己免疫疾患。診断の手がかりは、球状赤血球、自己凝集、そして赤血球に自己抗体や補体が付いているかを調べる『直接クームス試験』の陽性。治療はステロイドを柱に、シクロスポリンなどの免疫抑制剤を併用する。

免疫介在性溶血性貧血(IMHA)は、免疫が誤って自分の赤血球を異物とみなし、自己抗体が赤血球に結合して破壊してしまう自己免疫疾患である。

原因のない一次性(特発性)と、感染・腫瘍・薬剤などがきっかけの二次性がある。

診断では、血液塗抹での球状赤血球(スフェロサイト)の増加、赤血球が塊になる自己凝集、黄疸(高ビリルビン)、ヘモグロビン尿などが手がかりになる。

重要な検査が『クームス試験(直接クームス試験)』である。

これは、赤血球の表面に、自分の体の中で赤血球と反応してしまう物質(自己抗体や補体)がくっついていないかを調べる検査で、IMHAでは陽性になる。

治療は、暴走した免疫を抑えることが中心で、ステロイド(プレドニゾロン)を柱に、シクロスポリンなどの免疫抑制剤を併用する。

重度の貧血には輸血を行うこともある。

また、IMHAでは血栓ができやすいため、その対策が行われることもある。

なお、赤血球の前段階(前駆細胞)が骨髄で免疫に攻撃されると、網状赤血球が増えない非再生性の免疫介在性貧血(非再生性免疫介在性貧血)になることもある。

3ハインツ小体性溶血性貧血(酸化障害)

ハインツ小体は、酸化のダメージを受けて変性したヘモグロビンが赤血球内で固まったもの。タマネギなどネギ類の中毒や、アセトアミノフェン・アスピリンなどの薬物が赤血球を酸化して起こす。ハインツ小体をもつ赤血球は壊され、溶血性貧血とヘモグロビン尿(赤い尿)を生じる。

ハインツ小体性溶血性貧血は、赤血球が『酸化』のダメージを受けて起こる溶血性貧血である。

ハインツ小体とは、酸化によって変性したヘモグロビンが赤血球の中で凝集してできる小さな塊で、血液塗抹で赤血球の中に粒として観察される。

原因として代表的なのが、タマネギ・ネギ・ニラ・ニンニクなどネギ類の摂取による中毒(タマネギ中毒)である。

ネギ類の成分が赤血球のヘモグロビンを酸化し、赤血球を壊す。

また、ヒト用の解熱鎮痛薬であるアセトアミノフェン(とくにネコは感受性が高く危険)やアスピリンなどの薬物も、赤血球を酸化してハインツ小体性溶血を起こすことがある。

ハインツ小体をもつ傷んだ赤血球は血管内・血管外で壊され、溶血性貧血となる。

血管内溶血が強いと、ヘモグロビンが尿に出て赤褐色のヘモグロビン尿(血色素尿)がみられる。

治療は、原因物質の除去(催吐・吸着)と、酸素・輸液・必要に応じて輸血などの支持療法が中心になる。

4赤血球の感染(バベシア症・猫ヘモプラズマ症)

赤血球に病原体が寄生して溶血を起こす病気もある。バベシア症は赤血球の中に寄生する原虫で、マダニが媒介し、溶血性貧血・脾腫・発熱を起こす。猫ヘモプラズマ症(旧ヘモバルトネラ)は赤血球の表面に寄生する細菌で、咬傷・吸血昆虫・母子感染などで広がり、ドキシサイクリン(テトラサイクリン系)で治療する。

赤血球に病原体が寄生・感染して、赤血球が壊される溶血性貧血もある。

バベシア症は、赤血球の『中』に寄生する原虫(バベシア。

日本ではバベシア・ギブソニが主)による病気で、マダニが媒介する。

マダニが一定時間以上吸血することで感染し、感染した赤血球が壊されて溶血性貧血を起こし、脾腫・発熱・血小板減少などもみられる。

予防にはマダニ対策が重要である。

猫ヘモプラズマ症(ヘモプラズマ感染症)は、赤血球の『表面』に寄生する細菌(マイコプラズマの一種。

以前はヘモバルトネラと呼ばれた)による溶血性貧血で、ネコのケンカの咬み傷や吸血昆虫、母子感染などで広がると考えられている。

猫白血病ウイルス(FeLV)などに関連して発症することもある。

治療にはドキシサイクリンなどのテトラサイクリン系抗菌薬が用いられる。

これらの感染による溶血では、原因病原体に対する治療(抗原虫薬・抗菌薬)と、貧血に対する支持療法を行う。

また、感染が引き金となって二次的にIMHAを併発することもある。

5溶血性貧血の動物看護

看護では、粘膜色(蒼白・黄疸)・尿の色(赤褐色尿)・元気・呼吸/心拍を観察する。重度では酸素・輸血が必要。原因に応じて、IMHAは免疫抑制、酸化障害は原因除去、感染は抗菌・抗原虫薬と対応が異なる。安静を保ち、急変を早期にとらえて報告する。タマネギなど中毒原因を飼い主に説明することも大切。

溶血性貧血の動物看護では、まず全身状態の観察が重要である。

歯ぐき・結膜の色(蒼白や黄疸の有無)、尿の色(赤褐色のヘモグロビン尿が出ていないか)、元気・食欲、呼吸数・心拍数を継続的にチェックし、変化を獣医師へ報告する。

重度の貧血では酸素を運ぶ力が大きく落ちているため、安静を保って酸素需要を増やさないようにし、必要に応じて酸素投与や輸血が行われる。

輸血時は血液型・交差適合試験や輸血反応の観察が大切である。

治療は原因によって異なる。

IMHAではステロイドなどの免疫抑制療法、ハインツ小体性(酸化障害)では原因物質の除去と支持療法、バベシアや猫ヘモプラズマでは抗原虫薬・抗菌薬といったように、原因に応じた対応をとる。

飼い主への指導も看護師の役割で、とくにタマネギ・ネギ類やヒト用の解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンなど)は犬猫に絶対に与えない・誤食させないこと、マダニ・ノミの予防が感染性溶血の予防につながることを伝える。

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